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弊社作成の絵本ガイド「いくつのえほん」には、0歳~7歳向けのおすすめ作品が年齢別にまとめられています。中には作品が複数紹介されている作家さんもいて、そのうちの一人・木村裕一さんは、0歳向けと6歳向けでそれぞれ1冊づつ紹介されています。
どちらも大ベストセラーですが、6歳向けの『あらしのよるに』(1994年、講談社)はテレビアニメや映画といったメディア展開もされたので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
本作は、ヤギの「メイ」とオオカミの「ガブ」が、嵐の夜に、それぞれが住む場所の中間あたりにある壊れかけた小屋に逃げ込むシーンから始まります。ここから始まる「勘違い」と「心の葛藤」が本作の見所です。
2匹は会話する中で、時々「どうも声色がヤギ(オオカミ)っぽくないな」「住んでいる場所がオオカミ(ヤギ)っぽくないな」とお互いに疑問を持ちますが、好物や姿といった「決定的な違いがわかる瞬間(=正体がわかる瞬間)」に絶妙なタイミングで雷鳴が鳴り、確認できないまま一晩を過ごします。そしてラスト、それぞれが自分と同じ種別と思ったまま、そう、勘違いしたまま、2匹は別れます。
※余談ですが、これはお笑いコンビのアンジャッシュがよくやる「勘違いコント」と同じ構造です。
別れる直前、2匹は翌日に再会することを約束します。続く本文が以下です。
あくるひ、このおかのしたで、なにがおこるのか。
(最終頁より引用)
この余韻、この今後の展開を想像してやまない一文。この続きは次巻『あるはれたひに』(1996年、講談社)の一つ目の山場で描かれ、勘違いした2匹はお互いを認識します。
「心の葛藤」部分の最大の山場は、(何巻かは伏せますが)「ガブがいかにメイへの食欲を抑えるか」という場面に尽きます。オオカミにとってヤギは本来は食料であり、この複数の感情が交差する心の描写は、読む側の心もヒリヒリさせます。
※余談ですが、これは『東京喰種トーキョーグール』(石田スイ、2011年~、集英社)のカネキとヒデの関係と同じ構造です。初読時、「あ、これはガブとメイの関係そのもの」と思いました。
発売から20年以上経つ本作ですが、この「勘違い」と「葛藤」の魅力を、ぜひ店頭でお確かめください。