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連載開始から30年目を迎えた、夢枕獏さんの大人気シリーズ『陰陽師』。シリーズ15作目となる最新刊『玉兎ノ巻』も、稀代の陰陽師・安部晴明と心優しき笛の名手・源博雅が大活躍! 担当編集者の方に作品ガイドを寄せていただきました。
夢枕獏さんの「陰陽師」がはじめて雑誌「オール讀物」に掲載されてから、今年で30周年。長く愛され、累計600万部を超える大人気シリーズとなりました。漫画化や映画化などメディアミックスも盛んで、今年はミュージシャンとコラボレーションして「陰陽師」の世界観を表現したCD+BOOKもリリースされています。
この「陰陽師」シリーズの魅力は、まずなんといっても、クールで美しい陰陽師・安倍晴明と、心優しき貴公子にして笛の名手・源博雅の名コンビの活躍です。
2人が差し向かいで酒を飲んでいるところへ不思議な謎が持ち込まれ、それを解決するために2人がでかけてゆく。この時の、
「ゆこう」
「ゆこう」
という晴明と博雅のやり取りが癖になってしまった、という読者の方も多いのではないでしょうか。
本作『陰陽師 玉兎ノ巻』は、単行本としてはシリーズ15作目となります。月蝕の夜に2本足で立ち、「晴明を呼べ」と要求する兎。木犀の花の匂いが漂う夜、天から降ってきた斧の持ち主。男に愛されるために、顔を変え続ける女――。本作に限らず、「陰陽師」シリーズに登場するあやかしや鬼、そして人間たちは、怖ろしくもありますが、どこか愛嬌があったり、心の弱さが潜んでいたりと、憎めないところがあるのも特徴です。鬼やあやかしが人間とおなじ世界にいた時代の闇の奥深さを、ぜひ味わってみてください。
夢枕さんはかつて、インタビューで「倒れるまで書き続けたい」とおっしゃっていました。それが、本書のあとがきではさらにレベルが上がり、今の心境を「ああ、虫に生まれかわっても来世で物語を書きたい」と綴っています。長年にわたって続いてきた「陰陽師」シリーズですが、その物語の源泉が尽きることはなさそうです。
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文・文藝春秋 「オール讀物」編集部 本川明日香
シリーズ累計600万部突破&「陰陽師」30周年記念として、作家・夢枕獏とジャズピアニスト・スガダイローによるCD+BOOKが登場。「蟬丸-陰陽師の音-」は9月21日発売です。
(「新刊展望」2016年10月号「エディターの注目本ガイド」より転載)