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アメリカでもっとも権威のある絵本賞・コールデコット賞を3度も獲得した稀有な絵本作家・マーシャ・ブラウンが、今年4月に96歳で亡くなりました。合掌。
日本での彼女の代表作は、累計200万部以上のベストセラー『三びきのやぎのがらがらどん』です。
彼女の作風の大きな特徴は「作品によってスタイルを変える」というものです。そのことについて、『ひとまねこざる』(1954年、H.A.レイ作/岩波書店)など多数の絵本翻訳がある故・光吉夏弥先生は、下記のように語られています。
コールデコット賞を三度も受けたマーシア・ブラウンは、なによりもその多芸さによって知られている。というよりも、その多芸さのゆえに、再度の受賞に輝いたわけだったが、彼女は同じ手法を二度、三度と繰り返すことを好まない。
――『絵本図書館』(1990年、ブック・グローブ社)より引用
同じ手法を繰り返すことを好まない彼女の、一番最初の手法はどのようなものだったのか……?それを見ることができるデビュー作が、今年6月に復刊されています。
本作のあとがきに、彼女はこう書いています。
1945年、私は当時、ニューヨークのサリバン・ストリートにあるアパートに住んでいました。(中略)私は、このサリバン・ストリートのようすを絵に描いてみました。当時、路上では、子どもたちが遊び、通りのあちこちに第二次世界大戦の帰還兵を祝う飾りがゆれていました。
――「この作品について」より引用
この作品がもつ空気の礎は、ここにあります。そしてこのあとがきが、マーシャ・ブラウンの事実上の「最後の仕事」となりました。
そのエピソードについて、本作の翻訳者・小宮 由さんのブログに記事があります。
コールデコット賞を3度も受賞した作家のデビュー作であり、1945年のアメリカの景色を描き、そのあとがきが最後の仕事となった本作。さまざまな捉え方ができる、懐の深い一冊です。