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代表作『チリとチリリ』などで知られる、絵本作家のどいかやさん。
自然や動物たちの登場する絵本で、子どもから大人まで多くの読者の心を掴んでいるどいさんですが、実はご自身も、千葉の緑豊かな山間で6匹の猫とともにご夫婦で暮らしています。
そんなどいさんは、10年前の大みそか、ふと自分が「着きれないほど服を持っているのに、まだ服を買い続けている」ことに気づいたのだそうです。
「そうだ! 10年服を買わないでみよう」
それから10年、そのチャレンジをまとめたイラストエッセイ『服を10年買わないって決めてみました』が発売されました。
どいさんが「服を10年買わないチャレンジ」で得たものとは? また自然や生き物を愛する暮らしぶりについて、アトリエに伺い、お話を聞きました。
――たくさんの緑に囲まれた、ログハウス風の素敵なお宅ですね。こちらにお住まいになられてどのくらいになるのですか?
16年になります。
――『服を10年買わないって決めてみました』を読むと、地域の方ととても良い関係を築いていらっしゃることが感じられました。
スポーツクラブや自治会、近隣のさまざまなジャンルの創作家など、いろいろな仲間との交流があります。
この場所に転居してきたのは、「自然が豊かなところで暮らしたい」と思ったことが一番の理由ですが、田舎に住むのなら、より深く地元の人たちと付き合っていきたいと思ったんです。何でも揃う街中の住宅地とは違って、ここでは住人同士が助け合わなくては生活できません。自治会の活動など大変なこともありますが、自分たちのために必要なことですし、自然に周囲の人たちと仲間になれたのが良かったですね。
「ご近所と助け合うこと」の一つに薪割があります。どいさんのお宅にも薪ストーブがあって、室内は体の芯から温まる、心地よい暖かさ。しかし薪の準備は体力もいるため、近所の方々で年配の方の分も薪を割ったりと、助け合っているのだそう。
どいさんのお宅の広々としたウッドデッキにも、たくさんの薪が積まれています。
――「服を10年買わないチャレンジ」の中でも、ご近所さんとの手芸クラブの存在が役立っているようですね。ほかにも趣味の仲間がたくさんいらっしゃいそうです。
町内の漆作家さんが手芸クラブを始めてくれて、週に1度、自分のやりたい手芸を持ち寄ってやっています。近所の人も、自分で洋服を作ったりリフォームの話をしたりするので、そのつながりの中でも情報をもらっています。
ほかにも、自分でも思いがけず運動にはまってスポーツクラブに通ったり、ウクレレを習ったり。パンの職人さんが週に1度、ご近所用にパンを焼いてくれるので、みんなで買いに行って、その方のお宅で食べながらおしゃべりすることもあります。
――とてもお忙しそうですが、お仕事の時間はどのように確保されているのですか?
あまり決めていなくて、空いた時間にやっています。月曜日はスポーツクラブ、火曜日はウクレレと1週間のスケジュールが決まっているので、予定がない日や半日を使って仕事をする感じです。もちろん仕事がすごく忙しくなったら、そういうクラブ活動はお休みしますけれど(笑)。
趣味の合間にできるくらい、ゆったりした気持ちでお仕事ができるといいなというのは、以前から考えていたことなんです。
――絵本を作るときには、まずお話を考えるところから始まるのですか?
絵本のテーマやストーリーは常に頭の中にあって、いつも自然と考えています。空いた時間にするのは、どちらかというと絵を描くことですね。
私の場合は、生活の中で感じたことを誰かに話す延長で絵本にしています。絵を描くのは、自分の思ったことを表現するための最後の作業になります。
「このお話はこの編集者とやりたいな」とイメージが固まったときに、まずはその編集者に見せるために、時間を作ってラフにするところから始まりますね。
――『服を10年買わないって決めてみました』は、ご自身の体験をまとめられたイラストエッセイですね。
自分の考えたことを本にするという意味では絵本と同じなのですが、いつもは1枚の絵で表現していた部分も、文章やカットを描いたり、写真を撮ったり。ちょっと大変でした。
――チャレンジ中は「今ある服」を生かすために、ご家族の羽織やセーター、ご近所から譲られたズボンなど、そのままでは着にくい洋服は加工して活用されています。出来上がりのイラストはもちろん、ご自身がモデルとなって着用した写真も掲載されていてイメージが広がりました。
この本は、私が絵本を書いていることを知らない方にも手に取ってもらいたいなと思いました。そういう意味でも、イラストだけでなく写真があったほうがわかりやすいかなと考えたのですが、自作の服を着て写真に納まるのは恥ずかしかったです。
気心の知れた人に撮ってもらわないと無理だなと思い、最近カメラの仕事を始めた大学時代の同級生に撮影してもらいました。
インタビュー時の服も、どいさんがリフォームした、本の中でも紹介されているもの。市販の黒の染め粉で染めたシャツは、このような「いい感じのグレー」になるのだそう。
パンツはご近所の方から譲り受けた男性用スラックスを、ウエストや裾を手直しして愛用。ストールは最初に手芸クラブで習って編んだもの。様々な余り毛糸を使った、手編みならではのふんわり柔らかな1枚。
スラックスのリフォームは、本作のイラストではこのように紹介されています。
ほかにも「じんべいでワンピース」「裏返しブラウス」「ブラなしオーケーBNO」シリーズなど、「裁縫が大の苦手」というどいさんによる、シンプルでユニークなアイデアがいっぱい。
家族や知人との洋服にまつわる思い出も綴られていて、「消耗品」ではない、温もりの感じられる「服との関わり方」を考えさせられます。