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――『明治・妖モダン』は、牛鍋屋「百木屋」に集う仲間たちが交代で主役をつとめる連作短編の形をとっています。〈文明開化の申し子とも言える食い物屋〉と書かれていますが、牛鍋屋は大いに明治を感じさせてくれるシチュエーションですね。
畠中:古くからあるという牛鍋屋さんに、実際に食べに行ってきました。分厚い肉のみそ味の牛鍋、おいしかったですよ。確かに牛鍋であって、すき焼きとはかなり違ったものです。
――江戸時代と明治時代、舞台を変えると書くときの感覚も違いますか。
畠中:『アイスクリン強し』で初めて明治を書いたときは、やっぱり戸惑いがありました。史料はたくさん読みましたが、史料に引きずられるようなところもあったと思います。その意味では、明治を書いた3冊目となる『明治・妖モダン』は、やっと明治が自分に馴染んできた、身近になってきた作品かな。あの辺に蒸気船、この辺には人力車が通っているというような感覚が、普通のものとしてつかめてきたところがあります。
ただ、明治も大正に近くなってくると様子が変わってくるでしょうし、戦争もあります。また、これより前の年代には、それこそ江戸を引きずっている。モダンな明治を書こうとすると、やはり難しいですね。
――『アイスクリン強し』で描かれていたあるものが、今作にさりげなく登場していました。同時期の物語なんですね。
畠中:某洋菓子店は煉瓦街からも近いですので、ついついあそこの菓子を持たせてしまいました(笑)。どうぞ楽しんで読んでください。
(2013.10.8)
畠中恵 Megumi Hatakenaka
高知県生まれ、名古屋育ち。名古屋造形芸術短期大学ビジュアルデザインコース・イラスト科卒。漫画家アシスタント、書店員を経て漫画家デビュー。その後、都筑道夫の小説講座に通って作家を目指し、2001年『しゃばけ』で第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞してデビュー。2016年「しゃばけ」シリーズで第1回吉川英治文庫賞を受賞。著書に「まんまこと」シリーズ、「若様組」シリーズ、『つくもがみ貸します』『アコギなのかリッパなのか』『ちょちょら』『けさくしゃ』『うずら大名』『明治・金色キタン』『まことの華姫』ほか多数。エッセイ集に『つくも神さん、お茶ください』がある。
(「新刊展望」2013年11月号より)