• fluct

  • 「服を10年買わない」チャレンジを成功させた、絵本作家・どいかやさんの仕事場訪問

    2017年03月28日
    楽しむ
    日販 ほんのひきだし編集部「新刊展望」担当 猪越
    Pocket

    命に配慮したものづくり

    ――「服を10年買わない」と決めるのはなかなか覚悟がいることだと思うのですが、「思いつき」だったそうですね。

    大みそかに片づけをしていて、服の山を前に途方に暮れて、「何やってるんだろう、私」と思ったんです。ちょうど年末だったので、「来年から“服を10年買わない”にチャレンジしてみよう」とワクワクした覚えがあります。続けているうちに、服の作られる過程の悲惨さなどを知ったことも後押しになりました。

    ――「服がどんなふうにつくられているか」という章では、先進国で大量生産・廃棄される服のために、発展途上国の人や自然が犠牲になっていることに言及されています。

    私も「絵本」という「もの」を作っているので、もともと「ものづくり」に関わる環境問題に関心がありました。

    どんなものでも、それがどういうところから来て、どのように作られ、どこに行くのか。一度気がつくと、それぞれに背景のあることがわかります。

    いまはファストファッションなど、驚くほど安い値段で手に入るものが、世の中にかなり増えましたよね。でも、それを続けていれば、働く環境にも自然にも無理がきます。ものを作る現場を基本にすれば、「そんなに(安く、大量に)は作れないね」「じゃあ、いまあるものを大事にしよう」ということになってくるのではないでしょうか。

    ――ご自身の絵本に使用する紙も、環境負担の少ないものへの変更を始めていらっしゃいますね。

    ありがたいことに常に重版があるものに関しては、安定的に入手できる紙を使わざるをえないこともあります。その代わりに売上の一部を環境活動に寄付したりもするのですが、何年か前から新刊を出すときには、環境配慮紙を使うことを出版社にお願いしています。

    費用や調達の面で難しい場合もありますが、「絵本を作りたい」というのは私の欲なので、少しでも環境に負担をかけない、納得のいく形で絵本を作りたいと思っています。

    ――私も「服を捨てられないなら買うのをやめよう」と思ったことがあるのですが、あっという間にうやむやになった経験があります(笑)。「10年」という期間を設定されたことも、チャレンジ成功の重要なポイントだったのではないでしょうか。

    美大に通っていたころに絵本の授業が一つだけあって、福音館書店の松居直さんが年に1回、授業をしに来てくださったんです。その中で、「何をするにも10年続けてごらん」と言われたことがあって。どこかにその言葉が残っていて、「10年続けてみると、何かが見えてくるかもしれないな」と思ったのかもしれませんね。

    確かに10年続けることで、「買わない」ことが定着しました。もちろんこの本は、無理に「買わない」ことを勧めるものではないですし、必要なものは買えばいいと思っています。

    ――本書の冒頭にも、チャレンジのルールとして「無理はしない」ということを掲げていらっしゃいますね。

    私にとって、10年間のチャレンジは楽しかったです。負けず嫌いなこともあって、買ってしまえば簡単なんだけれど、持っている中でなんとかしようと工夫することがおもしろかったし、達成感も得られました。

    ――この本からも、無理せず生活を楽しみながらチャレンジを続けられた様子が伝わってきます。「終わりに」の章では、「買わない」ではなく「何を買うか」と記されています。自分自身の生活を振り返るきっかけにもなりました。

    私も弱いので、いまでもつい安易にものを買ってしまうことがあります。「我慢しなくちゃ」「もったいない」という理由だと何かと言い訳をしてしまうけれど、誰かが苦しんでいると思うとやめられたりします。

    もちろん売り手それぞれの事情もありますが、環境や動物、人に配慮している作り手を応援することによって、そういうものづくりを支持する人が増えていけばいいなと思います。

    私のチャレンジも小さなことではありますが、一人一人が意識したり、声を上げることで世の中が変わっていくかもしれない。編集者から「本にしませんか」と言われるまで考えてもいなかったのですが、本にすることで、読んでくださった方に何か一つでも感じてもらえることがあればうれしいですね。

     

    色鉛筆を使う画風は、リトグラフへのあこがれから

    高台にある家の角部屋がアトリエ。広く取られた窓から周囲の木立が見渡せる、開放感たっぷりの居心地のいい部屋です。

    どいかやさんといえば、色鉛筆や鉛筆を用いた独特のタッチが魅力。

    仕事机の上には、色とりどりの色鉛筆やマーカーが置かれています。鉛筆立ての中には、色をぼかすための綿棒や、和紙の糸を引っ張り出すためのピンセットといった道具も入っています。

    「ラフはコピーの裏紙に描いています。絵の具はあまり使わないので、画材はすっきりしているほうだと思います。なので、猫が乗ってきても大丈夫なんです(笑)」

    「古い、特に欧米の絵本が大好き」というどいさん。なかでもリトグラフ(石版印刷)で刷られた絵本をコレクションしているそう。

    「学生の時に、性格的に版画は自分に合っていないと気づいたのですが、鉛筆や色鉛筆のタッチがリトグラフっぽいのではないかと思って」使い始めたことが現在の絵本づくりにつながっています。

    上の写真はコレクションしている『ねこのオーランドー』シリーズ他、著者キャスリーン・ヘイルの作品と、フェードル・ロジャンコフスキーのイラストの絵本。出版当時の原書で、ハッとするような色遣いや発色の良さなど、リトグラフならではの味わいがあります。

    「リアルで怖いような絵でもありますが、本当に素敵。服にかかわらずものはあまり増やしたくないのですが、このシリーズは集めていきたいなと思っています」

    (2017.3.10)


    どいかや Kaya Doi
    絵本作家。1969年東京生まれ。小学校1年生まで東京都品川区(6畳・4畳半の都営アパートで両親、祖父母、姉の一家6人)で育つ。この頃、サンリオキャラクターをまねて描いた絵を担任の先生にほめてもらい、絵が好きになる。その後、姉のぜんそくのために東京を離れ茨城県取手市に一家で移住。この時に念願の犬を飼ってもらうことに。東京造形大学デザイン学科卒業後、絵本作家デビュー。大好きな動物が登場する絵本を数多く出版。現在は猫6匹と夫と、千葉県のちょっとした山の中で暮らしている。

    チリとチリリ
    著者:どいかや
    発売日:2003年05月
    発行所:アリス館
    価格:1,296円(税込)
    ISBNコード:9784752002444
    チップとチョコのおでかけ
    著者:どいかや
    発売日:1996年04月
    発行所:文渓堂
    価格:1,296円(税込)
    ISBNコード:9784894231177
    ちっぽけ村に、ねこ10ぴきと。
    著者:どいかや
    発売日:2011年11月
    発行所:白泉社
    価格:1,404円(税込)
    ISBNコード:9784592732679
    ひまなこなべ
    著者:萱野茂 どいかや
    発売日:2016年08月
    発行所:あすなろ書房
    価格:1,512円(税込)
    ISBNコード:9784751528198

    common_banner_tenbo

    1 2
    タグ
    Pocket

  • GoogleAd:SP記事下

  • GoogleAd:007

  • ページの先頭に戻る