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9月1日(土)に公開される映画「寝ても覚めても」。
公開に先立って8月16日(木)、初めての一般試写会が開かれ、あわせて映画ソムリエの東紗友美さんと「桃山商事」の清田代表によるトークショーが行なわれました。
ちなみに桃山商事は、男性3人を中心とした“恋バナ収集ユニット”。
メンバーが大学生のときに誕生し、「恋愛に悩む女友達の愚痴を大勢の男子でチヤホヤしながら聞く」という活動を起点に、現在も〈男女のすれ違い〉を考察すべくさまざまな恋のエピソードを集めているのだそうです。これまでに聞いてきた恋の悩みは、17年間で実に1,000人以上にもなるのだとか……!
少しずつ距離を縮め、着実に愛を育んでいた〈亮平〉と〈朝子〉。しかし2人の関係は、朝子のある過去――亮平にそっくりの顔をした〈麦〉という運命の人がいたこと――をきっかけに、大きく変化していきます。
ひと目で恋に落ち、熱い恋愛をしていたさなか、突然朝子のもとから姿を消した〈麦〉。地に足のついた優しさで朝子を包む〈亮平〉。そして2人の間で揺れ動く〈朝子〉。
東紗友美さんと清田代表、男女2人はこの映画にどのような感想を持ったのでしょうか?
まず「マリッジブルーや“未消化の恋愛”など、恋愛の悩みがすべて詰まっている映画だなと思いました」「一見するとロマンティックな印象の映画ですけれど、すごく生々しいですよね」と東さん。
実際に清田さんも、そういった恋愛相談はよく受けるのだそう。「一緒にいると不安だけれどどうしようもなく惹かれてしまうミステリアスな男性と、自分を大切にしてくれる男性の間で揺れ動くというのは、日常でもよくある話ですよね」
対して東さんは「それにしても、顔が同じというのは究極ですよ。女同士だと『早く次の恋人を見つけなよ』ってアドバイスすることも多いですけど、そもそも昔の相手を断ち切れていない場合、そのまま次の恋愛に進んでも真の意味での恋愛ってなかなかできないと思うんです」とコメント。
「それに、それが危険なんだなっていうことも、今回映画を見て思いました」「もしあのまま亮平と朝子が結婚していても、結局何か(2人の生活を揺るがすような事態が)起きていたんじゃないかって思ってしまうんです」
東さんがそう思った理由の一つには、朝子のキャラクターがありました。
トークショー開催前から「男性が、朝子のどんなところに魅力を感じるのか聞いてみたかった」という東さん。
この質問に清田さんは、「原作の朝子とはまた印象が違いましたが、こういう雰囲気をまとった女性っていますよね。近くにいても遠くに感じるというか、いつかふっと消えてしまうんじゃないかという」。
作中では、東出昌大さん演じる麦が「パンを買いに行く」と言ったきり朝子のもとからいなくなってしまいますが、それに通じる“とらえどころのなさ”を、清田さんは朝子に対して感じたようです。そんな“余白”が、男性に勝手な幻想を抱かせてしまうのではないかという考察も。
「人によってどんなふうにも見えるというか、何を投影しても(朝子は)それっぽく見えてしまうんですよ。(本人が意図しないのに、相手が)勝手に心を揺さぶられる……そんな感じがしましたね」
「朝子は大阪を出て東京で暮らしている間も、ずっと麦の“不在”を感じて、どこかで彼の影を追っていたわけですけれど、一方で亮平も、朝子がそのうちいなくなるんじゃないかという不安を抱えながら交際していたと思います」
麦の行方がわからなくなって2年、亮平に出会って5年。朝子はひょんなきっかけから、麦がモデルとなって注目を集めていることを知ります。
もういなくなったと思おうとしていた麦が、まだ現実の世界に、確実に存在しているという衝撃。これが平穏だった亮平との生活に、小さな影を落とすのです。
そして物語の終盤、朝子はとんでもない行動を起こします。告白すると、筆者は本作を初めて見たとき、この朝子の行動に「この女、この期に及んでやりやがった……!」と若干の嫌悪すら覚えてしまいました。
しかしもしかすると、実はこの“嫌悪”にこそ、「寝ても覚めても」で描かれる恋と愛の本質があるのかもしれません。
東さんも「朝子は映画のヒロインの中では珍しいタイプ。映画の中でこれだけ、恋愛でやってはいけないことをすべてやってくれているヒロインはなかなかいない(笑)」「たとえば何時間も相手を待ってしまったり、後から見たらおかしいと思うLINEを送ってたり、自分の興味のない習い事を始めてみたり。自分でも予知できない行動を起こさせる力が、恋愛にはありますよね」。
そして清田さんも、「朝子は心の中に生じた衝動、欲望に忠実に生きている。それがなかなか僕もできないから、正直羨ましいとさえ思ってしまいましたね。まぁ、個人的なイメージですけど、こういう女の人って友達少なそうですけどね……(笑)」と本音をポロリ。
一見おとなしく、何を考えているかわからないような朝子がとったラストの行動。この衝撃に観客はきっと、普段理性的に生きているつもりでも、自分のなかに“朝子”がいることを突きつけられます。それこそが、朝子を否定したくてもできない理由なのでしょう。
実際に、いち早く本作を鑑賞した著名人の方々からも、次のようなコメントが寄せられています。
恋の正体がついにあかるみになった。永いため息も、甘やかな妄想も、すべてまぼろし。
もう逃げるな。目をそらすな。恋は、一か八かの緊急事態である。――相田冬二(映画批評家)
目に見えるもの、見えないもの、心はどちらに向いているのか。
感想がそのまま人生観の表明になり得る、美しい爆弾のような一作。――朝井リョウ(小説家)
まさに「感想がそのまま人生観の表明になり得る」作品。
公開まであと約1週間、いま要注目の映画です。
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