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  • これは恋?それとも“推し”? 恋にフタをして推しへの愛に生きる女の子のラブコメディ『沼すぎてもはや恋』

    2022年11月27日
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    花森リド:講談社コミックプラス
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    沼すぎてもはや恋 1
    著者:空垣れいだ
    発売日:2022年10月
    発行所:講談社
    価格:528円(税込)
    ISBNコード:9784065295144

     

    恋するよりもオタク活動

    「オタ活」と「恋」は似ているようでまるで別物です。オタクの国では、推しに愛(とお金と時間)を捧げることが大切な教義で、それに殉じさえすれば、オタクは祝福される。すばらしいシステムですよ。でも恋はそうじゃない。「捧げたが捨てられました」的な失恋ソングはいくつもある。捧げた魂を捨てるだなんて、推しはそんなことしないのに! だからオタクは愛のアクセルをベタ踏みできるのかも。ならば、オタクのあの疾走感が恋に向かっていったら、どうなるんでしょう。

    『沼すぎてもはや恋』の“桐野桃華(きりのももか)”は、恋にフタをして推しへの愛に生きる女の子。

    桃華が毎回ハマるのは目が鋭くて黒髪でちょっと影のあるアニメキャラ。そんな無数の推したちが、さあどんどん消費しろといわんばかりにアニメ市場から供給され続けています。2次元だってもちろん素敵。でもね、推しよ、どうか現実になって。そんな叶わぬ夢を見ていたある日、転校生が現れます。

    真っ黒な髪と鋭い目。フードは脱がないし黒マスクだし、名前は“狼谷柊斗(かめたにしゅうと)”くん。名前もかっこいい。近い。推しに近い! しかも!

    転校初日の第一声がコレ。さらにこのあと「近づいたら殺す!」って叫ぶんです。ざわつく教室。そして桃華もクラスのみんなとは全くちがう理由で動揺しています。「ちょっと推しに似てる……!」と。つまり、この段階ではまだ推しじゃない。でもこの明らかにワケありそうな彼の秘密を知ってからが大変。

     

    めっちゃ顔赤いですよ!

    いつも通りオタク活動に励んでいた桃華は、狼谷くんに偶然接近してしまいます。「近づいたら殺す!」と言われてたのに。ところが。

    何その顔? 殺意からはほど遠い顔。というか真っ赤じゃない?

    実は彼、女が憎いとかじゃなく、女子の前でめちゃくちゃ赤面してしまう体質なのです。

    だからマスクとフードで顔を隠してたんだね。ここで桃華のオタク脳のスイッチが完全に入ります。

    アニメキャラよりも推せる人、見つけた! ひとたび推しを発見すると桃華はアクセル全開で推しを称(たた)える生き物にチェンジ。

    狼谷くんに気持ち悪がられることすら今の桃華にとっては尊い養分。オタクムーブの描写がどれもリアルでかわいい。勝手に推しの色を決めてマニキュアを塗ったり(もちろん狼谷くんの色はブラック!)。このぶっ飛ばしてる感じは、恋心とは少し違うんですよね。

     

    推しの頼みとあらば

    推しを悩ませる問題はファンにとっても悩み。だって推しにはいつでも幸せでいてほしいんだもの。ということで桃華は狼谷くんの赤面をなんとかしようと力を貸すように。

    狼谷くん、自分から壁を作って「近づいたら殺す!」とか言ってはいるものの、やっぱりさみしいんです。かわいい。そしてそんな自分にぐいぐい近づいてファンサを求める桃華は貴重な存在。

    推しにこんなこと言われちゃったら、なんだってするでしょ。こうして桃華は狼谷くんという名の深い深い沼にずんずん足を踏み入れていくことに。

    狼谷くん、かわいいな。推せる。狼谷くんのかわいい場面を挙げたらきりがないよ。

     

    同担拒否!

    桃華の努力と献身によって狼谷くんは少しずつ教室のみんなとも打ち解けてゆきます。よかったね。でも?

    「推しの幸せは自分の幸せ」のはずなのに、クラスの女の子と話す狼谷くんを想像すると切ない。他の人からも推されると複雑だから? つまりもしやこれは「同担拒否」?

    いや、桃華が注意深く避けてきた「恋」が始まっているのかも。

    やっぱり恋のような気がする! デザートらしい場面! でもオタクっぽさは不滅で、桃華が狼谷くんにお願いすることの大半は「課金しよう?」って感じのことばかり。

    耳元でささやかれて「はわわわわ」は、オタ活っぽいな。

    でも、この瞬間の桃華は「はわわわわ」って顔じゃないし、私もマンガをめくる手を止めて、このページを胸に押しつけたいくらいキュンとなる。このあとの狼谷くん、ほんっっっっっと凄いんですよ。165ページは全女子に読んでもらいたい。恋の波と推しの波が交互にやって来ます。いろんな狼谷くんと桃華を拝みたいです。

    (レビュアー:花森リド)


    ※本記事は、講談社コミックプラスに2022年11月6日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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