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「オズマガジントリップ」は、まだ知らない日本の食・文化などを軸に、誰でも行きやすい女性向けの旅を提案する情報誌です。
これまで「オズマガジン」本誌の増刊号として年4回発行されていましたが、今夏、独立創刊。秋の京都を大特集した新創刊第2号が好評発売中です。
今回は同誌編集長の岩下綾さんに、雑誌作りの舞台裏を綴っていただきました。
新創刊第1号の「夏のひとり旅」特集が出来上がるまでには、相当な紆余曲折があったとか。旅好き女子のための“使える”雑誌「オズマガジントリップ」は、こんなふうにして作られているのです。
人生はじめての撮影取材は、2泊3日東伊豆の予定、だった。元来小心者のため、準備に準備を重ね、なんとか1日目を終えた夜、不幸の電話が鳴った。
「そのまま熱海でA班のカメラマンと合流して、西伊豆行ってきてよ」
「え? 本気ですか?」なんて口ごたえ、編集長に言えるわけもなく、3日目の昼、私は熱海にいた。必死に後半の西伊豆取材のアポイントを入れつつA班に連絡を取ると、あと数時間待てとのこと。まだ旅慣れてもいないし行くあてもない。とっぷりと日も暮れ、心細さはマックス。目の前のスマートボール屋に入ってみたものの、「閉店なのよ~」と言われ入店ならず。なにを思ったか、唯一明かりが灯っていた、向かいのパチンコ屋に飛び込んだ。結果どうなったか? ビギナーズラックで大勝。旅先でこづかいを稼ぐ、という珍事が起こったのである。
これは「近場の楽園」という雑誌制作時のエピソードだが、版元はスターツ出版。当時は下請けの立場でたずさわり、現在はここで「オズマガジントリップ」の編集長をやらせていただいているのだから、ご縁とはありがたきことかなである。
「オズマガジントリップ」は、「オズマガジン」本誌の増刊号として、年4回発行していた旅雑誌が前身。晴れてこの6月に定期誌・全国配本と相成った。新創刊ということになるが、ゼロから新版を立ち上げるというよりは、リニューアルの要素が強め。何を継続し、何を捨て、何を強化するかなど、校了時まで微調整を重ねて完成させたのが、「夏のひとり旅」特集だ。
半期が終わり、ほっと一息つく時期だからこそ、ひとり気ままに、誰にも気兼ねせず、好きなことだけを楽しむ旅をしてほしい。そんな想いを込めて決定したのだが、いざ企画を煮つめていくと、夏×ひとり×旅の相性の悪さばかりが気にかかる。冷静に考えてみると、夏の観光地には、楽しそうな家族連れやグループ、そしてカップルがたくさん。読者が「あえてひとり」で出かけても、「ひとりぼっち」気分に陥るのは想像に難くない。
「みんな楽しそうだな」と思ったら最後、乙女心は急降下。それは、さみしいと手をつなぎ、お家へ帰ろうに直結だ。そんなイメージができるような展開はないだろうと、編集部全員(とはいえ、私を含め2人)で知恵を出し合い、辿り着いたのが、観光地のトナリを軸にした旅の展開だった。アクセスはよいのに、比較的のんびりしているトナリ町は、ひとり旅にぴったりだという結論に落ち着いたのだ。
例えば三島エリアの場合、ひとりだからこそ満喫しやすい「おやつ」をテーマにコースを組み立て、飲食店情報などを添える。もちろんそこで帰ってもいいが、小一時間で箱根に行けるなら立ち寄りたいのが心理だろうということで、箱根の情報も添えることにした。そのほか雑誌のサイズ感や地図、紙など、使う人の立場を心掛けて選択したつもりだ。
そんな紆余曲折ありつつの制作時、たびたび思い出したことがある。それは会社の先輩に聞いた、イベントに呼んだ歌手が代表曲を歌わなかったという話。コアなファンなら「新曲ウェルカム」だろうが、残念ながら集まった客たちはライトなファン。「求む!代表曲」だったというオチだ。
一見すると関係ない話のようだが、雑誌も同じだと思うのだ。読者がなにを評価し、なにを求めているのかを無視してしまっては、手にとってすらもらえない。編集者歴が長くなると、どうしてもマニアックになりがちだが、雑誌を使うのはあくまでも読者。だったら求められている代表曲を忘れずにいたいと思うのである。とはいえ、まだ代表曲となる特集を試行錯誤中なのだけれど。
スターツ出版「オズマガジントリップ」編集長
岩下 綾―IWASHITA Aya
1974年生まれ。1999年、スターツ出版入社。「オズマガジン」の編集部を経て、2017年12月より「オズマガジントリップ」編集長。
「オズマガジントリップ」
まだ知らない日本の食・文化などを軸に、誰でも行きやすい女性向けの旅を提案。取り外しできるBook in Bookも人気です。9月7日(金)発売の10月号の特集は「秋の京都へ」。最適なアクセスまでを配慮した、エリア展開での京都旅を提案します。第二特集は「城下町さんぽ」、取り外して使えるBook in Bookは奈良特集。
(「日販通信」2018年10月号「編集長雑記」より転載)