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「子どもの頃から本が好きで、本屋さんの棚を見て、ここに私が書いた本を入れたい」と作家を目指した山崎ナオコーラさん。本屋さんに並んだ自著を見るときが、いまでも一番グッとくる「作家の仕事の頂点」だ。
仕事場の本棚や壁には、絵画やミニチュアの靴などをはじめとする趣味の品々がさりげなく飾られ、目を楽しませてくれる。
「ひとりで黙々とやる作業」が性に合っているため、庭仕事や編み物、何より「文章を書くことが好きなのかもしれません」。
8月に刊行された最新作『反人生』は、4編を収めた小説集。表題作の主人公・萩子は、幾度かの大震災と戦争を経て、日常の一瞬のきらめきのみを見つめながら日々を送る。「反人生」は「いわゆる“人生”を作らない物語」。収録作の短編2つ(「越境と逸脱」「社会に出ない」)は男友だちの話だが、「男友だちも人生の話をするときには端折る部分。そういう取るに足らないことを書きたいと思って編んだ本です」。
儚くもゆるやかな日常と関係を掬い上げた一冊には、生の痛みと輝きが満ちている。
「反人生」は谷崎潤一郎の『細雪』と『源氏物語』への憧れが込められた作品。「コーヒーやビーズなど小さいことに注目して、日常の些細なことをひたすら書くような小説にしたくて」。第二次世界大戦中に書かれた『細雪』も戦争について直接的な表現はほとんどないが、「化粧がどうだ、着物の柄がどうだと戦争中によく書けたなと」。日常に拘泥することで、浮かび上がる反戦への思いを一生懸命書き続けていく。「それが社会的に意義のある、作家の仕事なのではと思っています」
埴谷雄高に心酔していた大学の先生が彼の仕事場になぞらえて曰く「地球儀と小鳥があれば作家になれる」。「小鳥は放し飼いだったそうなので無理だけど、地球儀は置こう」と、常に仕事机の一角に。
山崎ナオコーラ Nao-cola Yamazaki
(イラスト:©フジモトマサル)
1978年生まれ。2004年「人のセックスを笑うな」で第41回文藝賞を受賞し、作家となる。著書に『カツラ美容室別室』『論理と感性は相反しない』『この世は二人組ではできあがらない』『ニキの屈辱』『昼田とハッコウ』『ボーイミーツガールの極端なもの』『可愛い世の中』など。目標は「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい」。
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