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文庫300万部突破!『呪術廻戦』とコラボ!14年たった今も読まれ続けている『告白』の魅力とは|湊かなえ『告白』

湊かなえさんのデビュー作にしてベストセラー小説『告白』が、このたび文庫単独で300万部という偉業を達成しました。これを記念し、お互いに影響を受け合っているという『呪術廻戦』著者・芥見下々さんの描き下ろしイラストによる限定コラボ帯での『告白』が10月18日(金)より順次全国書店にて発売中です。

「娘はこのクラスの生徒に殺されました。」女性教師によるホームルームでの告白から始まる物語は息をつかせぬ展開で、怒濤の告白が読者を湊ワールドへ誘います──

誕生から14年たって今なお多くの老若男女に読まれ続けている『告白』の魅力を、書評家・千街晶之さんのレビューにてご紹介します。


今読んでも鮮烈なデビュー作


湊かなえのデビュー作『告白』が2008年に刊行されてから、早くも14年の歳月が流れた。そのあいだに著者はヴェテランの域に達し、日本推理作家協会賞(短編部門)と山本周五郎賞を受賞したほか、直木賞・吉川英治文学新人賞・山田風太郎賞など錚々たる文学賞にノミネートされており、その活動領域はもはやミステリの枠内にとどまるものではない。作品の多くが映像化されているし、『贖罪』はアメリカ探偵作家クラブ主催のエドガー賞の最優秀ペーパーバック・オリジナル部門にノミネートされた。

この輝かしい経歴の始まりを飾ったのが『告白』だが、思えばこの作品は極めて異例のデビュー作だった。著者は「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞し、それを連作化したのが『告白』だが、「連作になった」という事後の知識を一旦頭から振り払って「聖職者」を読み返すと、独立した短篇としての完成度が高く、それだけにこれが連作に膨らむとは想像しづらいのではないか。著者の非凡な構成力がこの一点からも窺えるが、その後の作品群にも、一人の主人公を軸にするのではなく複数の人物の視点で構成されたものが多いことを思えば、著者の資質が顕著に窺えるデビュー作だったとも言える。

『告白』は第6回本屋大賞を受賞するなど、大きな話題を集めてベストセラーとなった。2000年代半ばから、著者の他にも真梨幸子、沼田まほかるといった作家が相次いでデビューして「イヤミス」ブームが起きたが、これはその少し前の時期、エンタテインメント界を含む世間で「癒し」が持て囃され、その反動として生じた面があったことは今では忘れられていそうだ。しかし、そのような背景が過去のものとなってから読んでも『告白』は古びていない。イヤミスとは単に読後厭な気分になるミステリではなく、そこから突き抜けた境地がなければ優れたイヤミスにはなり得ない――と私は当時から繰り返し説いてきたが、『告白』のラストのいっそ痛快ですらある突き抜け具合は、今読んでも鮮烈さを失っていないのだ。

『湊かなえのことば結び』によると、著者は作品を書く際、「妥協しない。このままバッドエンドに向かうより、明るいラストになった方がいいんじゃないか、と思っても、自分がこの問題を突き詰めていきたいと思った内容については、小説の中でしっかり向き合おう、と」という姿勢で臨むという。『告白』を読み返すと、著者のそうした姿勢がデビュー作から貫かれていたことがわかる筈だ。

また、湊かなえさんの『告白』文庫300万部突破で
『呪術廻戦』芥見下々さんとのスペシャルコラボをはじめとした、記念フェアも開催中です!

記念フェアの詳細はこちら