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  • 【対談】朝井リョウ×青羽悠「何かになりたい」と欲して書いた、初めての小説(第29回小説すばる新人賞対談)

    2017年02月24日
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    集英社「青春と読書」2017年3月号より転載(一部編集)
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    「自然に大人に触れているというのは大きな武器だと思います」

    朝井 読ませていただいて「外に向いている」という印象を受けました。ここ数年、若くしてデビューされた人の小説は、内へ内へと潜っていくものが多かった。つまり人間に興味があって小説を書く人と、物語に興味があって小説を書く人がいるとしたら、どちらかといえば前者の小説が多い気がしていたんです。が、この小説はその流れと違うなと。青羽さんは物語を書くのが好きなんですか?

    青羽 いや、物語を考えるのはつらいです。物語は本当に神からの授かりものだと思っていて、降りてきたときに慌ててメモ、メモと。と同時に、小説は人に読んでもらわないと意味がないとも思っていて、面白い物語を書きたいという意識はありました。

    朝井 苦手だからこそ、その要素が強くなっているんですね。僕は、この小説は「16歳」が書いたんだと強く謳わないほうがいいんじゃないかと思ったほどです。色眼鏡で見られることもあるだろうから。売り出すときの話ですが(笑)。

    青羽 「外に向いている」と感じられたのはどのあたりからでしょうか。

    朝井 例えば物語に複数の線が走っていて、それらが響き合って、やがて一つに収斂(しゅうれん)していくという展開。主人公の思考や語りが繰り広げられるというよりは、それぞれ呼応して全体として動いていく。デビュー作で3つの世代が出てくるのも新しいと思いました。僕のデビュー作『桐島、部活やめるってよ』の登場人物はほぼ全員17歳でしたし。この3世代は自然発生的に出てきたんですか?

    青羽 もともと僕は高校生である自分の、もう少し上の世代を書きたかったんです。結局、少し先の未来が不安なわけです。そこを肯定したいというか、考えたいと思って。

    朝井 主人公たちは大学を出て就職して2、3年経った頃ですね。その辺りの年代が不安だったということ?

    青羽 そうですね。何をしているにせよ、何らかの区切りをつけなければいけない年代なのかなと想像しました。

    朝井 なるほど。夢を追い続けるか、追うのをやめるか。決断を迫られる時期だということですね。その年代の不安を、物語の中だけでも肯定してあげたかった。

    青羽 はい。だから僕の中で一つ筋を通したのが〈夢〉で、夢が叶う人、叶わなかった人、まだ答えを保留している人という三方向を全部書こうとしたら、自然に世代が分かれていったという感じです。

    朝井 それにしても大人の世界の文化が自然に書けるのが不思議です。小説の中に「差し入れ」を持って行くシーンがありますが、僕、高校生のときに差し入れなんて文化、たぶん知らなかった(笑)。

    青羽 うーん、周りに大人が多かったのかもしれません。高校の部活の関係で、大学生や社会人と関わる機会が多いんです。それから自分で言うのもなんですが、自己分析すると、気を遣う人間なのかなあと。

    朝井 確かに。青羽さんの授賞式での立ち居振る舞い、皆褒めてたし(笑)。

    青羽 冷静に振り返ると嫌になるんですよ。褒められるために頑張っているようで、イタいなと……。

    朝井 いや、普通だと思いますよ。失礼な態度をとる必要も全くないし。

    青羽 そう言っていただけると安心します。でも今も、僕が上の世代を書いていいのだろうかという不安は強くあります。

    朝井 いいんです、誰を書いても。あの人と自分は立場も環境も違うから書いたら失礼かな、なんて気遣いは不要です。そうなると、究極、自分のことしか書けないですからね。自然に大人に触れているというのは大きな武器だと思います。

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