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波乱の一生を送った悲劇の王妃マリー・アントワネットが、吉川トリコさんの手にかかると、ギャルでネトヲタな今どき女子に大変身! そんな軽~いノリとハイテンションな文体で綴られる日記小説『マリー・アントワネットの日記』が話題となっています。
RoseとBleuの上下巻で、アントワネットのさまざまなエピソードが綴られている本作。「めちゃくちゃ感情移入してしまった」「エネルギーや癒しをもらえる」と多くの共感の声が寄せられていますが、その魅力は、本作が彼女の“時代や国籍を超えた闘い”を描いたところにあるようです。編集を担当した新潮文庫編集部の長谷川麻由さんに文章を寄せていただきました。
『ベルサイユのばら』で、幼いモーツァルトがマリー・アントワネットに求婚したエピソードを憶えていますか? 麗しいこの場面、吉川トリコ『マリー・アントワネットの日記』では以下のように書かれています。
「おお、君はなんてやさしい女の子なんだ! 大きくなったらぼくのお嫁さんにしてあげるよ」
モーツァルトはぴょんと飛び跳ねるように立ち上がると、うやうやしく一礼してあたしの手の甲にキスしました。(中略)ウィンクして共犯者のほほえみを浮かべる彼に逆らえるはずもなく、
「ハイ、喜んでー!」
意識高い系居酒屋のバイトリーダーかよってぐらい威勢のいい声で返事しちゃったわよ。
マリー・アントワネットが、意識高い系居酒屋のバイトリーダー……!?
その後も「トワネットちゃんオワタ\(^o^)/」「つらみがエグくて俺氏無理ぽよ」「くっそめんどくせえ~~~!」「調子アゲてこ、プチョヘンザ!」と、遠藤周作『王妃マリー・アントワネット』にもソフィア・コッポラの映画「マリー・アントワネット」にも絶対に出てこないフレーズが炸裂します。
ギャルとネトヲタとラッパーを足して3で割らなかったような文体に最初は戸惑われるかもしれませんが、読み進めるうちに、アントワネットが直面して闘ったものは、いまの私たちが対峙する問題そのものだと気づかされます。
結婚するとなんで女だけ名前が変わるの?
母が発する言葉はどうしてこんなに圧が強いのか!
子を産むことを当然のように押しつけられるのはなぜ?
「女の敵は女」だなんて、いったい誰が決めたの?
軽やかな言葉で、次々と本質を突いてゆく。マリー・アントワネットにこんなに共感する日が来るなんて夢にも思いませんでした。気の合う女友だちとのおしゃべりのように楽しく示唆に富んだ本作、全力でおすすめします!
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新潮社 新潮文庫編集部 長谷川麻由
▼「新潮社の校閲部が泣いた」という本書の斬新な文体をぜひ体験してみてください。
ボンジュール? 発売日に台風とかマジつらみ? でもあたしの最期の方がマジつらみだからこんなの軽い? さてさて、あたしの日記、親切極まりないことに、なーんと「注」がついてるんだよ? あたしの言葉遣いがあたりにも日本語崩…じゃなくて「斬新」だったから、天下の新潮社校閲部が泣いたって噂wwww pic.twitter.com/CjpRdG8qpg
— マリー・アントワネットの日記 (@Antoinette_nex) 2018年7月30日
ハーイ、あたし、マリー・アントワネット。もうすぐ政略結婚する予定www 1770年1月1日、未来のフランス王妃は日記を綴り始めた。オーストリアを離れても嫁ぎ先へ連れてゆける唯一の友として。冷淡な夫、厳格な教育係、衆人環視の初夜……。サービス精神旺盛なアントワネットにもフランスはアウェイすぎた――。時代も国籍も身分も違う彼女に共感が止まらない、衝撃的な日記小説!