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『ハリー・ポッター』や『指輪物語』『不思議の国のアリス』『ナルニア国物語』など、多くのファンタジー文学を生み出してきたイギリス。そんな「ファンタジーの本家」で生まれ世界中でヒットした「ヒックとドラゴン(原題:How to Train Your Dragon)」シリーズが、2016年10月に発売された第12巻(上・下)でついに完結を迎えました。
ひ弱なバイキングの少年「ヒック」と、小さくてわがままなドラゴンの「トゥースレス」。彼らの冒険と成長の物語は日本でも小学生たちの心を掴み、2009年の刊行以来、シリーズ累計で65万部を突破しています。
そんな人気シリーズのラストシーンは、これまでのエピソードの中でも特に「泣ける」と話題です。物語が迎えた結末や、第1巻の刊行から10年近い歳月を『ヒックとドラゴン』に注いできた小峰書店のお二人にお話を伺いました。
(左から)小峰書店 編集部 編集長 渡部のり子さん、営業部販売課 課長 山崎哲也さん
―― シリーズ完結、おめでとうございます。長い年月を『ヒックとドラゴン』とともに歩んでこられて、完結を迎えた今のお気持ちを聞かせてください。
渡部: 私たちを含め、訳者のお二人や関係者の皆さんは「ヒックロス」と呼ばれるくらい茫然とした気分で(笑)、「あーあ、終わっちゃった……」というのが正直な気持ちです。
山崎: 営業担当としては続編を期待したいくらいなんですが(笑)、11月に新刊12巻セットを刊行しますので、これからはクリスマスシーズンに向けて『ヒックとドラゴン』を盛り上げていきたいと考えています。第12巻の表紙は特に、赤と青のキラキラした感じがクリスマスらしいですよね。
渡部: 原書はハードカバーで、ものすごく豪華な装丁なんです。でも日本では、できるだけ多くの子どもに読んでもらいたいという思いから、原書の豪華さを生かしながらもソフトカバーで定価を抑える努力をしました。上下に分けたのも、手に取りやすくするための工夫です。第12巻は全部で550ページあるのですが、原書は上下に分かれていないんですよ。きっとそのまま日本で発売したら、読者は圧倒されていたと思います(笑)。
―― これほどのベストセラーとなった理由については、どのように考えていらっしゃいますか?
渡部:「普段本を読まないお子さんたちに読んでいただけた」ということが大きいと思います。特に小学3~4年生の男の子、主人公のヒックと同じくらいの年齢の子どもを中心に支持を集めているんです。保護者や図書館司書の方からは、「本を1冊通して読んだことがなかった子が、この本だけは読めた」というご意見が多数寄せられました。
山崎: 弊社では、こうして65万部も版を重ねた読み物のシリーズはかつてないんです。学校図書館での購入率も非常に高く、図書館で読まれて書店でも売れるという相乗効果が出ていると思います。
渡部: 男の子たちが気に入ってくれた理由は、まずテンポの良さにあると思います。読者からも「ゲームみたい」という反応をいただいているのですが、物語がスピード感を持って展開するので、子どもを飽きさせなかったのではないかと考えています。
また、登場人物が実に魅力的です。ヒックがごく普通の男の子なので、子どもたちは一緒に物語の世界を冒険できますし、トゥースレスが好きだというお子さんもすごく多いです。物語の力と登場人物の魅力が、この本の人気を支えているのだと思います。
――『ヒックとドラゴン』は2010年、2014年と3Dアニメ映画が制作されましたよね。トゥースレスが原作とかなり違うイメージだったので、驚きました。
渡部: トゥースレスは初めから大きくて強いドラゴンとして描かれていましたし、ヒックの年齢も原作では11歳ですが、映画では15歳という設定になっていましたよね。
▼原作のヒックとトゥースレス(『ヒックとドラゴン』第12巻より)
▼映画版ではこのように描かれました(ドリームワークス公式HP「ヒックとドラゴン」より)
映画もすごく面白かったので、海外ではヒットした「ヒックとドラゴン2」が日本で劇場公開されなかったのは、もったいないなあと思っています(DVD/Blu-rayは発売中)。ちなみに2018年には、「ヒックとドラゴン3」が公開予定です。
―― 著者のクレシッダ・コーウェルさんは、どんな方なんですか?
渡部: ロンドン出身の女性作家で、幼少時代はスコットランドの小さな島で育ったそうです。霧が立ち込める自然の中で著者が空想したものが、きっと『ヒックとドラゴン』にも出ているんでしょうね。なおクレシッダさんは『ヒックとドラゴン』で、イギリスの哲学誌「Philosophy Now」から“愚かさとの闘い”に貢献したことを称える「Award for Contributions in the Fight Against Stupidity」という賞を受賞しています。児童書での受賞は初めてのことだそうですよ。
▼クレシッダ・コーウェルさん(ご自身の公式HPより)