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2015年、メフィスト賞受賞作『恋と禁忌の述語論理』でデビューした井上真偽さん。第2作目の『その可能性はすでに考えた』が主要ミステリ・ランキングすべてにノミネート、7月からは『探偵が早すぎる』が連続ドラマ化されるなど、いま注目のミステリ作家です。
そんな井上さんの作品は、型破りな探偵をはじめとするキャラクター設定と、ミステリファンをもうならせる巧みなトリックの数々が魅力。果たしてどんな探偵が、どのような謎解きをみせてくれるのでしょうか? 『探偵が早すぎる』と『その可能性はすでに考えた』シリーズの2作品について、担当編集者である「講談社タイガ」編集長の河北壮平さんに文章を寄せていただきました。
今、ミステリ界でもっとも注目されている著者・井上真偽さんをご存じでしょうか?
井上さんは『恋と禁忌の述語論理(プレディケット)』にて、第51回メフィスト賞を受賞しデビューされた、真偽(マギ)の名に相応しい、魔法使いのように読者を魅了する物語の紡ぎ手です。
そんな井上さんの『探偵が早すぎる(上・下)』(講談社タイガ)の人気が止まりません! 「早すぎる」って何が早すぎるのかというと「解決が早すぎる」。だって、事件が発生する前に犯人を指摘してしまうんです!
父から莫大な遺産を相続した女子高生の一華。一族郎党が彼女の遺産を狙い、百花繚乱の完全犯罪トリックで暗殺を仕掛けてきます。そんな彼女を守るために雇われた名探偵は……なんと、犯人(未遂)が犯行計画中に「君、殺そうとしてるよね?」と指摘してしまうのです。そんな探偵に向けて、犯人は思わず呟きます。
「俺はまだ、トリックを仕掛けてすらいないんだぞ!?」
そんな早すぎる探偵は、メディアミックスが決まるのも早すぎる! なんと発売から1年で、コミカライズと連続ドラマ化が決定してしまいました! コミカライズは、三月薫さんにより「少年マガジンエッジ」にて好評連載中。ドラマは滝藤賢一さんと広瀬アリスさんのW主演で、〈読売テレビ・日本テレビ系にて、7月19日より毎週木曜23:59~、放送スタート〉です。どうかお楽しみに!
さて、井上真偽さんを語るうえで、もう一つの傑作シリーズに触れないわけにはいきません。それは『その可能性はすでに考えた』(講談社文庫)、『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』(講談社文庫・7月13日発売)の2作。両作品とも、数多あるミステリランキングに軒並みランクインし、第2作『聖女の毒杯』は本格ミステリ・ベスト10の第1位にも輝きました。
名探偵とは、事件がどんなに実行不可能に見えたとしても、犯人のトリックを見抜き真相を推理するもの……ですが、本作の探偵・上苙(うえおろ)は違います。彼はとある事情により、この世に奇跡が存在することを信じています。そのため、不可能状況に遭遇すると、事件が奇跡によるものだ、と立証しようとするのです。ですが、それはまさに悪魔の証明――彼はすべてのトリックが不成立であるとの証明に挑みます!
第1作で彼が遭遇する事件は、とある宗教施設で首を斬られた少年が、少女を抱きかかえ運んだ、というもの。次々と現れる刺客(通常ならば彼らこそが名探偵なのですが)たちが繰り出す、様々な事件の実行可能性を、上苙は「その可能性はすでに考えた」と喝破していきます。刺客たちの推理が反証・否定されていくのはなんとも痛快! 果たして、上苙はすべての可能性を否定し、この世に奇跡が存在することを証明できるのでしょうか。その結末は……是非、この2作を読んで確かめてください。
ちなみに、『その可能性はすでに考えた』の探偵・上苙は、数理論理学とミステリを融合させたデビュー作『恋と禁忌の述語論理』(講談社ノベルス)にも登場しています。
「事件を起こさせない探偵」と「事件はそもそも奇跡だったのだと証明する探偵」、あなたはどちらに心惹かれますか? 次々と新しい物語を生み出す、井上真偽さんから、もう目が離せません!
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講談社 文芸第三出版部 講談社タイガ編集長 河北壮平