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2015年に『君の膵臓をたべたい』でデビューして以来、4作すべてがベストセラーとなっている住野よるさん。3月2日(金)には、前作『か「」く「」し「」ご「」と「』から1年ぶりとなる小説『青くて痛くて脆い』が発売されました。
本作は、住野さんが初めて“大学生”を主人公にした物語。ある人物がついた嘘を真実に変えようと行動を起こす、男子学生の「青春の終わり」を描いた作品です。
本作を「何も持たなかった主人公たちが、自分にとっての光を手に入れようとするお話」だという住野さん。そこにはどんな思いが込められているのか、たっぷりとお話をうかがいました。
――『青くて痛くて脆い』は、どういうきっかけから生まれた物語なのですか?
担当編集さんとどんな作品にしようか相談していたときに、「2人っきりの秘密結社の話が読みたい」と言われたのがきっかけです。最初はどうしたものか全くわからなかったんですけれど、2人っきりで秘密結社を作るとして、何を目的に作るんだろうと話し合っているうちに、「誰かがついた嘘を本当にする」というキーワードが出てきたんです。
主人公は、どういう人のついた嘘を本当にしようと思うのか。そこから『青くて痛くて脆い』の骨格ができていきました。
――住野さんの小説には、人との距離感にデリケートな人物たちが多く登場しますよね。本作の主人公・楓も、「人に不用意に近づきすぎないこと」をモットーにしているような不器用な男の子です。
基本的に、教室の隅っこにいるような子たちの心中を書きたくなるんです。
教室の真ん中にいて騒いでいる子たちに比べたら、端っこにいる子たちは自分の価値観をあまり見せてくれない。でももしかしたら、その子たちの方がよっぽどおもしろいことを考えているかもしれない。彼らがどんなことを考えているのかに興味があるし、僕もどちらかというと端っこにいる側だったので、そういう子たちの悩みをちゃんと描いてあげたいんです。
――本作は、ジレンマに揺れる姿が印象的でした。就職活動で履歴書を書いたり面接を受けたりするなかで抱く「本当の自分じゃない」という違和感や、周囲の人や環境が変化していくことへの戸惑い。大人になろうとしている世代ならではの悩みに、読んでいるこちらももどかしさを感じました。
『厭世マニュアル』の阿川せんりさんに触発された部分があって、この作品は、ジレンマを抱えたうえでそのどちらかを自ら掴みにいく話にしたいと思っていました。阿川さんの作品って、読んでいる途中で感情移入を覆されるんですよね。正しいと思っていたことを、「そういうことじゃない」と突きつけられる瞬間がある。
僕もこの作品で、何も感じずにこっちだと決めつけてしまうのではなく、主人公たちが悩んだ末に結論を出す姿をちゃんと見せたかったんです。
僕の作品の登場人物たちは、よく読者の方に「すごくいい子」と好意的に言われるのですが、そんなことないんです。特に『膵臓』の桜良は不治の病にかかっていることをある種利用しているし、主人公だって別にいい人でも何でもない。
住野よるは「キラキラした話を書くやつじゃないぞ」ということも、この作品で見せたいなと思いました。
――いまのお話を聞いて、楓がバイト仲間の川原さんに自分を肯定されて、「自分はそんな人間ではない」と打ち消すシーンが思い浮かびました。これは楓のもう一つのモットーである「誰かの意見に反する意見をできるだけ口に出さないこと」から一歩踏み出すシーンでもありますね。
そうですね。実は僕、これまでの登場人物の中では、楓に一番自己投影していると思います。だから楓のことが大嫌いなんですけど、幸せにはなってほしいんです。
僕が『膵臓』からずっと描き続けているのは、「人は変われるはずだ」ということ。『青くて痛くて脆い』はそのひとつの集大成になる作品だと思っています。
――本作にはヒロインとして、楓とともに秘密結社を作ることになる「秋好寿乃」が登場します。秋好は、周囲から浮いているけれど、「なりたい自分になる」という理想を強く持っている女の子。内向的な楓と対照的なキャラクターですね。
秋好はこれまでの女の子たちとは違う、“真っすぐさが一見、狂気じみて見える”女の子として描きたかったんです。
たとえば『膵臓』の桜良は、自分の可愛さをわかっていて、それをさらに自ら演出していて、そういう面も透けて見える。でも秋好は、ぱっと見は本当に〈ただの痛いやつ〉。だけれど、傷ついていないわけでも、汚れていないわけでもない。それでも理想を信じている、そんな人物像にしようと思いました。
ちょうど本作を書き始めた頃に、担当さんやほかの作家さんと「純粋無垢で真っすぐな人って危ういな」という話をしていて。正しいものを正しいと疑わない人や汚れていない人って、良い側面だけじゃなくてその無垢さで誰かを傷つけもするし、独特の狂気がある。
おとなしい男の子と明るい女の子の組み合わせが好きなのは、完全に性癖ですね(笑)。女の子に振り回される話を書くのが、一番楽しいです。
後編へ続く(2018年4月14日公開予定)
・『青くて痛くて脆い』で読者にも一緒に傷ついてほしい――住野よるインタビュー【後編】
人に不用意に近づきすぎないことを信条にしていた大学1年の春、僕は秋好寿乃に出会った。
空気の読めない発言を連発し、周囲から浮いていて、けれど誰よりも純粋だった彼女。秋好の理想と情熱に感化され、僕たちは二人で「モアイ」という秘密結社を結成した。
それから3年。あのとき将来の夢を語り合った秋好はもういない。僕の心には、彼女がついた嘘が棘のように刺さっていた。「僕が、秋好が残した嘘を、本当に変える」それは僕にとって、世間への叛逆を意味していた――。
【著者プロフィール】
住野よる Yoru Sumino
高校時代より執筆活動を開始。デビュー作『君の膵臓をたべたい』がベストセラーとなり、2016年の本屋大賞第2位にランクイン。他の著書に『また、同じ夢を見ていた』『よるのばけもの』『か「」く「」し「」ご「」と「』。よなよなエールが好き。
オンライン書店「Honya Club.com」限定! 住野よるさんのサイン色紙が抽選で当たります。
〉サイン色紙の応募についてはこちら
https://www.honyaclub.com/shop/e/etenbo80a/
・「キミスイ」「また夢」の住野よるさんってどんな人?本人に直接聞いてみた〈単独インタビュー〉
・住野よるインタビュー『よるのばけもの』と読書について思うこと ―特集:本と、ともに①
・住野よる最新作『か「」く「」し「」ご「」と「』2017年3月発売!高校が舞台の青春ミステリー
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