'); }else{ document.write(''); } //-->
――ある冬の日、食べものを探していたツピくんは、一粒のヒマワリの種を見つけます。それだけではお腹がいっぱいにならないと、ツピくんは種を増やすために植える場所を探しに出かけます。主人公に招待状が届いて出かけていく1、2作目や、主人公の人形が海の中に落ちてしまう3作目に比べると、ツピくんはより積極的な性格ですね。
確かにそうかもしれませんね。いまの⼈間の生活はどちらかというと、仕事や趣味がメインになっているけれど、テレビの動物番組を⾒ていると、動物は⾷べることや、⼦孫を増やすための⾏動で生活すべてが回っていて、「本来はこれだよな」としみじみ考えさせられます。
ツピくんも「お腹いっぱい食べたい!」という本能で行動しますが、さらに、種をどうやったら増やせるか、自分で考えて行動する知恵をもった主人公として描きました。もともと⼩⿃たちは、虫を捕ったり、そこにある木の実や種を食べて生きている、いわば“狩猟採集⺠”。⼈間も、かつては⽊の実や⾙を拾って⾷べていたのが、農耕民族に進化したわけですが、この物語でも、そうした進化の過程を、知恵のあるツピくんに重ねています。
あと、この物語では、最初は普通に積もっているだけだった、ただの雪が、ツピくんが困っていると急に人格をもったキャラクターとして見えてきて、仲良く会話できるようになり、最後は助けてくれるような描き方をしました。
我々の周りにも、空気はあるし⾵も吹いているけれど、普段はそのことに関してあまり⾃覚的ではないですよね。でも人は、昔からそうした自然現象をうまく利用して家を心地よくしたり農作物をつくったりして暮らしてきたわけです
絵本の中で、⾃然現象がキャラクターとしてしゃべったり、遊んだり、助けてくれるのはある種荒唐無稽な想像ですが、人が自然現象と仲良くすることの意味を、この物語を通じて⼦どもたちにも感じてほしいなと思っています。
▲見渡すかぎりの雪景色の中、困っているツピくんの前に雪の結晶が現れて……。キャラクターに語りかけられることで、ツピくんとともに、読者もあっという間に物語の世界に引き込まれていきます。
後編へ続く(2017年8月23日公開予定)
・『100かいだてのいえ』は、連想ゲームでできている!?【絵本作家・いわいとしおインタビュー(後編)】
いわいとしお(岩井俊雄)
1962年愛知県生まれ。絵本作家・メディアアーティスト。子どもの頃に母親から「もうおもちゃは買いません」と言われ、ものづくりに目覚める。筑波大学大学院修士課程芸術研究科修了。テレビ番組やゲームソフト制作、電子楽器開発など多岐に渡る活動を展開し、現代日本美術展大賞、文化庁メディア芸術祭大賞、芸術選奨文部科学大臣賞ほか数多く受賞。娘との手作りおもちゃをきっかけに、絵本作家にシフトし現在に至る。主な絵本に「100かいだてのいえ」シリーズ、「いわいさんちのどっちが?絵本」シリーズ(紀伊國屋書店)、『ゆびさきちゃんのだいぼうけん』(白泉社)、『ぼく、ドジオ。』(小学館)など。「100かいだてのいえ」シリーズは、台湾、中国、韓国でも大人気で、今年韓国では、ソウルを中心に巡回展が行われた。