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  • 【対談】朝井リョウ×青羽悠「何かになりたい」と欲して書いた、初めての小説(第29回小説すばる新人賞対談)

    2017年02月24日
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    集英社「青春と読書」2017年3月号より転載(一部編集)
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    「夢だとか人間だとかをくどくど考えている人間なので」

    朝井 プラネタリウムのある科学館が小説の舞台になっていますが、宇宙にはもともと興味があったんですか。

    青羽 好きですね。この名古屋市科学館にも何度も来ていて、数年前のリニューアルが物語のヒントになりました。

    朝井 プラネタリウムの描写はすごく具体的で、臨場感がありました。僕はこの小説が宇宙を題材にしているところにも、センスを感じたんです。宇宙って、潜在的に人類が引き寄せられるもので、宇宙にまつわるエピソードそのものに、読者はロマンを感じることができるから。

    青羽 嬉しいです。

    朝井 あと、偉そうな言い方になるけど、情報の出し方の順番を心得ているなと思いました。亡くなった館長さんにまつわる、ある〈謎〉がありますよね。その謎の核は言葉にせずに、会話のやりとりでその内容を浮き彫りにさせていく。

    青羽 謎は、読んでもらうために必要な要素だけど、謎が物語の中心ではないと思ったんです。

    朝井 謎は物語のエンジンなんですよね。

    青羽 ああ、それです! エンジン。

    朝井 エンジンだけ積んでもねえ、ということですよね、わかります。もちろんエンジンだけで十分読ませるエンタテインメントもあるけど、僕は、体に跡を残すような“一行”が刻まれた作品が好きです。クッキーの型を押したような一行があると、読後、後を引くんですよね。エンジンは必要だけど、それだけじゃダメだというバランス感覚をデビュー時に既に持っていることが凄いです。

    青羽 たぶん、僕がエンジン以外の部分を、つまり夢だとか人間だとかをくどくど考えている人間なので。

    朝井 結局は、そこが小説の肝(きも)になるんだと思います。エンジンも大事だけど、それはドラッグ的なものだから。ただ青羽さんは、エンジン以外のところを、強烈に匂う吐瀉物のようにドバっと出すのではなく、物語で美しくパッキングして読者に差し出しているんですよね。時系列を頻繁に行き来させながらも、つなぎ方はとても自然だし。だからフィクションが書ける人だなと思ったし、先ほども言ったけど、外へ向けたサービス精神を感じるんです。

    青羽 そういうやり方しか思い浮かばなかったんです。小説の技術として、それしかわからないんですよ。だからこれからヤバいかもしれないです。

    朝井 ここで引き出し全部開けちゃった、みたいなこと?

    青羽 はい、思いつきで、全部。このあと、どうするんだと……(笑)。

    朝井 フィクションをつくる回路は時代に左右されないし、薄まらない才能だと思いますよ。ただ、元来キャラクターの内面を書くことが好きなら、書くものは変わっていくかもしれませんね。これは僕自身にも言えることで、デビューから数年は、リーダビリティがないと商品価値はない! とエンタメ作家のふりをしてパッキングに励んでいたんですが、今はそうでもなくなってきているので。

    朝井リョウ

     

    「僕とは違う戦い方で、長く生き延びてほしいなと」

    青羽 朝井さんは大学生でデビューされましたよね。『何者』くらいまでは、同世代を描いているという印象でした。

    朝井 『桐島』が思いがけず社会学的に受け止められたときに、自分の小説の役割みたいなものを感じたんです。『桐島』は物語の内容というよりも、教室内が階層で分かれているという「スクールカースト」と呼ばれる現象に注目が集まりました。でも僕はそれを特別視していたわけではなくて、公立の共学に通う学生を書くにあたってスクールカーストに全く触れないほうが不自然だった。つまり、自分にとって自然なことを書いたら、特異なこととして受け取られたわけです。そのとき、バトンを渡された、と思いました。おこがましいけど、そのバトンを握っていたのはきっと、綿矢りささん。『蹴りたい背中』などは小説としてだけではなく、今の若者を映す鏡として社会学的にも読まれましたよね。その綿矢さんからバトンを勝手に受け取った気がして、時代の声――これを僕はモスキート音と呼んでいるんですが――を書くことを求められているんだと勝手に気張っていました。そろそろモスキート音が聞こえなくなってきたぞと思っていたところに現れたのが、あなたです(笑)。

    青羽 わからないです、僕にモスキート音が聞こえているのか……。例えばスクールカーストは既に時代遅れと思うところもあるんです。自分が男子校だからかもしれませんが、あまりそういうのを見ていないんですよね。今はオタクの人はオタク同士で屈託なくやっているし。

    朝井 それでいいんです、自然に思ったことをどんどん書けば、別の世代の人が勝手に特異なものとして受け取るから。

    青羽 じゃあ深く考えすぎずに。

    朝井 そう。結果的に、僕のバトンを渡すことになるような気がしています。

    青羽 背筋が伸びました。ちゃんと、上手く、受け取らなきゃと。

    朝井 でも、まずは大学受験ですよね。その後、次作は考えているんですか?

    青羽 書かなきゃという切迫感が強いです。本が出て1、2か月もしたら忘れられてしまうだろうと不安でたまらないので、大学に入ったら書きまくろうと。やっぱり今回、自分より年上の人間を書いておこがましい、と感じてしまったのもあって、次は自分の周辺を書きたいと考えています。僕の友人や同級生はみんな男なので、男子校のバカな話を。

    朝井 それ、すぐ読みたい。一方で僕は、青羽さんは長距離走ができるタイプだとも思っているんです。僕は「大学時代に5冊出す」とか謎の目標を乱立して、デビューからずっと短距離走をしてきました。今ちょっと息切れしてます(笑)。だから僕とは違う戦い方で、長く生き延びてほしいなと勝手に願っています。

    青羽 でもたくさん書かれたから、今の朝井さんがあるとも言えますよね。

    朝井 それはそう。選ばなかった未来はわからないから、今の自分に責任をもってやっていくしかないね。いずれにしろ、今日、僕が話したことは全部忘れてね。

    青羽 えっ!

    朝井 若くしてデビューすると大変だよとか、たくさん書けとか、色んなことを好き勝手に言われるでしょ。僕はすべて「呪い」と受け止めていたので。

    青羽 なるほど……。確かに、今日の対談ということではなく、受賞してから多くの言葉をいただいていますが、素直に受け止めていることもあれば、そうでないこともあって、自分では疑い深いほうかなと思っています。

    朝井 それでいいと思います。特に書く人は疑い深いほうが得です。周りをあまり気にせず、気長に頑張ってください。

    青羽 今日はありがとうございました。

     

    『星に願いを、そして手を。』作品情報

    星に願いを、そして手を。
    著者:青羽悠
    発売日:2017年02月
    発行所:集英社
    価格:1,760円(税込)
    ISBNコード:9784087710373

    祐人、理奈、薫、春樹。4人の幼馴染みは中学時代、町の科学館に集まって、宇宙への夢を語り合っていた。だが高校卒業後、それぞれの道を歩み始める。

    社会人となった4人が再び顔を合わせたのは、科学館の館長が死んだ日だった。宇宙への夢を諦めた祐人と、迷いながらも研究を続ける理奈。再会が、4人をあの頃の日々へと連れ戻し、親しんだ館長の知られざる素顔が明らかになっていく。

    大人になった4人は過去の夢と、今の夢、そして将来の夢とどう向き合っていくのか──。16歳の現役高校生が描く、ストレートな青春群像劇。

    特設サイト http://renzaburo.jp/aoba/

     

    対談場所となった名古屋市科学館のご紹介

    「みて、ふれて、たしかめて」。だれもが楽しみながら科学に親しめる国内屈指の総合科学館です。

    2011年3月に内径35mの世界最大のプラネタリウムドーム「Brother Earth」を備えた新館がリニューアルオープン、人気を集めています。

    〒460-0008
    愛知県名古屋市中区栄2丁目17番1号 芸術と科学の杜・白川公園内
    TEL.052-201-4486
    http://www.ncsm.city.nagoya.jp/

    (写真:名古屋市科学館)

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