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果てしなく、豊かに広がる本の世界。せっかくなら、自由に、心のままに味わいたい。特集「本と、ともに」では、そんな「本を読むこと」の楽しみを作品にもたっぷり詰め込んだ著者たちにご登場いただき、本と読書の魅力についてインタビューとエッセイでお届けします。
第1弾にご登場いただくのは、最新刊『よるのばけもの』が発売されたばかりの住野よるさんです。
2015年に『君の膵臓をたべたい』でデビューした住野よるさん。同作は2016年の本屋大賞第2位に選ばれ、来夏の実写映画化が決定。続く第2作『また、同じ夢を見ていた』もベストセラーとなり、いまだその勢いが続くなか、待望の最新作『よるのばけもの』が刊行されました。
特集では住野よるさんにメールインタビュー。読書ライフから新刊についてまで、たっぷりお答えいただきました。
【Q1】住野さんの読書ライフについて教えてください。
読書時間も読書量もそんなに多くありません。基本的に家で読んでいます。
【Q2】作家になるきっかけになった本や作家さんは? または好きな作家さんや影響を受けた作品、記憶に残る読書体験など。
時雨沢恵一さんや、有川浩さん、乙一さん達に憧れ、ライトノベル作家を目指していました。子どもの頃、『エルマーのぼうけん』をずっと読んでいたことを覚えています。
【Q3】どのように本と出会っていますか?
最近は担当編集さんに勧められることが多いです。今年読んだ中では、彩瀬まるさんの『やがて海へと届く』と阿川せんりさんの『厭世マニュアル』などが特に好きでした。
【Q4】住野さんにとって、本を読むことの魅力とは。
娯楽です。「楽しい」ということが一番の魅力だと思っています。
【Q5】小説家になって、読書について変化したことはありますか?
今まで読んだことのない作家さんの本も、手に取ってみようと思うようになりました。
【Q6】小説家として読者に作品を届けることについて、「こんなふうに読んでもらえたら」といった思いはありますか?
一度読み、数年してからもう一度読んで貰えたら嬉しいと思っています。その時々のおかれた状況で、読み心地が変わる本を書けたら理想です。
【Q7】これまでの2作に寄せられた中で、特に嬉しかった感想などがあれば教えてください。
「すごいっ!」「面白かった!」と率直に褒めて貰えるのが嬉しいです。またとある作家さんから、メッセージをぼやかさない、丹念に濾過された水のようだと言っていただけたのはとても嬉しかったです。
【Q8】『君の膵臓をたべたい』『また、同じ夢を見ていた』にはサン=テグジュペリ『星の王子さま』が、最新作『よるのばけもの』にはあの大ベストセラーや本そのものが、モチーフとして登場します。作品の中に本を登場させることには、どんな思いが込められているのでしょうか?
本の中がこの世界と地続きであることを表したくて、実在する本を登場させています。また、時代が現代であることもすぐに理解してもらえると思うので。
【Q9】『よるのばけもの』は中学生が主人公の物語です。学校での切実な問題が描かれていますが、この作品を通して伝えたかったこととは。
描きたかったのは主人公である「あっちー」の身勝手な孤独です。でもその身勝手な孤独を持つことを、間違っていると言っているわけではありません。皆がそれぞれに身勝手で、「誰も正しくなんかないから安心しよう」って自分と読者さん達に言っているようなお話だなと思っています。
【Q10】『よるのばけもの』では、他者に対する想像力や自分と向き合う痛みも重要なテーマだと感じられました。小説を読むことでひらかれる他者・自分への目は、読書で得られる大切なものの一つですね。
作中でも言っていることですが、小説を読むことって特別なことでもなくて、読みたくない人が読むものではないと思っています。他者への想像力に気がつくきっかけが、映画でも音楽でもなんでもいいと思います。ただ小説は文字だけだからこそ、読む人のパーソナリティーに寄り添うことが出来ると思っています。想像すればそれが読んでいる人にとっての正解になるという点です。そこを楽しんでもらえたり、寄り添って傷ついてもらえればいいなと思っています。
【Q11】最後に読者へのメッセージをお願いします。
『よるのばけもの』は面白いと言ってもらえるお話ではないかもしれません。しかし何か一つでも自分の中にある感情を見つけてもらえたら嬉しいです。
住野よる Yoru Sumino
高校時代より執筆活動を開始。デビュー作『君の膵臓をたべたい』、続く2作目『また、同じ夢を見ていた』がそろってベストセラーとなり、注目を集める。
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(「新刊展望」2017年1月号より転載)