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〈新学期〉いじめにあわない・させないために、親子で読みたいおすすめ本7選

今年4月に小学校新1年生となった子どもは、100万人以上。子どもの成長は親にとって喜ばしいことですが、「周囲の子どもたちと仲良く学校生活を送れるだろうか」と心配している方も多いのではないでしょうか。

わが子がいじめられることも怖いですが、絶対にしてほしくないのが「いじめる側になること」。

そこで今回は「いじめについて考える」をテーマに、入学前~小学校低・中学年向けの本を7冊ご紹介します。

 

【未就学児向け】

いじめの入り口「なかまはずれ」を感じる

たったさんびきだけのいけ
著者:宇治勲
発売日:2007年04月
発行所:PHP研究所
価格:1,320円(税込)
ISBNコード:9784569686806

同じ池に住む、亀と魚とおたまじゃくし。「亀は自由にひなたぼっこができていいなあ」と羨ましく思ったおたまじゃくしは、魚に「亀を仲間外れにしよう」と提案します。しかし時が経ち、おたまじゃくしには足が生え……。

たった3匹だけの池。このあと夏の日照りで池は干上がることになるのですが、さて、3匹はどうするのでしょうか?

「いじめ」の前に、子どもは「なかまはずれ」という言葉を覚えます。登場キャラクターが少なく親しみやすい絵で、幼い子どもにも「いじめ」がイメージしやすく、また人のために行動する心も育みます。

 

【小学1年生向け】 

「後悔」を知る

ひとりひとりのやさしさ
著者:ジャクリーン・ウッドソン E.B.ルイス さくまゆみこ
発売日:2013年07月
発行所:BL出版
価格:1,650円(税込)
ISBNコード:9784776406143

転校生のマヤは、服が変。お弁当が変。だからマヤが笑いかけてきても、こちらからは笑い返さない。無視するし、意地悪もする。皆もそうしているから……。

美しい色彩の絵本ですが、甘いハッピーエンドを求めていると裏切られます。償いの機会はいつでもあるという訳ではない。子どもに「取り返しがつかないことがある」と悟らせる、ほろ苦い一冊です。



人間の弱さ・集団心理の怖さに向き合う

わたしのせいじゃない 大型版
著者:レイフ・クリスチャンソン にもんじまさあき
発売日:2017年02月
発行所:岩崎書店
価格:1,980円(税込)
ISBNコード:9784265851096

男の子が泣いています。

「おおぜいでやったのよ/ひとりではとめられなかった/わたしのせいじゃないわ」
「みんなたたいた/ぼくもたたいた/でもほんのすこしだけだよ」
「自分のせいじゃない/その子がかわってるんだ/ほかの子はふつうなのに」

ほかの子どもたちは自分の知っていることを話しながら、最後には必ず「わたしのせいじゃない」といいます。

本当にそうでしょうか?

おそらく「どう思う?」と子どもに聞いても、なかなか言葉が出てこないと思います。でもきっとその子の中には、「責任」という概念の芽が生まれていることでしょう。

考え込んでしまったり、あまりに暗い表情をするようになったりした場合は、途中で読むのをとめてしまってもいいでしょう。お子さんの様子を見ながら、一緒に読み進めていきたい絵本です。本は大きくてずっしり重いですが、大切なものをお子さんは受け取ることができるはずです。

 

友人関係のスキルを高める

友だち関係 自分と仲良く
著者:藤美沖
発売日:2015年07月
発行所:旺文社
価格:935円(税込)
ISBNコード:9784010110812

絵本ではありませんが、オールカラーで漫画やイラストがついていて読みやすいのが「学校では教えてくれない大切なこと」シリーズ。全15巻のうち3巻を友人関係にあてており、第2巻「自分と仲良く」、第6巻「気持ちの伝え方」、第11巻「考え方のちがい」と、いずれも実践的な内容となっています。

友だちはどんなことをしたら悲しむのか。自分の中に生まれるもやもやした気持ちは何か。しっかりしたテーマながら、お説教くさくなく、楽しく笑いながら読めるところが魅力的です。

なおこのシリーズには「友だち関係」のほかに「整理整頓」や「防犯」などのテーマがあり、自分で読めるようになると子どもが自ら学習するようになるのもいいところ。累計70万冊の人気シリーズです。

 

【小学校2・3年生~】

同級生・家族・本人などさまざまな角度から「いじめ」を考える

わたしのいもうと
著者:松谷みよ子 味戸ケイコ
発売日:1987年12月
発行所:偕成社
価格:1,320円(税込)
ISBNコード:9784034380505

美しい筆づかいの絵本ですが、描かれる物語は壮絶です。

転校先でいじめに遭った小学4年生の妹。お姉さんのまなざしは、妹の苦しみ、傷、お母さんの涙を日々とらえます。そしてある日、妹は……。

「わたしを いじめたひとたちは/もう わたしを/わすれてしまった でしょうね」妹からのこのメッセージは、直接的に加害者だったことのない人もはっとさせられるはずです。

かなりヘヴィーな内容なので、小学校に慣れた小学校2~3年生くらい、もしくは“妹”と同じ4年生くらいの時に読むのがおすすめです。

 

負の連鎖を断ち切るのは“勇気”

しらんぷり
著者:梅田俊作 梅田佳子
発売日:1997年06月
発行所:ポプラ社
価格:1,650円(税込)
ISBNコード:9784591054253

「ドンチャンが また いじめにあっている。ヤラガセたち4人組は、ドンチャンの画用紙の上に、手伝ってやるなんていいながら、えのぐを ぬりたくっている」
「ぼくとセイヤとヨッチンは、絵を描くのに一生懸命……なのだ、というふりを、一生懸命にしているだけ」

心の中でどれだけ「やめろ!」と思っていても、いじめを止めさせる勇気が持てない主人公。どんどんエスカレートしていくいじめっ子たちの行動は、大人も鳥肌が立つほどリアルです。

そして、知らんぷりをしたがるのは、子どもだけではありません。特に自分の子がいじめをしていたと知った親たちが、保護者会で「そそのかされていただけ」「こそこそ転校して」といじめられっ子をバッシングするシーンは、あくまで人のせいにしたくなる気持ちや「うちの子が巻き込まれなくてよかった」と思う気持ちがあることを気づかせます。

200ページ以上ある長編作品。読み聞かせの目安は、30分くらいです。さて、物語の最後に主人公が選んだ行動とは?

 

いじめに遭ってしまったら……

いきのびる魔法
著者:西原理恵子
発売日:2013年01月
発行所:小学館
価格:1,100円(税込)
ISBNコード:9784091791801

子どもにとっての“世界”は「家」と「学校」だけで構成されることがほとんど。そのため、学校でうまくいかなくなった時に「逃げ場がなくなってしまった」と思い詰めてしまう子どもは多いといいます。

そんな中で著者・西原理恵子さんが描こうとしているのは、「逃げていい」「(中学校を卒業する)16歳まで生き延びろ」ということ。

「死にたくなるほど追い詰められるくらいなら、学校なんて行かなくていい」。このことは、親である私たちも心に持っておくべき大切なことだと思います。

***

子どもはあっという間に大きくなってしまう、とよく言われます。きっとそれは、体も心も同じこと。

筆者も子どもをもつ親ですが、一度読んで終わりではなく、少し経ったらまた読み直して、加害者にも、被害者にも、傍観者にもならない“やさしくて強い心”を親子で育てていけたらなと思っています。