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1972年に世界初の家庭用ゲーム機「オデッセイ」が発売されてから、今年で46年(!)。今やゲームは娯楽のひとつとして、人々の生活に根付いているといっても過言ではないでしょう。
そんななか、たくさんありそうで実はこれまでほとんどなかった【ゲームがモチーフの短編SF小説アンソロジー】が、今年3月に東京創元社より発売されました。
一口にゲームといってもさまざまなジャンルがあるように、『スタートボタンを押してください』に収められた12の短編も非常に個性豊か。
FPSやMMORPGを題材にしたものから、ゲーム黎明期に海外を中心に広まったテキストアドベンチャー、数年前に登場したばかりのVRゲームなど、読者を飽きさせません。なかにはゲームの脇役である「NPC」にスポットを当てた異色作も!
【FPS】(First Person Shooting)
一人称視点で展開されるシューティングゲームのこと。主人公の視点でゲーム空間を自由に移動し、武器や素手で戦う。【MMORPG】(Massively Multiplayer Online RPG)
やさしく訳すと「非常に多くのプレイヤーが同時参加するオンラインPRG」。数百人~数千人規模のプレイヤーが同時にひとつのサーバに接続してプレイするオンラインゲーム。【テキストアドベンチャー】
画像が一切表示されず、画面に現れる文章に応じて簡単なコマンドを入力し進行するゲーム。【NPC】(Non Player Character)
プレイヤーが操作しないキャラクター。何度話し掛けても「ソルティコの町へようこそ!」としか言わない町民など。
たとえば本書収録の「救助よろ」は、MMORPGと現実世界の交差をサスペンスフルに描いた一編。元恋人がとあるMMORPGにのめり込んで大学まで辞めたらしいことを伝え聞いたヒロインが、彼を探すためにゲームにログインしたところ、「救助よろ」のメッセージを最後に通信が途絶えてしまう……というのがあらすじです。
これは現実世界での出来事ですが、しかしながら本作の冒頭には、魔剣を携えたヒロインが「発光する巨大蜘蛛」を追い払うシーンが差し込まれています。物語は何事もなかったかのように進みますが、さて、いったい何が起こっているのでしょうか?
執筆陣には、又吉直樹さんが推薦したことで話題になった『紙の動物園』のケン・リュウさんや、マット・デイモン主演映画「オデッセイ」の原作である『火星の人』のアンディ・ウィアーさん、さらにトム・クルーズ主演映画「オール・ユー・ニード・イズ・キル」の原作者である桜坂洋さんなど、現代SFを牽引する顔ぶれが揃っています。
しかし「ゲームとSFの融合」と聞いて今まっさきに思い浮かぶのは、今年4月に全米で公開されたスティーブン・スピルバーグ監督最新作「レディ・プレイヤー1」。本書の序文を書いているのが、なんとその原作小説『ゲームウォーズ』(原題:READY PLAYER ONE)の著者であるアーネスト・クラインさんなのです!
目次
●アーネスト・クライン 序文
●桜坂洋「リスポーン」
●デヴィッド・バー・カートリー「救助よろ」
●ホリー・ブラック「1アップ」
●チャールズ・ユウ「NPC」
●チャーリー・ジェーン・アンダース「猫の王権」
●ダニエル・H・ウィルソン「神モード」
●ミッキー・ニールソン「リコイル!」
●ショーニン・マグワイア「サバイバルホラー」
●ヒュー・ハウイー「キャラクター選択」
●アンディ・ウィアー「ツウォリア」
●コリイ・ドクトロウ「アンダのゲーム」
●ケン・リュウ「時計仕掛けの兵隊」
●米光一成 解説
ゲーム好き・SF好き必読の書といえる『スタートボタンを押してください』。知的好奇心を刺激される楽しい読書体験をした後は、気に入った作品の著者が書いたほかの作品に手を伸ばしてみるものいいかもしれません。