'); }else{ document.write(''); } //-->
小学生時代、放課後の音楽室でピアノの調律を目にしたことがあります。先生は、「みんなが楽しく歌を歌えるような調律をしてもらっているんだよ」と説明してくれました。
それぞれのピアノや、それぞれの演奏者にあわせて繊細な調整を行う「調律」。デジタル化やAIの導入が広く一般化されている現代においてはなおさら、まさに「人間ならでは」の仕事と言えるかもしれません。
そんな「調律」をテーマに、「第13回キノベス!」第1位、「第4回ブランチブックアワード」大賞、「第13回本屋大賞」第1位と、三冠を達成した宮下奈都さんの『羊と鋼の森』。今年6月には山﨑賢人さん主演で映画化されることでも話題の本作が文庫化、2月9日(金)に発売されました。
高校生のときにピアノの調律師と出会ったことで、調律の世界に魅せられた青年・外村。『羊と鋼の森』は、そんな外村が理想の音を作るために悩みながら、先輩調律師やピアノを愛する姉妹といった人々と出会い、成長していく物語です。
音楽の専門用語も登場しますが、敷居は決して高くありません。宮下さんの文章は、それ自体が美しい音楽のよう。清らかにそよぐ風のような文体に身を任せていると、まるで自分も北海道の静かな森の中で、優しいピアノの音色に耳を澄ましているような感覚を味わうことができます。
作中では、作家・原民喜さんが「理想の文体」として残した言葉がたびたび引用されています。
明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体。
とても印象的なこの一文。外村が調律師として成長していく上で、大きな意義をもつ言葉となります。ぜひ、このフレーズを心に留めながら読み進めてみてください。
感覚的で細やかなニュアンスを手作業で作り出す調律師は、まさに現代の職人。その奥深い世界を、少しだけのぞいてみませんか?
CAST
山﨑賢人
鈴木亮平 上白石萌音 上白石萌歌
堀内敬子 仲里依紗 城田優 森永悠希 佐野勇斗
光石研 吉行和子
三浦友和
STAFF
原作:宮下奈都『羊と鋼の森』(文藝春秋)
監督:橋本光二郎
脚本:金子ありさ
音楽:世武裕子
配給:東宝
2018年6月8日(金)より公開
〉映画「羊と鋼の森」公式サイト
http://hitsuji-hagane-movie.com/
©2018「羊と鋼の森」製作委員会
あわせて読みたい
・宮下奈都4年間の歩みを綴るエッセイ集『緑の庭で寝ころんで』は、読者の心をほぐしてくれる一冊
・宮下奈都さんが「知らない本屋さん」で見つけた本:読書日記「旅の本屋さんにて」
・宮下奈都さんの本屋大賞受賞後第一作『静かな雨』 「これだけ私の人生の詰まったものを書けといわれたらもう書けない」