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“普通にはなれない”高校生と先生の崖っぷちのバトルを描いた、2019年ポプラ社小説新人賞受賞作『二木先生』(『ニキ』から改題)が、9月に文庫化され、現在累計発行部数3万5,000部と再び話題となっています。
著者は、各社文芸編集者が注目する夏木志朋さん。新鋭が描く型破りな青春小説の魅力について、編集を担当したポプラ社の野村浩介さんにご紹介いただきます。
第9回ポプラ社小説新人賞を満場一致で受賞した新人作家、夏木志朋。デビュー作は『二木先生』というタイトルで9月に文庫化、現在(11月末)5刷3万5,000部。日々、仕掛け店が増えていく。どきどきしながら、原稿を初めて読んだときに強く惹かれた一文があったことを思い出した。
人を見下して心をなだめる自らを蔑む気持ちと、その心理を知っているという自負、そうした自意識がキャベツやレタスのように層になって、心を襞(ひだ)だらけにしていた。
(『二木先生』p36より)
「心の襞」という言葉はふつう良い文脈でつかう。だが主人公の高校生・田井中広一の心の襞は、馬鹿にされた人間の苦しみがつくった襞だ。ちょっと触れただけで反応は混乱し、彼は「変わった人」に見えてしまう。
作者はそのような高校生を主人公とし、担任の美術教師の「二木先生」と向き合わせた。広一はまわりに適応できないことに苦しんでいるが、教師の二木も広一以上に社会から嫌悪される秘密を持っていた。田井中にとっては自分よりも遥かに「ヤバい」人間が職業につき、ふつうに生きている。広一は羨望と同時に「なぜあなただけが許されるのか」という憎悪に焼かれる。複雑な感情が入りまじりながら、相手の秘密を武器に脅し、裏をかき、攻め込んでいく。
圧倒的な面白さにどんどんページをめくってしまうが、読み切るのが怖くなっていく。読み終えて私は絶望するだろうか。それとも……。どんでん返しの果てにたどりついたラストには、思いがけぬ風が吹いていた。希望という言葉を思い出した。
この作品を店頭で見つけて読んでくださった10社以上の文芸編集者から執筆のオファーが届いた。次は何が出てくるのか。やはりどきどきする。
(ポプラ社 編集者 野村浩介)
・【Vol.1:夏木志朋】編集者が注目!2021はこの作家を読んでほしい!