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『告白』『白ゆき姫殺人事件』など、人間の奥に潜むドロドロとした心理を描写し、「イヤミス」(嫌な気分になるが読んでしまうミステリー)というジャンルを確立させた第一人者・湊かなえさん。
過去には『望郷』『ポイズンドーター・ホーリーマザー』が直木賞の候補作となりましたが、今年5月に発売された『未来』も、第159回直木賞候補作に選出されました。継続的にミステリー作品を世に送り出し、クセになる後味の悪さで読者を惹きつけています。
そんな湊さんが2015年に発表した『ユートピア』が文庫化され、本日6月21日(木)に発売されました。同作も山本周五郎賞(※すぐれた物語性をもった文芸作品に与えられる賞)を受賞しています。
本作の主人公は、立場の違う3人の女性。海辺の田舎町で出会い、共にボランティア基金「クララの翼」を設立します。しかし、些細な価値観のズレから連帯が軋みはじめる3人。やがて、不穏な事件が姿を表します。
人間関係ではよくある「ちょっとした悪意や妬み」が混じりあい、思わぬ方向へと進む展開に注目が寄せられた本作。
あなたも、善意の行き着く先を見届けてみてください。
あらすじ
太平洋を望む美しい景観の港町・鼻崎町。町には日本有数の大手食品会社・ハッスイがあり、そこに勤める住民と、昔から住んでいる地元住民、移住してきた芸術家たち、それぞれ異なるコミュニティの人々が暮らしている。
鼻崎町で仏具店を営む菜々子の娘は、幼稚園の集団登園中に交通事故に逢い、小学生になっても車椅子で生活している。最近引っ越してきた陶芸家のすみれは、その娘・久美香を広告塔に、車椅子利用者を支援するブランド【クララの翼】を立ち上げ、翼モチーフのストラップを販売することを思いつく。出だしは上々だったが、ある日ひょんなことから「実は久美香は歩けるのではないか?」という噂がネット上で流れ、徐々に歯車が狂いはじめる。
母親たちの心の奥にあった、価値観の差、家の事情、それぞれのプライド、隠していた想いが顕わになる。そんなある日、子どもたちが行方不明になり……(RENZABURO『ユートピア』より)
・物語を“外側”から見ることによって広がる『未来』の世界――湊かなえ『未来』インタビュー
・失踪し記憶を失った姉は「本物の姉」なのか? 湊かなえが人と人のつながりを問う長編ミステリー『豆の上で眠る』