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『夫のちんぽが入らない』で衝撃のデビューを果たしたこだまさん。第2作となる『ここは、おしまいの地』が、1月25日(木)に発売されました。
本作は、住んだ土地はどこも限界集落のような“おしまいの地”ばかりというこだまさんが、家族や仕事、これまで体験してきた一風変わった出来事を綴ったエッセイ集です。
前編では匿名で活動されているゆえの悩みや、収録されているこだまさんならではのエピソードについてお聞きしました。インタビュー後編では、こだまさんの文章にあふれるユーモアの所以や、書くことへの思いを語ってくださいました。
《 前編から読む
―― 前作もそうでしたが、こだまさんの文章は、耐えられないほど苦しい出来事や切ないエピソードでもユーモラスにさらりと書かれていますよね。その加減が絶妙なので、身構えることなく作品の世界に引き込まれました。
ブログを書いていたときから、つらい話をそのまま書かないようにしていました。暗い話ほど滑稽に書いたほうがいいのではないかと思っていて。
―― そうした文章を書くコツは、どうやって身につけられたのですか?
病気で教員を辞めて引きこもっていた時期に、「ネット大喜利」といわれているものにハマったんです。
サイト上で出されたお題に数百人が答えて、見ている人が点数で評価をつけてくれるというものなんですが、そのときに「おもしろさを言葉で表現する」ということに夢中になりました。評価されることで、「私も言葉で人を笑わせることができるんだ」と初めて気が付いて。
たまたま私が参加していたのが本当におもしろい人たちが集うサイトで、『夫のちんぽが入らない』が載った同人誌「なし水」を作った仲間とも、そこで知り合いました。みんな言葉選びが素晴らしくて、「一緒におもしろいものを作ろう」という気持ちになれる。偶然そういう場所に出会えたことが、私にとっては大きかったのかもしれないですね。
―― 病気のことやつらい体験などをエッセイとして客観的に見つめて書くことは、大変な面もあるのではないですか?
毎回大変でした。でも病気のことなどは「こんな状態になっちゃって、また仕事を辞めなきゃならない」と感じながらも、それをおもしろく書くことで「この入院は自分にとってマイナスではない」と思うことができます。さらにこういうふうに本の形になると、もう少し前向きな気持ちになれるんです。
―― こだまさんがそうやっていろいろなことを受け入れていく過程を読むことで、読み手もわが身を振り返って、苦笑いしつつ自分を認めることができるように思います。その読後感が、こだまさんの文章がこれだけ支持される理由のひとつでもあるのではないでしょうか。
そうですね。苦笑いが近いです。「失敗しても、苦笑いしながら生きていくしかないか」と。
書いているときは、「何かのために」「誰かのために」という気持ちはなくて、自分の失敗や、つらかった思いをおもしろおかしく書くことで消化しています。人への押し付けにはなりたくないという気持ちもあるので、「こういうふうにすることにしました」「こうして生きていこうと思います」という私自身の思いを示している感じでしょうか。
自分では身近なごく小さいことを書いているつもりでも、受け手の方が自分の話のように深めて共有してくださったり、懐かしがってもらったり。読んでくださる方の力に頼っているような気がしますね。
――『ここは、おしまいの地』には、「経験してきた恥ずかしい出来事すべてが、書くことに繋がるのなら、それでいいじゃないか」と書かれています。本書からは、書いていくことへの覚悟のようなものも伝わってきました。
「失敗は全部エッセイのネタになるんだな」ということがわかってきて、つらいことでも楽しいことでも、書いて形にすることでようやく「私の人生も悪くなかったんだ」と自分を肯定できました。
病気にしろ人間関係にしろ、これまでずっと「なんで私だけ失敗ばかりするんだろう」と悩んでいたんです。でも書いていたら楽しくて、それが本になって多くの人に読んでもらえるようになったことが自信につながっていますね。
―― 今後はどのように執筆に取り組んでいかれる予定ですか?
初めて小説に挑戦しようと思っています。『夫のちんぽが入らない』は私小説とはいえほぼ自分の実体験です。今度は出来事などは土台にするかもしれないですが、主人公は私とはまったく違う過去を持っているような、一から作る作品にチャレンジしていきたいです。
こだま
主婦。2017年1月、実話を元にした私小説『夫のちんぽが入らない』でデビュー。発売からいままでで13万部(2017年12月現在)を到達し、「ブクログ大賞2017」ではエッセイ・ノンフィクション部門にノミネートされる。現在「Quick Japan」「週刊SPA!」で連載中。