• fluct

  • 東大・京大・慶應・早稲田のミステリ研が対抗「ミステリ・ビブリオ!」取材レポート

    2018年09月02日
    楽しむ
    ほんのひきだし編集部
    Pocket

    【インタビュー】河北編集長・高橋編集長、課題図書の著者2人は「ミステリ・ビブリオ!」をどう見たか?

    今回の「ミステリ・ビブリオ!」は、出版社・レーベルを横断して開催された珍しい企画。その趣旨について「講談社タイガ」の河北編集長、「新潮文庫nex」の高橋編集長に語っていただくとともに、会場でこっそり(?)観戦していた青崎有吾さん、知念実希人さんのお二人に、イベントの感想をお聞きしました。

     

    講談社タイガvs新潮文庫nex、レーベルを超えた対戦のきっかけは

    ――今回の「ミステリ・ビブリオ!」開催のきっかけについて教えてください。

    河北 もともと「講談社タイガ」にとって、「新潮文庫nex」は好敵手(と書いて友と読む)だと思っています。編集長の高橋さんと情報交換をする中で、一緒に読者を巻き込んで盛り上がれるイベントをやりましょう、とご提案いただいたんですよね。

    高橋 「新潮文庫nex」は4周年、「講談社タイガ」は3周年ですが、2つのレーベルはお互い創刊の頃から交流があって、河北さんとは折に触れて「文庫の書き下ろし小説は“nexとタイガを読んでいれば間違いない”って言われるようになりたい」みたいな話をしていました(笑)。まあ、それは冗談ですが、切磋琢磨している者同士でコラボができれば、より読者を広げられるんじゃないか、「小説って、面白い!」と感じてもらえるんじゃないかと思ったんです。

    ――「4大学のミステリ研究会が対抗する」というスタイルも面白いですね。

    高橋 切磋琢磨しつつもライバルでもあるわけで、そこは「白黒つけようぜ?」みたいな感じのイベントにしたい、と話したんですよね。あと僕からは、「新本格」というムーブメントを作った講談社ノベルスの兄弟分であるタイガとコラボする以上、「ミステリの勝負がしたい」と。そこで、「大学のミステリ研究会のみなさんの力を借りて、ビブリオという形にしよう」となりました。

    河北 タイガもnexも読者に愛されるレーベルを目指しています。大学のミス研というのは、ミステリ好きの若い読者の代表です。そういう方たちと一緒に、両レーベルの代表作の面白さを発信することで、読書自体の楽しみが広く伝わるといいな、と考えました。

    ――課題図書にこの2シリーズを選ばれたのはなぜですか?

    河北 両作品とも、若い読者からコアなミステリ読みにまで支持されている作品ですから、レーベルの面白さを伝えるにはふさわしいと感じました。

    高橋 対談でも話されていましたが、お二人は「ミステリを刊行している作家」としては共通点があるものの、ミステリへのスタンスやキャラクターの造形に多くの違いがあります。「名探偵」が登場するシリーズであっても、書かれ方が全然違う以上、きっと読まれ方も異なるはず。だから、二人の作品を「ビブリオ」という形で多方面から照らすと、ミステリに対する様々な見方が可視化されて、面白いことが起こるんじゃないか、と思いました。あとは単純に、読み手の声を聞いてみたかった、という部分もあります。

    ――第1部の中で、「編集者として非常に幸せな時間だった」というご感想がありました。次回以降の構想などがありましたら教えてください。

    高橋 大学生のみなさんのビブリオが素晴らしく、作品理解とプレゼン力の高さに感動したので、もっと多くの大学生、ミステリ研究会の方を巻き込んでイベントをやりたいな、と思います。それから、今回は審査員でときわ書房の宇田川さんに入っていただきましたが、本を広めるという点で書店さんの力は欠かせないので、そうした方々ももっと巻き込んでいきたいです。

    河北 講談社タイガにも、新潮文庫nexにも、まだまだ面白い作品がたくさんあります! 次回は「部活対決」であったり、「魅力的な探偵対決」であったり、違う切り口でイベントができると楽しいかもしれませんね。もちろんほかのレーベルさんとも、読者の皆さんが喜んでくれる企画を実現できれば嬉しいですね。

     

    著者2人は「ミステリ・ビブリオ」をどう観戦した? 自分でも気づかなかった“発見”とは

    ▲青崎有吾さん(左)と知念実希人さん(右)のお二人

    ――知念さん、青崎さんのお二人は、企画の内容をお聞きになったときどのように思われましたか?

    青崎 自分の本のプレゼンを聞くという経験は初めてなので、ちょっと動揺しました。

    知念 読者の方の感想を直接聞く機会はあまりないので、気恥ずかしいんですよね。

    青崎 しかも約5分間という長い時間語っていただくのは、なかなかない機会ですしね。実際にプレゼンを聞いたら、自分では気づかなかった部分にも言及してもらっていたので、かなり新鮮でした。

    ――それはどのようなところですか?

    青崎 『アンデッドガール・マーダーファルス 2』をプレゼンしてくれた慶應大学の方が、「この小説は本格ミステリとしてもかなり濃度が高い」とおっしゃっていて。僕自身は「これはミステリ色が弱いと言われても仕方ないかな」と思いながら書いていたんですけれど、「実はこんなにたくさん謎があるんだ」という熱いコメントをいただいたので、家に帰ったら一読者の気持ちで読み返そうと思いました(笑)。

    知念 それぞれ読者が「作品のどこに魅力を感じて、どのように楽しんでくれているのか」ということがよく伝わってきて、うれしかったです。自分でも狙って書いている部分と、思わぬところで楽しんでもらっている部分とが客観的に聞けて、とてもいい会でしたね。

    ――今回登壇したのはミステリ研究会の学生さんたちでしたが、内容はもちろん、小道具や衣装を用意したりと、みなさんさすがのプレゼンでしたね。こういった交流の機会は、日頃からありますか?

    青崎 講談社タイガは読者との交流に力を入れているみたいで、これまでにも何度か「謎めいたお茶会」というのを開催しているんですよ。そういうところでのトークショーをしたことはあります。

    知念 僕は普通のトークショーならあるんですが、学生さんとの交流イベント、特にミス研の人たちとの接触というのはなかったですね。青崎さんはミス研出身ですよね?

    青崎 明治大学のミス研だったので、今回参加してくれた4大学ではないんですけれど、身内の感覚で聞いていました。ミス研の人たちって、けっこうコスプレでプレゼンをしたりするんですよね(笑)。しかも今日登壇したみなさんは流暢な語り口で、本好きならではの攻めのプレゼンをされてましたね。

    知念 各大学とも、工夫を凝らしてプレゼンしてくれましたね。もともと新潮文庫nexと講談社タイガはキャラクターの強さを売りにしているレーベルでもありますので、そのあたりまでしっかりとらえてくれたんだなと思いました。

     

    「濃い本好きの人たち」の中から、いつか作家が生まれるかも!?

    ――ビブリオバトルの後に“第2部”として行なわれた知念さんと青崎さんの対談も、内容が盛りだくさんでしたね。シャーロックホームズやクリスティの作品をはじめ、名作からお二人の創作についてまで、ミステリファンにはたまらないお話ばかりでした。作家さんはお薦めの本を聞かれる機会も多いと思うのですが、今後、ビブリオバトルに挑戦してみたいというお気持ちはありますか?

    知念 面白いけれど、大変そうです(笑)。その場で考えてできるものではないし、今日もみなさん、きっと準備や練習に相当時間をかけていますよね。

    青崎 知念さんは絶対強いと思います。

    知念 しゃべるのは好きなんだけど、どうだろう(笑)。

    ――第2部でお二人が読書の原体験についてお話しされたときに、青崎さんは漫画を挙げられていましたよね。どういった漫画がお好きなんですか? 

    青崎 漫画だと、ミステリよりはギャンブル漫画が好きですね。そういったジャンルのほうが、いわゆるミステリ的な驚きがあるような気がして。

    知念 ゼロサムゲームとか、コンゲームものも好きだよね。

    ――知念さんは映画が特にお好きだそうですね。

    知念 漫画も好きですが、映画をよく見ますね。作家はできるだけストーリーを取り込んで、インプットしていく必要があるので。

    青崎 漫画でも、演劇でも、映画でもそうですよね。

    知念 小説だと読むのに一定の時間が必要ですが、漫画や映画は短時間でインプットできます。僕は、小説を書くときにも頭の中に流れている映像を書き写す感じなんですが、文字で考える人もいるし、僕みたいに映像で見える人もいて、作家によって創作の方法はいろいろですね。

    青崎 挿絵みたいなのが浮かんでくるという人もいますよね。

    ――最後に、本日のご感想をお聞かせください。

    青崎 みんなでイベントを盛り上げようという気持ちが感じられました。小説に対する愛がひしひしと伝わってきて、恥ずかしかったり、うれしかったり。

    知念 このような形で若い人たちが、本を広げてくれるのが一番ありがたいですね。

    青崎 今日はその中でも特に「濃い本好き」の人たちが集まってくれているので。

    知念 いつか、今日の参加者の中から作家が出てくるかもしれないよね。

    ※第2部のトークイベントの内容は、新潮社の電子雑誌yomyom‏ vol.52(9月21日配信開始)に掲載されます。

    >>気になる結果発表は……



    1 2 3 4 5 6 7
    タグ
    Pocket

  • GoogleAd:SP記事下

  • GoogleAd:007

  • ページの先頭に戻る