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1998年に設立され、天草と福岡・熊本、そして熊本と大阪を結ぶ“空の便”を運行する天草エアライン。日本初の「地方自治体が単独経営する定期航空会社」である同社は、たった一機で住民たちの生活・医療・観光を支える、地元にとってなくてはならない存在です。
そんな天草エアラインの挑戦と、背景となる地方の現状や問題を“すべて実名”で描いた異色の小説が発売されました。
タイトルは『島のエアライン』。『国家とハイエナ』『法服の王国』『ザ・原発所長』など、徹底した取材によって社会派作品を生み出し続けてきた黒木亮さんによる「ノンフィクション・ノベル」です。今回はそんな本作について、編集を担当した毎日新聞出版 図書第一編集部の柳悠美さんに文章を寄せていただきました。
本書は、熊本県や天草市などの地方自治体が独自に運航する小さな航空会社の挑戦を、実話をもとに描いている。
仕事や旅行で飛行機に乗る機会はあっても、航空会社がどのようにつくられ、運営されているのか知る人は少ないのではないだろうか。
国への無数の許認可申請、操縦士や乗組員の訓練にも膨大な時間と費用がかかる。運用規定の作成、予約システムの構築、人材や部品の確保……本当に気の遠くなる道のりだ。
それを全くの素人である自治体がいちからやろうというのだから、誰もが当初、半信半疑だったのも無理はない。
作中のこんな場面が印象に残っている。
熊本県庁の担当者が、「ボンバルディアのダッシュ8を買いたい」と都内の商社を訪ねる。自前で空港をつくり、飛行機を買って、運航すると言うと、商社マンたちがのけぞりそうになる。
39人乗りの小型機といっても20億円はくだらない。とても気軽に買えるものではない。
でも、彼らは覚悟を決めていた。国の補助金がなくても、自治体と地元企業が共同出資し、独力で運営する。それがこの「天草エアライン」の稀有なところだ。
開業後も機体トラブル、人材引き抜き、資金繰りなど次々と障壁が立ち塞がる。本作の連載中も毎回ハラハラしっぱなしだった。それでも、天草の人びとは、おおらかな人柄と「肥後もっこす」の意地で乗り越えていく。
2000年の開港以来、現在もたった一機の「みぞか号」が九州の空を結び、地元の医療活動にも貢献する。
その雄姿に、「やってできないことなどないのだ」と何度も励まされた。
著者は、歴代経営陣、従業員、国内外の航空関係者に取材し、人物は全員実名で登場する。膨大な証言や資料を元に、ひとつひとつ積み重ねられていく事実と丹精な描写に、説得力と気迫が漲っている。
本書を通して、ぜひ「みぞか号」からの景色を存分に眺めてほしい。
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毎日新聞出版 図書第一編集部 柳悠美
『島のエアライン』刊行記念 黒木亮さんトーク&サイン会開催
トークイベントでは、元CAの河合薫さんをゲストに迎え、天草エアラインの独自性について語られる予定です。
日時:2018年7月1日(日)14:00~
場所:紀伊國屋書店新宿本店9階 イベントスペース【アクセス】
定員:50名
〉詳細はこちら
たった一機で、地方の生活、医療、観光を支える、熊本・天草の小さな航空会社の苦難と挑戦の物語。異色の〈実名〉ノンフィクション・ノベル!
天草ゆかりの知事の強力なリーダーシップで、地元の夢・天草空港は実現に向け、動き始める。議会の反対派、一部地権者などを数年がかりで説得し、建設工事が始まるが、予定される路線の厳しい採算性とおりからの航空不況で、就航する航空会社が見つからない。熊本県庁は「7人のサムライ」を投入し、独自の航空会社立ち上げへと舵を切る。果たして「島のエアライン」は、国の審査に合格し、九州の空へ飛び立つことができるのか!?