• fluct

  • ヨシタケシンスケの妄想炸裂!「こんな本はあるかしら?」にあの手この手で応えるキュートな一冊『あるかしら書店』

    2017年06月06日
    楽しむ
    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当 猪越
    Pocket

    「正解がない」ことを面白がる

    ――「本屋さんってどういうところ?」のように、書店や書店員に関するお話もありますが、ヨシタケさんにとって「本屋さん」とはどういうところですか?

    僕は40歳のときに『りんごかもしれない』で絵本作家デビューしましたが、本自体でいうとそれよりも前、30歳のときに『しかもフタが無い』というイラスト集でデビューしたんです。でもそれが全然売れなくて、「誰が読んでくれたのだろう」とずっと思っていました。

    それから10年後に『りんごかもしれない』が発売されたわけですが、書店さんがそれぞれすごくいい場所に置いてくださって、(出版元の)ブロンズ新社の営業の方は「賞をとったわけでもテレビで紹介されたわけでもない、絵本作家としては新人の本を、こんなによく扱ってくれるわけがない」と思ったそうです。そこで書店さんに理由を聞いたところ、『しかもフタが無い』を好んで覚えていてくださった書店員さんが結構な割合でいらして、「あの人が絵本を描いたなら」と後押ししてくださった。それがすごく嬉しかったし、まさに「書店員さんに救っていただいた」という思いがあります。

    僕は作る側として本に関わる仕事をしていますが、本を大事に扱って、試行錯誤しながら本に関わり続ける書店員さんの生き方に共感を覚えます。僕も本が大好きで、本が自分にとって特別なものだったからこそ、連載をやっていて楽しかったですし、いろんなアイデアが出せたのだと思います。

    ―― イラスト集のお話が出ましたが、今回は絵本のようであり、イラストが主役のページもありと、これまでとはまたテイストの違う一冊ですね。

    漫画みたいでもあるし、イラストエッセイのようでもあるし、我ながらジャンル分けしにくい本だなと思っています。最初に出したイラスト集もそうで、書店さんにとっては、どのコーナーに置いていいのかわからない本だったのではないでしょうか。僕も「イラスト集を出させてもらったよ」と知り合いに言ったのですが、「どの売場に置いてあるの?」と聞かれても答えられなくて(笑)。書店さんがそれぞれ判断して、「強いていうならここかな」という売場に置いてくだっていたのではないかと思います。

    初めて絵本を出して嬉しかったのが、「児童書」というジャンルがついたことでした。どこのジャンルにもうまく入れない身としては、「児童書売場に売っています」と言えることは、実はすごいことなんです。

    ―― とはいえ『あるかしら書店』は、ヨシタケテイスト満載の一冊であることは間違いないですね。

    僕のことを絵本で知った方にも「こういう感じのものも面白いね」と思っていただけるのが、一番嬉しいコースです。そういう意味では、これまでとはちょっと違うテイストをみなさんに喜んでいただけるかどうか、ドキドキしています。

    「asta」は一般文芸をメインに扱っている媒体なので、絵本にはできないテーマや、大人にしかわからない気持ちも入れることができました。書籍化するときに、出版社に「子どもにもアピールできるようにしましょう」と言われたのですが、正直「大丈夫かな」と(笑)。

    でも改めて読んでみて、乱暴な言い方ですが「まあ、わからなくてもいいかな」と思っています。僕も子どもの頃、「意味はわからないけれど読んでいて面白い本」はあったし、わからない話があったとしても、「そのうちわかるのではないか」「わかりたいな」と思ってもらえれば、それもひとつの収穫なのではないでしょうか。

    ――『あるかしら書店』は大人の立ち位置にありながら、子どもも一緒に楽しめる本という感じがします。

    僕はもともとイラストレーターとして大人向けのイラストを描く仕事が長かったので、絵本を描いていても、言われて一番嬉しいのは「この本、大人が読んでも面白いですね」という言葉です。子どもが面白がるポイントと、大人にしかわからない面白さの両方が1冊に入っていたほうが、お得ですよね。

    自分が作るときにも、そういう本にしたいという目標があります。この本も結果的に、「子どもも面白がってくれる本」になっていると嬉しいですね。

    ―― ラストは、本作りに関わる人にとってのまさに「永遠の課題」が込められていますね。おじさんの表情も圧巻です。

    「どんな本でも揃う書店ではありますが……」というオチにしたかったんです。「本は、永遠に完成しないもの」という一つの答えでもあります。どんなにがんばってもすべてを網羅する本はできないし、だからこそ本は面白い。「正解がない」ことを面白がることも、僕が本の中で伝えていきたいと思っていることです。

    (2017.5.11)


    ヨシタケシンスケ
    絵本作家・イラストレーター。1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース終了。日常のさりげないひとコマに注目したイラスト集『しかもフタがない』や『りんごかもしれない』などの絵本ほか著作多数。MOE絵本屋さん大賞1位、ボローニャ・ラガッツイ特別賞など受賞歴も多数。2児の父。

    りんごかもしれない
    著者:ヨシタケシンスケ
    発売日:2013年04月
    発行所:ブロンズ新社
    価格:1,540円(税込)
    ISBNコード:9784893095626
    しかもフタが無い
    著者:ヨシタケシンスケ
    発売日:2003年09月
    発行所:パルコ出版
    価格:1,320円(税込)
    ISBNコード:9784891946630
    なつみはなんにでもなれる
    著者:ヨシタケシンスケ
    発売日:2016年12月
    発行所:PHP研究所
    価格:1,100円(税込)
    ISBNコード:9784569786063

    common_banner_tenbo




    1 2
    タグ
    Pocket

  • GoogleAd:SP記事下

  • GoogleAd:007

  • ページの先頭に戻る