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「家よりも外の方が気分が紛れる」と、日中は外で仕事をすることが多い。最寄駅前のコーヒーショップで、午前と午後の2時間ずつ。昼食は、気分転換も兼ねて近辺の店で取る。外出先での執筆は、もっぱら大学ノートに書いている。家ではそのノートに書かれた原稿を、推敲しながらパソコンに打ち込んでいく。
今年は単行本・文庫を合わせ毎月新刊が発売される活躍ぶり。さぞ忙しい毎日かと思いきや、「明日できることは明日に回して、ぼーっと過ごしています」。
『炎の塔』は、地上100階建ての超高層タワーで火災が起こり、最上階に取り残された1,000人の人命を救うべく女性消防士が活躍する物語。最新式の防火設備を過信する施工主や技術者たち。一度火災が起これば、スプリンクラーや消火器といった従来の機器で対処せざるを得ない消火設備。上へ上へと伸びるタワーに、「想定以上の何かが起きたらどうするのか」。そんな不安を滲ませつつ、猛火に立ち向かう人々の誇りと友情を描き出す。緊張感みなぎるタイムリミットサスペンスだ。
自宅の仕事部屋には、余計なものが一切ない。過去の資料や読んだ本はよほどでない限り処分する。「面白いと思った映画に刺激を受けることが多い」という五十嵐さん。中央のリクライニング・チェアの正面にはテレビが置かれていて、週に2、3本はここで昔の映画を観る。『炎の塔』はパニック映画の名作「タワーリング・インフェルノ」へのオマージュでもある。「仕事は嫌い(笑)」と言いつつも、締め切りに遅れたことはない。「僕も編集者だったから、納期を守るのは性分ですね」
小さな文字がびっしり書かれた大学ノートは、失礼ながら判読が中々難しい。プリントアウトにコーヒーショップで赤入れし、修正をデータに移す際にまた直しを入れて……と入稿データが出来上がる。
五十嵐貴久 Takahisa Igarashi
1961年東京都生まれ。成蹊大学文学部卒業。2002年『リカ』で第2回ホラーサスペンス大賞を受賞し、デビュー。警察小説から恋愛小説、青春小説まで幅広くエンターテインメント小説を手掛ける。他の著書に『交渉人』『For You』『リミット』『贖い』『編集ガール!』(9月2日文庫発売)など多数。