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  • 「保育園落ちた日本死ね」は名キャッチコピー?金田一秀穂インタビュー:現代の言葉とコミュニケーション

    2018年03月08日
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    ほんのひきだし編集部
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    「保育園落ちた日本死ね!!!」は優れたキャッチコピー? シンプルなネット言葉の強さと危うさ

    ――ネットで使われている言葉は、シンプルでメッセージ性が強いものが多いように思います。強すぎる言葉は、ときに人を傷つけてしまうこともありますよね。

    発信する人は、そういうことを分かっておかなきゃいけないよね。ネットで使う言葉には、その強さがあるんだよって。

    そりゃ「死ね」って言いたいことはありますよ。「バカ」って言いたいときもあるし。でも、もしどうしても言いたかったら、本当に「バカ」って思ってるかどうかを1か月ぐらい考えてからの方がいいね。1か月たってまだ「バカ」と思うなら言ってもいいです(笑)。

    ――あまり深く考えずに発言してしまうのは、ネットの匿名性とか気軽さが原因なのでしょうか。

    そうですね。LINEなどでも、読んですぐ返事をしなくちゃいけないらしいですね。早く答えなくちゃいけないから、考える時間がなくなってしまう。おのずと簡単な言葉になってくるよね。

    ――たしかに、何に対しても「すぐ答えられなきゃダメだ、誠実じゃない」みたいな部分があるように感じます。

    よくない傾向ですよね。「それについてはよく考えさせていただきます」って言って、1週間ぐらい考えて「いろいろ考えましたけれど」って答える。本当はそれが正しいやり方ですよね。

    人って本来、そんな簡単に1つの問いについて答えられないし、出した答えだってあいまいなものだし、複雑なものなんだよね。言葉だってもっと複雑だしあいまいだし考えないといけない。即座に答えたことが本音だと思われがちですけど、嘘ですよ。

    ――一方で、『日本語のへそ』の中でも触れられている、昨年の「保育園落ちた日本死ね!!!」は端的な言葉ですが、かなり生々しい感情が伝わってきました。

    これって本当に「日本死ね」と思っているのではなくて、「もうこの世の中やだな」って言ってるわけでしょ。それは伝わってきます。

    すごい短い言葉だからわかりやすいよね。キャッチコピーとして上手だと思いますよ。ただ、あんなに世間的に話題になるとは思わなかったでしょうね。

     

    なぜ、“炎上”は起こるのか?

    ――最近では、このようにちょっとした発言がすぐネットで“炎上”する恐れがあり、言いたいことが言いづらかったり、言葉を選んでしまう風潮があります。 そもそも、どうして炎上してしまうのでしょうか。

    すぐ炎上してしまうのは、最近の風潮として「側面だけを見て判断してしまう」傾向にあるから。いい面もあるけど悪い面もあるとか、そういうふうにあいまいに物事を考えることをしなくなってきている。

    それはね、小泉元総理以来なんじゃないかなって。小泉さんのスパッスパッと物事を「○か×」で切っていくような、あれがすごくうけたんですよ。だからうまくそれができない人は批判されるわけです。

    ――本書の中で「言葉は、基本的に何からも自由であるべき」と述べられていますが、今の風潮の中で言葉の自由を実現するためにはどうすればよいでしょうか。

    基本的には炎上を気にしなければいいと思います。「炎上するだろうな」と思って自主規制するほうがこわい。そういうのを気にすると、発言が不自由になります。逆に、「SNSに書く」ということは、全世界に発信しちゃうことだからある程度覚悟が必要です。

    さっき言ったみたいに、「こいつバカだな」と思ったとして、それを本当に1か月考えても同じように思ってるならいいんですよ。それで「バカ」って言って炎上したってしょうがないじゃない。そういうインターネットリテラシーっていうものを、発する側も受け取る側も、もっと学ぶべきですよね。

    ――最近よく話題になるになる不倫問題も、不倫の事実だけをみて世間は断罪してしまうというか。

    要するに〇×なんですよね。「何とかは何とかだ」という。単純すぎるんですよ。論理は、そんな単純なものではない。

    ――そういうふうに考える人たちの存在も考慮に入れて、SNS上の発信では覚悟を持つことが大事ということでしょうか。

    もちろん、全部が全部そういうふうに考える人だけじゃないですよ。きちんと深い思慮に基づいて発信している人もいますからね。

    (受け手としては)その人が発する言葉を理解しようとすることが大切です。それが人間の深さにつながってくるから。知識だけで考えようとするんじゃなくて、もっと理解しようとすること。

    「難しい言葉を知ってること」自体はちっとも大切なことではないですよ。今の世の中みたいに、知識ばっかり問われて知っているか知ってないかで判断されちゃうっていうのは、生きていく上でとても危ないです。

    ――今は何でも簡単に検索できてしまうから、自分で考える機会は減ってきていますよね。

    そうそう、便利な世の中だよね。でも、これから身の回りで起こることに対しては、自分で考える。そういう習慣をきちっと身につけておくべきだね。

    センター試験にしてもそうだけど、知識だけを問う問題なんてつまらないでしょ? 知識だけならこれからはAIにまかせておけばいいんですよ。効率的なことはAIに任せて、もっとムダなことをしたほうがいいんです。とりとめのない会話とかね。

    そういう「ムダにみえるけど人にとって大切なもの」について、この本ではお話してみました。 だから『日本語のへそ』読んでね(笑)。

    ※取材・文:青春出版社 プロモーション部 西尾
    ※写真:富本真之

    日本語のへそ
    著者:金田一秀穂
    発売日:2017年12月
    発行所:青春出版社
    価格:968円(税込)
    ISBNコード:9784413045223


    金田一秀穂
    1953年東京都生まれ。上智大学文学部心理学科卒業後、1983年、東京外国語大学大学院日本語学専攻を修了。ハーバード大学客員研究員等を経て、現在は、杏林大学外国語学部教授を務める。祖父の金田一京助(言語学者)、父の金田一春彦(国語学者)に続き、自身も日本語研究を専門とする。

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