'); }else{ document.write(''); } //-->
ここ2~3年の間に急速に存在感を増している「無料漫画アプリ」。皆さん、無料漫画アプリの普及は、紙の漫画の売上にどんな影響を及ぼしていると思いますか?
先週公開した「無料漫画アプリは紙の漫画の敵なのか?(前編)」では、無料漫画アプリが紙の漫画に与えるプラスの影響の一例として、「オリジナル連載作品の単行本化」をご紹介しました。今回は別の事例をもう一つお話したいと思います。
無料漫画アプリが紙の漫画に与えるもう一つのプラスの影響、それは「すでに単行本化されている作品が無料漫画アプリに掲載されたときの、コミック単行本の増売効果」です。
無料漫画アプリには、そこに初めて掲載される「オリジナル作品」が連載される以外に、「過去に他の漫画雑誌で連載され単行本も出ている既存の作品が、第1話から再掲載される」というパターンがあります。たとえば現在「LINEマンガ」で連載されている漫画は既存の作品が中心ですし、「マンガボックス」や「少年ジャンプ+」は、オリジナル作品の連載と既存の作品の再掲載が混在している状態です。そして一般的には、既存の作品もオリジナル作品と同様、週1回更新で1話ずつ公開されます。
実は、この既存の作品が無料漫画アプリへ再掲載されたときに、その作品のコミック単行本が書店で急に売れ始めるという現象があるのです!
以下にいくつか具体例をご紹介したいと思います。
比較対象として、コミック単行本の一般的な売れ方を簡単に説明します。
こちらのグラフは、2014年9月に発売されたあるコミック単行本第1巻の発売日以降の売れ行きです(日販 オープンネットワークWINより)。ご覧の通り、発売直後にドカンと売れて、翌月には一気に売上が落ち込みます。そして、その後はゆるやかに逓減を続けます。
さて、ここからが本題です。既存の作品が無料漫画アプリに再掲載され始めたとき、コミック単行本第1巻の売れ行きはどのように変化するでしょうか?
まずは「LINEマンガ」掲載の『ハリガネサービス』(秋田書店)から。
〉秋田書店「ハリガネサービス」紹介ページ(試し読みあり)
http://www.akitashoten.co.jp/comics/4253224369
そして『ハリガネサービス』第1巻の月別の売上動向がこちらです(日販 オープンネットワークWIN調べ)。
コミック単行本の第1巻は、2014年9月8日に発売されました。先ほどご紹介した一般的なコミックと同様に、発売時には大きく売上が跳ね、そして翌月には落ち着いています。
「LINEマンガ」での再連載は、4月8日に開始しました。同時期に第4巻も発売になったのですが、じわじわと人気が出始めていた『ハリガネサービス』はここで一気にブレイク!なんと第5巻が発売になった6月には、初版が発売された2014年9月の売上を超えてしまいました!!先ほど紹介した一般的なコミックの動向とは全く異なっています。
『ハリガネサービス』は、主人公の面白い能力設定や個性的なチームメイト、熱い物語と、売れるポテンシャルは最初から十分にある作品でした。しかし、今回のブレイクは「LINEマンガ」への再掲載がきっかけになっていると思われます。
「LINEマンガ」には、『ハリガネサービス』以外にも『ダーウィンズゲーム』(FLIPFLOPs/秋田書店)、『神様、キサマを殺したい』(松橋犬輔/集英社)など、無料掲載をきっかけに大きくブレイクした作品が複数見られます。
続いて、「マンガボックス」掲載の『ぐらんぶる』(講談社)の事例です。
〉講談社「ぐらんぶる」紹介ページ(試し読みあり)
http://kc.kodansha.co.jp/product?isbn=9784063879902
そしてこちらが、『ぐらんぶる』第1巻の月別の売上動向です(日販 オープンネットワークWIN調べ)。
『ぐらんぶる』のコミック単行本第1巻は、2014年11月7日に発売されました。やはり発売月はドカンと売れて、翌月には売上が落ち着いてきます。
(余談ですが、『ぐらんぶる』は無料漫画アプリに掲載される前に、別の要因で売上が大きく跳ねています。3月30日に原作者である井上堅二さんの『バカとテストと召喚獣』(KADOKAWA)の第12.5巻が発売になり、そのあとがきの中で『ぐらんぶる』について触れられたのが影響し、4月・5月の売上が大きく跳ね上がりました。)
「マンガボックス」での再掲載が始まったのは、2015年7月20日。8月には売上が初版の時を超え、大きく跳ね上がっています!もともと『ぐらんぶる』は、井上堅二さんが原作ということで売れる要素を十分に持っていました。しかし「マンガボックス」に掲載され多くの人に知られたことで、人気がさらに加速しています。
これら『ハリガネサービス』『ぐらんぶる』の事例のように、無料漫画アプリへの再掲載は、紙の漫画に大きな増売効果をもたらしているのです。
近年、漫画雑誌を読まずに単行本をいきなり買う“単行本派”の人口が増えていることから、売上が苦戦している漫画雑誌は多いです。一方で無料漫画アプリは急速に成長しており、「マンガボックス」は累計ダウンロード数800万、「LINEマンガ」は1,100万を突破しています。
無料漫画アプリの利用者が増え、アプリで漫画を読む時間が増えることで、紙の雑誌や漫画を読む時間が奪われたり、電子コミックに読者が流れたりする側面はあると思います。しかし一方で、漫画雑誌の媒体力が弱まってきている中、圧倒的な利用者数を持つ無料漫画アプリが、漫画家に連載の場を提供したり、消費者に漫画の面白さを知らしめたりする役割を補完してくれているとも私は思います。
そういう意味で無料漫画アプリは、紙の漫画にとって「完全な味方」とまでは言えないまでも、決して敵ではないのではないかと思うのです。