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11月1日に発売された『いただきますの山――昆虫食ガール 狩猟女子 里山移住の成長記録』。著者の束元理恵さんは、「中国新聞」で2年間という異例の長期間連載となった人気コラム「あこがれ山暮らし~北広島から」を執筆したコラムニストであり、昆虫食ガールや狩猟女子としてメディアでも紹介されています。
今回は、そんな束元さんのデビュー作となる、書き下ろしノンフィクション小説『いただきますの山』について、編集を担当したぞうさん出版事業部の鬼丸みえさんに文章を寄せていただきました。
束元理恵
つかもと・りえ。1994年広島県生まれ熊野町育ち。幼稚園教諭、フリーターを経て、22歳の春、猟師にあこがれて尾道市から北広島町に移り住む。2020年4月~2021年12月、中国新聞コラム「あこがれ山暮らし」全80回の連載にて、どっぷり山里に浸かった日々を毎週1回つづる。「昆虫食ガール」「狩猟女子」と呼ばれる。
『いただきますの山』は、広島の女性猟師・束元理恵さんのデビュー作となる、書き下ろしノンフィクション小説です。
タイトルから、「田舎暮らしのほのぼの本?」「田舎グルメ本?」とイメージされて手に取ると、内容とのギャップに驚かれると思います。
「幼稚園の先生、挫折から猟師へ」という帯のキャッチコピーにあるように、この物語は挫折から始まります。
そして挫折からの再スタートを後押ししてくれたのは、旅先で出会った人の何気ない言葉。そして、這い上がり進む上での道しるべとなったのは、小さい頃から好きだったこと。
あこがれをあこがれで終わらせず、「なんでも自分でやってみたい」と奮闘しながらも進んでいく著者の姿は、応援したくなると同時に、シンプルに動くことがあこがれを叶える近道であると教えてくれます。
物語の中で、彼女は自分なりの食を楽しみます。
動物や虫を獲って食べることはあまり一般的ではないので、「変わり者」と捉えられてしまいそうですが、一緒に本作りを進める中で感じたのは、束元さんはいたって普通の女の子だということ。好きであることに理由がないといけないわけではない。繊細だけどちょっと人より行動力があってまっすぐに進む彼女の好きなこと、普通なことを、変わったこととはやしたてるようにならないよう、編集には気をつけました。
束元さんと本を作りながら思ったことは、都会に住む私たちの暮らしがいかに狭い世界であるかということ。そして、いかに都市の食が地方の農業に携わる方々のおかげでなりたっているか、ということ。本書のあとがき、ぜひ読んでいただきたいです。
「今時の子はトレーに入った切り身のお魚が海を泳いでいると思っている」など、現代っ子を揶揄する表現を聞いたことがありますが、牛や豚、鶏の命を奪う場を見たことのない自分も、そう変わらない。
彼女が見て、触れて、経験した命のリアル。狩猟のシーンやイノシシの命と向き合うシーンの描写を共に追っていると、上がる心拍数を抑えることはできませんでした。
生き物の命と対峙し生きる彼女の強さ、そして弱さを隠さず自然体に描いたこの物語は、いろんな人に勇気を与えてくれる本なのではないかと思います。
世界で最も田舎にある出版社「ぞうさん出版」ならではのこの一冊、ぜひお手にとっていただければ幸いです。
(ぞうさん出版「いただきますの山」 担当編集者 鬼丸みえ)
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