'); }else{ document.write(''); } //-->
――いわいさんはメディアアーティストとして、デジタルなどの新しい技術を活用した美術の分野でも活躍されています。絵本はアナログな媒体ではありますが、メディアアーティストとして志向されている“双方向”な点は、作品に共通されていると感じました。
僕の子ども時代は今ほどモノがあふれていなくて、特に僕は⺟から、「おもちゃは自分で作りなさい」と道具や材料を渡されたことがきっかけで、⾃分で⼯夫してものづくりをするのが好きになりました。⼤学時代からは、コンピュータがどんどん進化しはじめて興味を持ち、メディアアーティストという肩書きでデジタルを取り入れたアート表現に取り組んできました。
しかし元々アナログな時代に生まれたこともあって、紙や本には特別愛着があり、特に絵本は小さい頃から大好きでした。特に30代後半に⼦どもを持ったことが⼤きいのですが、デジタルとは違う絵本の良さを見直すようになりました。絵本にはいろんな大きさや形、しかけ、コンピュータには真似できない紙の感触があり、電源を気にしなくても楽しめる。そして僕が⼦どものころ好きだった作品が、いまでも本屋さんに平積みで並んでいる。移ろい消えていくデジタルの世界と比べて、「絵本ってすごいな」と思いました。
そんな中、偕成社からお話をいただいて、夢だった絵本作りに挑戦することになりました。最初は何を作ればいいのかわからなかったのですが、「⼆度と話がこないかもしれないから全力投球でやろう」「⼦どものころに好きだったものをありったけ詰め込もう」と取り組んでできたのが、『100かいだてのいえ』です。そうしたら、予想以上に⼦どもたちが受け⼊れてくれて、今でも信じられない気持ちです。
それまでメディアアートの世界では、予算や機械の制約を気にしてばかりでした。それが絵本なら、⾃分の鉛筆1本で好きな世界をとことん描ける。僕⾃⾝が解放されて、見たことのない世界を楽しんで創造できたことが、子どもたちに支持された理由かな、と思います。読者の⽅にも、僕の空想の世界を⼀緒に楽しんでいただければうれしいですね。
▲第1作の主⼈公トチくん、第2作の主⼈公クウちゃんとともに。⼿にしているのは、第1作に登場するクモの王⼦様のぬいぐるみ。いわいさんの型紙を元に、ご近所のおばあちゃんたちに縫ってもらったそう。
いわいとしお(岩井俊雄)
1962年愛知県生まれ。絵本作家・メディアアーティスト。子どもの頃に母親から「もうおもちゃは買いません」と言われ、ものづくりに目覚める。筑波大学大学院修士課程芸術研究科修了。テレビ番組やゲームソフト制作、電子楽器開発など多岐に渡る活動を展開し、現代日本美術展大賞、文化庁メディア芸術祭大賞、芸術選奨文部科学大臣賞ほか数多く受賞。娘との手作りおもちゃをきっかけに、絵本作家にシフトし現在に至る。主な絵本に「100かいだてのいえ」シリーズ、「いわいさんちのどっちが?絵本」シリーズ(紀伊國屋書店)、『ゆびさきちゃんのだいぼうけん』(白泉社)、『ぼく、ドジオ。』(小学館)など。「100かいだてのいえ」シリーズは、台湾、中国、韓国でも大人気で、今年韓国では、ソウルを中心に巡回展が行われた。