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  • 〈池井戸潤さんインタビュー〉半沢直樹再び!シリーズ3作目『ロスジェネの逆襲』文庫版が発売

    2015年09月02日
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    日販 商品情報センター「新刊展望」編集部
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    この作品は「週刊ダイヤモンド」(2010年8月7日号から2011年10月1日号まで連載)ではかなり人気が高かったんです。読者アンケートの順位は連載が進むにつれて徐々に上がってきて、後半ではずっと3位。1位がその号の第1特集、2位が第2特集で、その次がこの小説だったそうです。終盤ついに特集を抑えて1位になったので、最終回は巻頭に掲載していただきました。「週刊ダイヤモンド」史上初の巻頭小説でしょう。

    「週刊ダイヤモンド」のようなビジネス誌の読者は、情報を得ることが目的で雑誌を手にしていると思っていたので、小説がそんなにも読まれるのは正直意外でした。従来の「企業小説」と呼ばれるもの、たとえば高杉良さんの小説などは、イコール情報小説。実際にあった銀行の合併話などを取材し、実名で書けない部分は偽名で補って、事実に基づいた情報をしっかり書くというものだった。小説だけれど、ある意味ではジャーナリズムというか。「週刊ダイヤモンド」の読者ならば、当然そういうものを期待しているのだろうと。それに対して、僕の小説は基本的に嘘話、荒唐無稽なフィクションです。こんな話はあり得ないという物語。それを「週刊ダイヤモンド」の読者が果たして読むのか、連載当初は疑問に思っていました。だからといって迎合するつもりはなかったので、書いてみたわけですが。

     

    「組織と戦うということは要するに目に見える人間と戦うということなんだよ」by 半沢直樹

    一見、「企業小説」ふうの色をしているけれど、僕が書いているのはあくまでも「人間」です。企業で働く人間が「自分はなぜ仕事をするのか」と意味を問うていく。そういう面では「会社員小説」と言ってよいでしょうね。企業小説には、そういう根本的な疑問がない。あるプロジェクトを完成させるためにあの手この手と頑張るけれど、自分が人として仕事に関わることの意味や、足もとの議論は一切ないんです。もちろんそういう企業小説も一方ではありだとしても、小説とは基本的に人を書くべきものだと僕は思う。「人間」にフォーカスしていきたいんです。

    「与えられた仕事に全力を尽くす。それがサラリーマンだろ」

    「サラリーマンは――いや、サラリーマンだけじゃなくて全ての働く人は、自分を必要とされる場所にいて、そこで活躍するのが一番幸せなんだ。会社の大小なんて関係がない。知名度も。オレたちが追求すべきは看板じゃなく、中味だ」

    「仕事は客のためにするもんだ。ひいては世の中のためにする。その大原則を忘れたとき、人は自分のためだけに仕事をするようになる。自分のためにした仕事は内向きで、卑屈で、身勝手な都合で、醜く歪んでいく。そういう連中が増えれば、当然組織も腐っていく。組織が腐れば世の中も腐る。わかるか?」

    ――これらの半沢の台詞は、最近僕がよくインタビューで言っていること。ここのところ、仕事論とか仕事で悩んでいるというシチュエーションでのインタビューがとても多いんです。特に、30代の中堅サラリーマンで目的を失いかけているような人たち。その悩みはかなり深刻になっているということがインタビューを受けてわかってきた。

    おそらく何らかの出口や答えを求めている人は多いと思います。それに対する答えを書いたわけではないけれど、物語を書いていく中で僕なりに考えていることをちょっと出してみようかなと。いろいろな登場人物になり代わって物語を進めているのは僕なので、僕自身が仕事について考えなければ書けないですからね。答えにはならないかもしれないけれど、考え方のバリエーションを増やす上では多少の助けになるだろうという気はします。

    会社員をやっていると、誰でも不満はいっぱいあると思います。半沢はそこで言いたいことを言う。でもみなさんは、決して半沢の真似をしないようにしてください。みなさんの代わりに半沢が啖呵を切るので(笑)。

    このシリーズは、僕自身にとっても娯楽小説です。書いていて心地よいし、たまに半沢と遊ぶ、みたいな感じ。今度は支店長になった半沢も書いてみたいですね。

    (2012.6.18)


    jun ikeido.01池井戸 潤 Jun Ikeido
    1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。「果つる底なき」で第44回江戸川乱歩賞、『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞、『下町ロケット』で第145回直木賞を受賞。著書多数。これまでに映像化された作品は、『果つる底なき』『空飛ぶタイヤ』『鉄の骨』『下町ロケット』『七つの会議』『不祥事(ドラマタイトルは「花咲舞が黙ってない」)』『ルーズヴェルト・ゲーム』『株価暴落』『ようこそ、わが家へ』『民王』等。「半沢直樹」シリーズには『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』と『銀翼のイカロス』がある。

    オレたちバブル入行組
    著者:池井戸潤
    発売日:2007年12月
    発行所:文藝春秋
    価格:713円(税込)
    ISBNコード:9784167728021

    民王
    著者:池井戸潤
    発売日:2013年06月
    発行所:文藝春秋
    価格:713円(税込)
    ISBNコード:9784167728069

    不祥事 新装版
    著者:池井戸潤
    発売日:2011年11月
    発行所:講談社
    価格:751円(税込)
    ISBNコード:9784062771375


    (「新刊展望」2012年8月号より)common_banner_tenbo

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