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  • 高校野球に関わる人たちのリアル『敗者たちの季節』著者・あさのあつこさんインタビュー

    2015年08月11日
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    日販 商品情報センター「新刊展望」編集部
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    「人のすがた」を見てほしい

    「人は甲子園に物語を求める。
    それを知った。
    わかり易く感動的な、あるいは悲劇的な物語を求めて止まない。」
    「大好きで小さいころから続けてきた野球が、大なる目標であった甲子園が、実に矮小な物語に取り囲まれていると知るたびに、その物語たちに搦め捕られそうな自分を感じるたびに、気持ちが重く沈んでしまうのだ」
    『敗者たちの季節』の一節である。

    周囲のさまざまな思いを背負って試合に臨む選手たち。しかし彼らは、無責任な期待とは関係なく、自身の思いを込めて野球と向かいあう。

    「私たちは高校野球というものにさまざまな物語を求めます。日常生活ではなかなか見ることができない、極端に言ってしまえば汗と涙の物語というものを見ようとしてしまう。私も、若い人が汗みどろで頑張っているのをちょっと見るだけでなんだか目がうるうるしてしまいますが、野球をしている高校生たちからすれば、そんなものはどうでもいい話で、本当に、自分と野球というものに真摯に向かいあっています。その『ずれ』のようなところはずっと感じていて、『亡き父のために頑張るエース』とか、『重病の友達のために応援』というような、わかりやすい定型の物語に対して、私の小説は反抗したいと思っていました。『さいとう市立さいとう高校野球部』(2013年8月発売)でも、描き方は違いますが、同様にマスコミによって作られた像の中に流し込んでしまうことへの違和感について触れています。これは、高校生の野球を考えるとき、ずっと自分の中にあるものです」

    海藤高校のキャプテン、尾上は甲子園の選手宣誓で力強く決意を述べる。
    「宣誓。我々は高校球児として今日ここに集える喜び、甲子園でプレイできる喜びを噛み締め、自分たちの背負ったたくさんの思い、悩み、焦燥や迷いとともに、かけがえのない一日一日を生きて、かけがえのない一試合一試合を戦いぬくことを誓います」

    「自分でもうまく説明できないような思いに駆り立てられて野球をしている子はたくさんいて、たとえば、レギュラーポジションを争う相手への嫉妬や憎しみ、それから、彼女に見てもらいたい気持ち、本当に野球が好きだという思い、簡単にわかりやすい言葉に落とし込めないものを、若い人たちはたくさん抱えているはずなので、そのような気持ちを汲んだ話をきちんと書きたいなと思いました。

    人のすがたを見てほしいというのは、野球の話だけでなく、時代小説など私のどの物語でも一緒です。選手の親や監督、控え選手のような人たちも含めて、『こういう人がいるんだよ』ということを伝えたいと思っています」
    (2014.6.24)

    敗者たちの季節
    著者:あさのあつこ
    発売日:2014年07月
    発行所:KADOKAWA
    価格:1,430円(税込)
    ISBNコード:9784041018378

    あさのあつこさん

    あさのあつこ
    岡山県生まれ。青山学院大学文学部卒。大学在学中より児童文学を書き始める。1991年、『ほたる館物語』で作家デビュー。『バッテリー』およびその続編で野間児童文芸賞、日本児童文学者協会賞、小学館児童出版文化賞を受賞。「NO.6」シリーズ、「さいとう市立さいとう高校野球部」シリーズ、『十二の嘘と十二の真実』ほか著作多数。


    (「新刊展望」2014年9月号より)
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