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ゲームアプリ、同人誌、アイドル、演劇、ホスト、化粧品……。私たちの身のまわりには、“浪費”の対象となりうるものが溢れています。
今回ご紹介する『浪費図鑑』は、それぞれに異なるオタク趣味を持つアラサー女性4人組「劇団雌猫」が、2016年の年末に制作した同人誌「悪友」を増補改訂して書籍化したもの。完全匿名のエッセイや2000人もの浪費女たちを対象としたアンケートなどから、「どれだけのお金を」「どんな趣味に」「どのように使っているのか」といった彼女たちの実態を明らかにします。
10秒足らずで1000円かかる握手、たった2時間だけ異次元にトリップできる劇場、札束と引き換えに手に入れるデジタルイラスト。私たちがお金で買っているものは、モノや体験以上に「幸福」なのだと思います。それぞれの投資の向こうにそれぞれの幸せがある。お金と時間の使い方を尋ねることは、自分の知らない世界を覗き見ることであり、新しい文化との出会いでもありました。
『浪費図鑑』の冒頭にあるこの文章。彼女たちにとって趣味に使うお金は、浪費ではなく“投資”であり“愛”なのです。また私たちにとって、彼女たちの幸せ(趣味)を知ることは、また新しい幸せを知るきっかけにもなるでしょう。
『浪費図鑑』の第1章「浪費女の告白」に収録されているのは、「◯◯で浪費する女」13人の匿名エッセイ。浪費対象は「あんスタ」「同人誌」「若手俳優」「地下声優」「EXO」「ロザン」「乃木坂46」「宝塚歌劇団」「東京ディズニーリゾート」「V系バンド」「ホスト」「さわってもらいたい一心」とさまざまで、13人目には「ン十年前の特撮作品で浪費する女」として、特撮オタクのOLを描いた漫画『トクサツガガガ』の著者・丹羽庭さんが登場しています。
さて、これらの“浪費女”たちはいったいどんな浪費生活を送っているのでしょうか? 一部ではありますが、それでも十分にコンテンツへの愛が感じられるエッセイの内容を見てみましょう。
それは、お金をかけて手に入れることができる絵が、とってもえっちで、ばっちりスケベだからです。
アイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!」の同人誌を制作しているという“あんスタで浪費する女”。同人誌を描く時には、ゲーム内のガチャでエッチなイラストを手に入れておくことが重要なのだそうです。
なぜならそのイラストをもとに描くことが、にわかファンでないことを証明し、作品への愛を示すことになるから。課金によって手に入れたイラストは、一種のステータスにもなるのだとか。
もちろんそれ以前に、イラストからときめきが補給されることも重要でしょう。心を満たしてくれるこの感覚に、共感する女性は多いのではないでしょうか?
私と目があった瞬間に、「先週も来てくれた人だ」という表情を浮かべてくれた時にはもう、このために生きてるな・・・とすら思った。
お渡し会やチェキ会など、ファンイベントはこんなにも多様化しているのか……と“現場”の今を知ることができるのが、「地下声優で浪費する女」。この方はこれらのイベントに参加するため、応募券が封入された円盤(CDやDVD・Blu-rayなど)に浪費しているのだそうです。
参加すればするほど自分の存在を知ってもらえて、距離が縮まるという喜び。“地下”声優であるという点もポイントですね。確かに、一度味わったら抜け出せなくなる気がします……!
私は子供を産みたいと思ったことは今までなかったんだけど、推しである乃木坂46の川村真洋ちゃんに抱いている感情は産みたい、が一番近いと思う。
女性が同性のアイドルを推す理由は何なのか。そんな疑問に答えているのが「乃木坂46で浪費する女」です。
親が子どもに対してそうするように、無償の愛を注ぎ、見守りたい。何があっても投げ出さずに見守る責任がほしい。彼女が好きなことをして幸せでいることが、自分の幸せになる……。
“乃木坂46で浪費する女”は自分が抱いている愛についてそんなふうに綴っています。“推しを産みたい系”がアイドルに対して抱いているのは、母性なんですね。
『浪費図鑑』のもう一つの見どころは、全国各地の浪費女2000人を対象にしたアンケート。「毎月の手取りは?」「趣味に使っているお金は?」「現在の貯金額は?」「ぶっちゃけクレジットカード止まったことある?」など、匿名エッセイに負けず劣らずかなりリアルな内容となっています。
中でも「趣味に投じた最高金額と、その対象は?」という質問では、個性豊かすぎる答えが勢ぞろい! まさに“オタクの数だけ浪費がある”という感じです。
例えば……
・同人誌100冊に7万円
・約半年でソシャゲガチャに150万円、最高記録は一晩で30万円
・聖地巡りで行ったアイルランド、50万円弱。
・好きなアイドルの舞台挨拶最前全通、東京・名古屋・神奈川・福岡・広島・大阪の6都市24回分を巡って150万円
『浪費図鑑』にはこのほかにも、アイドル好きが高じて振付師になった竹中夏海さん(PASSPO☆やアップアップガールズ(仮)、夢みるアドレセンスなどの振り付けを担当)のスペシャルインタビュー、阿佐ヶ谷ロフトAで行なわれた「High&浪費ナイト」のイベントレポート、「劇団雌猫」の4人による座談会などが収録されています。
同志なら共感必至、未経験の方なら思わず「すげえ……」と声が漏れるはず。意外と聞けない・知らないオタク女子たちの真実が詰まった一冊を、ぜひ読んでみてください!