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11月21日(火)に発売された、『えがないえほん』。その名の通り、本作には絵が一切ありませんが、「ぶりぶりぶ~!」といった子どもが喜ぶオノマトペがふんだんに盛り込まれ、「子どもが絶対に笑う本」として、すでに累計15万部となっています。
前編では、保育園で実際に行なわれた訳者・大友剛さんによる読み聞かせ会の様子をお伝えしました。後編では、「なぜこんなに子どもが喜ぶのか」といった本作の魅力や楽しみ方を、大友さんに教えていただきます。
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――先ほどの読み聞かせ会では、子どもたちの熱気がすごかったですね。中でも『えがないえほん』には大興奮の様子でしたが、まずは本作を翻訳したきっかけについて教えてください。
今日の読み聞かせ会で最後に読んだ『ねこのピート』の読み聞かせ動画をYouTubeにアップしているのですが、それを早川書房の方が見て、会場の一体感や掛け合い、対話が本作にもぴったりだということで依頼を受けました。
――初めて原書を読んだときの印象はいかがでしたか?
私はアメリカにいたことがあるので、アメリカのセンスが活かされた絵本だなとなつかしい感じがしました。でも「日本ではどうかな、受け入れられるかな」という不安もあって。
たとえばアメリカのコメディって、30秒に1回笑いが起きるようになっていますよね。笑いのセンスは国や文化によって違うので、それを日本の子どもたちに受け入れてもらえるように翻訳するのが難しかったです。
一方で、本作の翻訳を手がけたことで絵本の可能性をあらためて感じました。この絵本には本当に1枚も絵がなくて、ストーリーもありません。オノマトペや歌だけでこんなに子どもたちが笑う絵本は、いままでなかったと思います。
▼『えがないえほん』は擬声語・擬態語が中心。デザイン性のあるフォントや余白を生かした構成で、視覚的なインパクトでも子どもの興味を惹きつけます。
――本作を翻訳するにあたって、どのようなことを意識されましたか?
最も意識したのは言葉選びですね。YouTubeで公開されている作者のB・J・ノヴァクさんの読み聞かせ動画は、350万回以上再生されています。それを見て「読んだときに子どもたちが同じように喜んでくれるものにしたい」と思い、原書の流れや雰囲気を壊さないように言葉を選びました。
▼B・J・ノヴァクさんの読み聞かせ動画はこちら
――刊行するまでにも実際に子どもたちに読み聞かせをしながら、翻訳をブラッシュアップされたそうですね。
出版する前に18か所を回って、親子2,000人に読み聞かせをしながら翻訳を固めていきました。
大人が頭で考えただけでは、子どもたちがあれほど大笑いしてくれるようなものにはなりません。特にこの絵本は、大人がパラパラめくってみても、さっぱりおもしろさがわからない(笑)。大人は意味を理解しようと文章を読みますが、子どもは子どもならではの感覚で、言葉からいろいろと想像を広げているのだと思います。
子どもたちは私たち大人とはまったく違う楽しみ方をしているので、その様子を見ることは「子どもとはどういう存在なのか」「どういうセンスを持っているのか」を考えるきっかけにもなりました。
――本作は、「ぜんぶ よまなきゃ だめ?」といった、書かれている文章を読むだけで、子どもたちと掛け合いが楽しめる作りになっていますね。この絵本で読み聞かせに親しむと、読む側の意識にも変化がありそうです。
読み聞かせについては、「感情移入をしないで、淡々と読む」という考え方が昔からありました。しかし最近では、自由にパフォーマンスをするやり方も出てきていますし、いろいろな表現方法があっていいと思います。
『えがないえほん』は、「読み手の技量が問われる絵本」とよく言われるのですが、そんなことはありません。
テレビなどでは「誇張して読むと盛り上がります」とか、「自分の殻を破りましょう」といった紹介をしていただくこともありますが、そもそも本書は、「いつもしつけをする側のお父さん、お母さんが、“おバカな言葉”を言わされて、戸惑う姿」に子どもたちが笑うように作られています。基本は親子で楽しむように設定されているのです。
――「親子それぞれの楽しみ方があっていい」ということですね。
そうですね。絵本というのは親子が一緒に楽しむのが一番だと思うんです。いつもちゃんとしている、偉そうなことを言っている大人が渋々読んでいる。その姿もまた子どもたちを笑わせるのでしょう。
――最後に、そんな『えがないえほん』を読み聞かせる大人たちにメッセージをいただけますか?
私自身もいま子育てをしているのですが、この絵本を読むことによって、「この子はここに反応するのか」といった新しい発見があります。子どもたちが笑い転げる様子に、こちらが元気になったり、癒されたり。
また、読み方によっても子どもの反応は毎回違うので、「じゃあ次はこう読んでみようかな」といろいろ試してみたくなる作品になっていると思います。
――親も子も、読むたびに違った発見がありそうですね。
ちょうど発売から1か月が経ったところなのですが、すでにたくさんの反響をいただいています。「4歳の子どもが『なっとうのみそしる』を飲みたいというので、家族で作ってみたらおいしかったです」とか、「親子だけでなく、兄弟で読み聞かせをして大爆笑しています」とか。関係があまりうまくいっていない親子が「一緒に笑って、いい時間を過ごせました」など、いろんなエピソードが毎日届きます。
そんなふうに、こちらが意図していなかった形でみなさんが楽しんでくださることがすごくうれしい。この絵本は、子どもたちが、そして親子がただ笑うことに意味がある本だと思うので、そんな笑顔がいっぱいの時間を過ごしていただければ何よりですね。
▼たった一言で子どもが笑う!『えがないえほん』読み聞かせの様子は、こちらから見ることができます。
大友 剛 Takeshi Otomo
ミュージシャン、マジシャン、翻訳家。自由の森学園卒業後、アメリカ・ネバダ州立大学で音楽と教育を学ぶ。音楽とマジックという異色の組み合わせで国内外で活動するほか、全国各地で年間250本ほど読み聞かせを行っている。翻訳絵本に『さわってごらん! ふしぎな ふしぎな まほうの木』『さわってごらん! よるの星』『ねこのピート』シリーズなどがある。