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  • 東大・京大・慶應・早稲田のミステリ研が対抗「ミステリ・ビブリオ!」取材レポート

    2018年09月02日
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    ほんのひきだし編集部
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    日常の経験をフックに“フィクションの存在”を自分に引き寄せる

    東京大学のプレゼンを受け「丸腰で来たことを後悔しています」としつつも、「静句さん(作中に登場するメイド)のお面が見たかった」とダメ出しをして場を和ませたのが京都大学推理小説研究会の伊地知さん。東大からは3人が出場しましたが、京大は伊地知さん1人での参戦となりました。

    伊地知さんの課題図書は、知念実希人さんの『幻影の手術室 天久鷹央の事件カルテ』。天才女医・天久鷹央と助手の小鳥遊優を軸にした医療ミステリシリーズ6作目で、長編(天久鷹央の事件カルテシリーズ)では『スフィアの死天使』に続く2つ目の作品です。

    幻影の手術室
    著者:知念実希人
    発売日:2016年09月
    発行所:新潮社
    価格:693円(税込)
    ISBNコード:9784101800769

    「日常の中に、『これはミステリっぽい』と思う瞬間が訪れることがあります。私の場合は、大学で生物学の講義を聞いていたときに出合いました」

    こう切り出し、伊地知さんは自身のエピソードを紹介。糖新生の過程を「密室からの脱出」ととらえ、このような“ミステリっぽい事象”に直面したとき、それを解決するのに探偵が登場しないことをあらためて感じたのだといいます。

    「怖い話を聞いて怪異の気配を感じてしまうのと同じように、この作品を読むと、天久鷹央の営みの向こうに、今まで誰もがお世話になってきたであろう医者の気配を感じます」

    「天久鷹央シリーズを読むと、フィクションの世界にしかいなかった探偵が日常に近づいてくる。探偵が日常にいなくても、それを期待してしまうことはワクワクすることだと思う」と、シリーズの魅力をプレゼンしました。

    またこのシリーズにおいて、課題図書の『幻影の手術室』を異色の存在だと紹介。

    「序盤の捜査が医学知識と関係なさそうに進むというのが、すでにいつもと違う展開。いつもと違う転がり方をした物語は、いつもと違うところにたどり着きます」
    「それはキャラクターの関係性や、精神の変化。キャラクターの成長を追うのは、シリーズ作品の読者にとって嬉しいことであり、成長した彼らがこれから紡ぐ物語を楽しむためにも、この1冊は重要です」
    と語りました。

    シリーズ全体の特徴と一連の作品における課題図書の有意義さを押さえたプレゼンは、審査員からも高評価。

    「天久鷹央シリーズは、ミステリ小説としての魅力、シリーズとしての魅力、単品の魅力が入り混じっている作品。そのなかで、個別の感想にせずすべて網羅して織り込んでいた点が素晴らしかった」(新潮文庫nex 高橋編集長)、「編集者は、作品の面白さをうまく伝えることも仕事の一つ。物語のなかに入って“探偵のあり方”のようなところにまで触れながら評論するというテクニックが光っていた」(講談社タイガ 河北編集長)など、賞賛する声があがりました。

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