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「星に願いを、そして手を。」で第29回小説すばる新人賞を受賞した青羽悠さんは、16歳の現役高校生。最年少での受賞となりました。
読書情報誌「青春と読書」2017年3月号では朝井リョウさんをお迎えして、受賞記念対談をお届けします。
2009年、20歳のときに『桐島、部活やめるってよ』で同新人賞を受賞し、デビューされた朝井さん。「小すば」の先輩でもある朝井さんは、青羽さんの小説を「外に向いている」と感じられたと言います。朝井さんは本作をどう読まれたのでしょうか。
対談場所は名古屋市科学館です。青羽さんが幼少期より通い、作品のモチーフである「宇宙」への憧れを育んだという大切な場所で行われた対談、お楽しみください。
構成=砂田明子/撮影=露木聡子
青羽悠(あおば・ゆう)=写真左
2000年愛知県生まれ。現在、高校2年生。
朝井リョウ(あさい・りょう)=写真右
作家。1989年岐阜県生まれ。早稲田大学文化構想学部在学中の2009年『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。著書に『チア男子!!』(高校生が選ぶ天竜文学賞)『何者』(直木賞)『世界地図の下書き』(坪田譲治文学賞)『武道館』『何様』等多数。
朝井 7年前、僕は青羽さんの側でした。小説すばる新人賞を受賞して、石田衣良さんと対談をさせていただいて。自分がこっち側になる日が来るとは全く思っていなかった(笑)。
青羽 お会いするのを楽しみにしていました。今日はよろしくお願いします。
朝井 よろしくお願いします。青羽さんは、初めて小説を書いたんですよね。きっかけは何だったんですか?
青羽 きっかけというほどでもないんですが、思いついたことをメモ帳にちょっと書くということはしていたんです。
朝井 散文ですね。
青羽 はい、散文。書いていたということは、あふれ出るものとか、こぼれ出るものがあったんでしょうね。次第に、このままメモ帳に溜めているんじゃなくて、書いたほうがいいと思うようになって。
朝井 作品として書いたほうがいいと。
青羽 はい。書かなきゃと思ったんです。
朝井 散文を書いていたときから、この作品のモチーフとなる〈夢〉などは出てきていたんですか? それとも、小説を書く段階で作り直してこういう物語になっていったんでしょうか?
青羽 全部作り直しです。正直、いきなり賞を取れるとは思っていなくて……小説を書くのって挑戦だったんです。だって最初は、こんな分厚いの、書けるわけねぇだろうって(笑)。
朝井 いきなり長編を書くのは相当難しいと思います。
青羽 だから僕にとって、小説は〈夢〉。そういうものなんだということを、書こうと思ったんです。
朝井 小説を書く自分と、物語のモチーフが重なってくるんですね。ということは、小説家になるという夢はあった?
青羽 「何かになりたい」という漠然とした欲だけがありました。すぐ憧れちゃうんですよ。それこそ科学館に来たら科学者になるぞと思うし、音楽聞いたら楽器やろうと思うし、小説を読んだら小説を書きたくなる。でもこのままだと夢見がちなだけで絶対に何も起きないから、これはもう、書かなくてはと。
朝井 色々なものに憧れる中で、小説に向いたのはなぜでしょう。今って動画も簡単に撮れるし表現手段は多いですよね。
青羽 小説はワードさえあれば書けちゃうから、まずは小説をやってみようと。そうしたらどんどんのめり込んでいって、作品が一つ出来上がったという感じです。
朝井 数ある新人賞の中でも「小すば」に応募したのは理由があったんですか?
青羽 一つは3月末締め切りのタイミングがよかったんです。前年の4月から始めてこつこつやって、2月に書き上げたので。それからもう一つ……、おこがましいんですけど、朝井さんを意識していたところもありました。ごめんなさい。
朝井 こちらこそなんかごめんなさい。
青羽 ちょうどこの小説を書く前に『何者』を読んでいて、勝手に、自分に合っている賞かなと。そして朝井さんの作品がそうであるように、若い人にも読んでもらえる賞かなと思っていました。
朝井 そうでしたか。僕は一次選考を通過したら名前が発表されるという理由で「小すば」を選んだんです(笑)。多くの賞は最終選考に残った人の名前しか発表されないので。確かに、締め切りの時期もいいですよね。春にやるぞと始めれば、ちょうど1年ですからね。