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2014年11月より刊行されている『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集』。9月11日(月)、その最後を飾る角田光代訳『源氏物語』の刊行がスタートしました。『源氏物語』は今回発売された上巻を皮切りに、中巻・下巻の全3巻で刊行されます。
紫式部によって約1000年前に書かれ、読み継がれてきた『源氏物語』。その壮大な物語の新訳に挑むにあたり、角田さんは「読みやすさ」と、当時の人と今の私たち双方の「感情をリンク」させることを目指したそう。
『源氏物語 上』に収められるのは、一帖「桐壺」から二十一帖「少女」まで。光源氏の誕生から恋の遍歴、藤壺への思慕など、数々の名場面が描かれており、小説としての面白さが堪能できます。そんな本作の魅力について、編集を担当した河出書房新社・日本文学全集編集部の東條律子さんに作品ガイドを寄せていただきました。
「わかりました。やります」――2013年8月の暑い一日、「源氏物語」の新訳の依頼のために角田さんにお会いし、その場でご快諾いただいたときの嬉しさは、今も忘れられません。
とはいえ連載をたくさん抱えていらっしゃった角田さん。実際にはそこから取り組んでいただくのは、2015年春まで待たなければならなかったのですが。
最初の第一帖「桐壺」の訳文を見せていただいたのは、2015年8月のこと。一読し、「すごい!なんて角田さんらしい訳なのだろう」と感激したことを強く覚えています。原文に忠実に訳しながらも、まるで現代の小説を読んでいるような読みやすさ。シンプルだけれど、心の襞に入り込む感情を揺さぶられる訳文……。
その後、上巻に入る訳文すべてが上がるまでに1年、また刊行までには、東京大学の国文学研究室の藤原克己氏と林悠子氏にチェックをお願いし、また角田さんにも何度か手直しをしていただき……。あのときから4年。今こうして『源氏物語 上』を刊行することができたこと、心より嬉しく思っています。
与謝野晶子訳、谷崎潤一郎訳、瀬戸内寂聴訳と今は多くの現代語訳があるなか、自分はどう訳していくか、どのように物語を立ち上げるか、角田さんはたいへん苦労したとおっしゃっています。七転八倒して考えた結果、方針として出したのが、「読みやすさ」と「感情に寄り添う」訳でした。
角田訳の良さは、なんといっても読みやすく、長編小説として楽しめる点です。これまでの現代語訳で挫折した人も、この訳なら必ず最後まで楽しんで読めるのではないかと思っています。『源氏物語 上』は光源氏の女君たちとの恋の遍歴の巻であり、よく知られる名場面の連続です。ぜひご一読ください。
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文・河出書房新社 編集第1部2課 日本文学全集編集部 東條律子