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高校教師と生徒として出会った2人が時を経て再会し、決して許されない、一生に一度の恋に落ちる――。そんな美しくもやるせない、究極の恋愛を描いた映画「ナラタージュ」が、10月7日(土)に公開されます。
原作は、島本理生さんが20歳という若さで書き下ろし、2006年「この恋愛小説がすごい!」で第1位に輝いた同名小説。島本さんの作品の中でも特に高い人気を誇り、自身にとっても「大事な作品」なのだそうです。
今回は島本さんへのインタビューで、その作品の魅力と映画化について迫ります。
島本理生 Rio Shimamoto
1983年生まれ、東京都出身。98年、「ヨル」で「鳩よ!」掌編小説コンクール第二期10月号当選(年間MVP受賞)。高校在学中の2001年に「シルエット」で群像新人文学賞優秀作を受賞。03年、『リトル・バイ・リトル』で野間文芸新人賞を同賞史上最年少受賞。15年、『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。著書に『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』『イノセント』『夏の裁断』『アンダスタンド・メイビー』ほか多数。
――映画では、葉山先生役を松本潤さん、泉役を有村架純さんが演じています。ほかにも泉に想いを寄せる大学生役の坂口健太郎さんなど、旬な役者さんが揃っていますね。
最初にお話を伺ったときに、なんて豪華なキャスティングだろうと。行定勲監督をはじめ、こんな素晴らしい形で決まったと聞いて、むしろ「本当に実現するのだろうか」と思ったくらいです。
――撮影も見学されたそうですね。
実際に撮影現場に伺って、有村架純さんはまだお若いのにとてもしっかりした方だなという印象がありました。ヒロインは淡々としているように見えて、これだけいろいろあっても先生を思い続けるという、実は強い女性なんですね。物語的にハードな部分も多い役柄なのですが、有村さんが演じる泉からは、恋愛の激しさや残酷さに負けない、芯の強さが感じられました。
――松本潤さんが演じている、葉山先生についてはいかがですか?
撮影中に演技している松本さんを見た瞬間、「葉山先生がそこにいる!」という驚きがありました。
葉山先生については、彼の難しい、闇の部分がうまく表現されていたなと思います。セリフが少ないからこそ、逆に観た人がいろんな解釈をできるような複雑さが、松本さんの表情から醸し出されていて。私自身も「葉山先生のことを自分ではこう描写したけれど、もしかしたら彼はまったく違うことを考えていたのかもしれない」と思った瞬間がいくつもありました。
――『ナラタージュ』は、2015年に島本さんがtwitter上で「好きな島本作品」のアンケートを取った中で、断トツの1位だったそうですね。そんなご自身の代表作が映画化されたことについて、どのように感じていらっしゃいますか?
『ナラタージュ』は私にとって大事な小説ではあるのですが、十数年経つと、作品といい意味で距離ができます。原作者としてというよりは、映画が好きな一観客として楽しむことができたので、この時期でタイミングが良かったなと思います。
――葉山先生と泉は、高校の演劇部の顧問と生徒として出会います。大人になった泉が過去を回想する形でストーリーが始まりますが、タイトルの「ナラタージュ」という言葉は「ナレーション」と「モンタージュ」をかけあわせた言葉で、「人物の語りによって過去を再現する」、劇や映画の手法のことだそうですね。
書いた当時は、タイトルを「いままでの小説にないようなものにしたい」という思いが強くて、なかなか決まらなかった記憶があります。私はタイトルに困ると辞書を最初からめくっていって、使える言葉がないかと探すんです。「ナラタージュ」という言葉を見つけて、どこか引っかかる、不思議な言葉だなと思って見たら、「回想形式を指す映画用語」とあって、これだ!と。
――そもそも物語の構想として、なぜ回想形式にしようと思われたのですか。
時系列の物語にしてしまうと、切なすぎるところがあったのかもしれないですね。現在の主人公は心穏やかに暮らしているけれど、いまでも忘れられない人がいる。二度と会わないくらいの別れ方をしたということは、それくらい激しい恋だったということ。「これはそういう恋愛を描いた小説だ」と、最初に示したかったのだと思います。
読者にとっても、この話が現在と同時進行であるよりは、回想だからこそ「つらくても美しい、一生に一度の恋」として受け止めることができるのではないでしょうか。
――読者への思いやりが感じられるお話ですね。
内容はあまり優しくないですけれど(笑)。
――演劇部が舞台の本作にはまさにぴったりのタイトルですが、執筆時にも映像化を意識されたことはありましたか?
「映画化したらいいな」と思いながら書いている場面はありました。
私はもともと映画が好きで、小説も「こういう風景の中で、登場人物がこういう動きをして」と映像から落とし込んで書いていきます。なので、今回「ようやくこの場面を映像で見られた」という喜びがありました。
――映画化では、原作の世界観がかなり忠実に再現されていますね。
脚本を事前に見せていただいたのですが、小説の意を本当に丁寧に酌んでくださっているなと感じました。「ここは映像にしてほしい」という場面はほとんど入っていましたし、オリジナルの場面も「こういうこと、先生言いそう……」と私自身が思ったくらいです。
映画を作ってくださっているみなさんは大変だったと思うのですが、私はすべてお任せして、完成を楽しみに待っていました。
後編へ続く(2017年10月8日公開予定)
・「生々しくて、激しくて、それでも美しい」“性の危うさ”を描く:『ナラタージュ』島本理生インタビュー【後編】
大学2年生の春。泉のもとに高校の演劇部の顧問教師・葉山から、後輩の為に卒業公演に参加してくれないかと、誘いの電話がくる。
葉山は、高校時代、学校に馴染めずにいた泉を救ってくれた教師だった。
卒業式の日の誰にも言えない葉山との思い出を胸にしまっていた泉だったが、再会により気持ちが募っていく。
二人の想いが重なりかけたとき、泉は葉山から離婚の成立していない妻の存在を告げられる。
葉山の告白を聞き、彼を忘れようとする泉だったが、ある事件が起こる――。
10月7日(土)全国ロードショー
松本 潤 有村架純
坂口健太郎
大西礼芳 古舘佑太郎 神岡実希 駒木根隆介 金子大地/市川実日子 瀬戸康史
監督:行定勲
原作:島本理生(『ナラタージュ』角川文庫刊)
脚本:堀泉杏 音楽:めいなCo.
製作:「ナラタージュ」製作委員会/制作プロダクション:東映東京撮影所/制作協力:ザフール/企画協力:KADOKAWA
配給:東宝=アスミック・エース
映画「ナラタージュ」公式サイト
http://www.narratage.com/
©2017「ナラタージュ」製作委員会