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7月14日(土)に公開される、映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」。
『惡の華』『ぼくは麻理のなか』で知られる押見修造さんの同名漫画を実写映画化したものなのですが、実はこの漫画、押見修造作品を語るうえで〈絶対に押さえておきたいポイント〉があるのです。
今回はファンの間でも“隠れた最高傑作”と名高い『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』について、「押見修造という人物」、そして「作品の生まれた背景」という2つの視点から迫ります。
“自分の名前が言えない”大島志乃。そんな彼女にも、高校に入って初めての友達が出来た。
ぎこちなさ100%コミュニケーションが始まる――。
いつも後から遅れて浮かぶ、ぴったりな言葉。さて、青春は不器用なヤツにも光り輝く……のか?
1981年に生まれ、2002年に『真夜中のパラノイアスター』でデビュー、その後『惡の華』で一躍その名を世に広めた押見修造さん。『惡の華』では「好きな子の体操服を盗んでいるところを同級生に見つかる」という出来事をきっかけに、同級生の少女の奴隷となり、迷走の深みにはまっていく主人公の姿を描いて反響を呼びました。
思春期特有の屈折した自分探しと、気分が悪くなってしまいそうなほどむき出しで描かれる絶望と葛藤、そして欲望。巧みな物語展開はもちろん、“過去に葬ってきた痛い思春期”をまざまざと見せつける押見修造作品の表現は、役者や映画監督、クリエイターたちからも支持されています。
そんな『惡の華』と同時期に執筆されていたのが、今回映画化される『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』。まったく正反対のテイストの作品ではありますが、本作は「押見修造のルーツが詰まった作品」としても知られています。
その理由は、「他作品とは比べ物にならないほど、自身の経験を下敷きにして描かれているから」。「母音からの発音が苦手」という主人公の設定や、クラスの自己紹介で自分の名前すら言えず笑いものになってしまうというエピソードは、押見さん自身の経験をもとにしているのです。
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』のあとがきで、押見さんはこんな体験を綴っています。
よく覚えているのは、数学の授業のときです。指されたぼくは、答えをわかっていました。答えは「1」でした。でも、その「1」が言えない。「い」が出てこない。
しかしそんな経験を経て押見さんは、「吃音でなければ漫画家になれなかったかもしれない」とも言っています。
相手の心配する気配や不審な視線に敏感だったからこそ、人の表情や感情をこまやかに読み取れるようになった。言いたいことが伝えられないもどかしさの反面、それを漫画という形で爆発させることができた。
そんな痛々しいほどリアルな青春の痛みと希望が、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』の原点となっているのです。
押見修造さんは『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』を執筆するにあたり、自身の好きな作品でもあるアメリカ映画「ゴーストワールド」にインスピレーションを受けたそう。はみだし者の少女2人の鬱屈した日常を描いた青春物語は、本作の中心人物である志乃と加代の姿にも重なります。
そして今回『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』を映像化するにあたり、押見さんがこだわったのが「音楽」。登場人物たちがCDを貸し借りするシーンが登場するのですが、その際の楽曲のセレクトは、キャラクターの精神性をあらわすために押見さんが自ら指定したものなのだとか。
劇中に登場するのは、「NIRVANA」「moonriders」「Dinosaur Jr.」など。これらからも、押見修造作品の独創的な世界を形作ったカルチャーの軌跡をたどれるかもしれません。
押見修造さん自身も大満足の出来だという本作、公開をお楽しみに!
映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」は、7月14日(土)より新宿武蔵野館ほかにて全国の劇場で順次公開されます。
また原作漫画は、太田出版より発売中。手に取りやすい単巻作品でありながら、たった1冊でかなり読み応えのある内容です。
映画ではまた違った結末が用意されていますので、予習・復習にぜひ読んでみてくださいね。
7月14日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開!
出演:南沙良 蒔田彩珠/萩原利久/小柳まいか 池田朱那 柿本朱里 中田美優 / 蒼波純 / 渡辺哲/山田キヌヲ 奥貫薫
監督:湯浅弘章
原作:押見修造『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(太田出版)
脚本:足立紳
音楽:まつきあゆむ
配給:ビターズ・エンド
制作プロダクション:東北新社
製作:「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」製作委員会(日本出版販売 カルチュア・エンタテインメント 東北新社 ベンチャーバンク)
http://www.bitters.co.jp/shinochan/
2017年/日本/カラー/シネスコ/5.1ch/110分
©押見修造/太田出版 ©2017「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」製作委員会