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――本多さんの作品では、登場人物たちのユーモアのある、洒落た会話も魅力です。本作でもテンポよく会話に引き込まれていくうちに、それぞれの人生が肯定されるような、温かな読後感がありました。
基本的に、どう書いたら読者に楽しんでもらえるかということは考えますし、本質的な物事について会話を交わすことって、実生活ではなかなかないですよね。自分の本当の心情を語る時の言葉は限られていると思うんです。
でも、小説においてはそういうものがあってもいい。それを会話文として自然に成立させるためにはどうすればいいかと考えると、そこにはある種の照れがあるべきだと思うんです。ちょっと気の利いたようなやりとりというのは、主人公たちのある種の照れだと私は認識しています。
物語というのは、と改めて語ると固い感じもしますけれど(笑)、そこにいる登場人物を含めて、何かを肯定するために語られるべきだと思っています。ですので、登場人物にどこまで寄り添える物語になるだろうかと、書きながら考えているところはありますね。
――ご自身は、最近どのような物語をお読みになっているのですか?
ジャンルにかかわらず読みますが、最近は恥ずかしながら、新しい本を読まなくなってしまっています。古典的なハードボイルドなど、学生時代に読んだ本を読み返して、「こういう本だったっけ」というような楽しみ方をすることが多いですね。
――確かに、作品の主人公たちにもハードボイルドな気質は感じられますね。
ただ、自分の作風を自分なりに分析してみると、一番影響を受けたのは赤川次郎さんじゃないかと思うんです。いわゆる青春ミステリーといわれる一連のものですね。10代前半に赤川次郎さんの作品を読んだ読書体験が、自分の創作の底流にあるんじゃないかなと思います。
――意外な気もしましたが、そう言われてみればそうかも……という気がしてきました。
いままで一番私がこだわって読んだ作家は、(伝奇SF小説などで活躍した)半村良さんです。作風はもっと遠くなると思うのですが(笑)。
――最後に、『dele ディーリー』はシリーズとして続けていかれるとのことでしたが、今後のご予定について教えてください。
秋から「小説 野性時代」で連載を再開する予定です。祐太郎、圭司がそれぞれの問題を解決するまで、ひとつの物語として続けていけたらいいなと思っています。
(2017.6.23)
本多孝好 Takayoshi Honda
1971年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。1994年「眠りの海」で小説推理新人賞を受賞。1999年、同作を収録した『MISSING』で単行本デビュー。「このミステリーがすごい!2000年版」でトップ10入りするなど高い評価を得て、一躍脚光を浴びる。以後、恋愛、青春小説などジャンルを超えた新しいエンターテインメント作品を発表、常に読者の圧倒的な支持を得ている。著書に『FINE DAYS』『ストレイヤーズ・クロニクル』『at Home』『君の隣に』『Good old boys』などがある。