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  • これが私の顔…!? こけし顔を一瞬で変えてくれた美容男子の正体とは?『かえるのおうじさま』

    2022年10月15日
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    中野亜希:講談社コミックプラス
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    かえるのおうじさま 1
    著者:みちのくアタミ
    発売日:2022年09月
    発行所:講談社
    価格:748円(税込)
    ISBNコード:9784065292341

     

    僕があなたをメイクします


    絶体絶命って経験したことありますか? ワラでも魔法でも、なんでもいいからすがりたいけれど、都合よく助けてもらえることはそうありません。それだけに、そこに手を差し伸べてくれる人は、その場だけでなく、あなたの人生を変えてくれる人かもしれません。『かえるのおうじさま』の主人公・日高彩海が経験した絶体絶命は、これ。


    ここは国内最大手の化粧品会社・美坂堂。
    就職難民の彩海は、地元・宮崎からはるばる東京の大手化粧品会社・美坂堂まで面接を受けにきました。夜行バスを降りたらスーツに着替えて顔を洗い、メイクするつもりでした。しかし、肝心の化粧ポーチがない……!


    周りは完璧メイクのキラキラ女子ばかり。可愛くて志望動機も明確な彼女たちと比べて、「大手なのに経験不問だから」というだけで面接に来て、ほぼすっぴんでウロウロしている自分はなんて中途半端で場違いなんだろう。途方に暮れる彩海の前に、髪とメガネで顔を隠した、社員らしき男性が現れます。


    ファンデとリップだけでも「別にいい」。身だしなみとしてはそうなのでしょう。でも、この顔で面接がうまくいくとは思えない……。そんな彩海に、彼は「僕があなたをメイクします」と、思いがけないことを口にします。


    男性が大きなメイクボックスを取り出す様子を見ても、彩海はまだ半信半疑。しかし、彼が慣れた様子で前髪を上げ、眼鏡をはずすと……


    顔!! 顔が、良い!!  彼は、彩海も言葉を失うほどのイケメンだったのです。


    都会ってみんなこんな美形やっちゃろか……。(違います)
    泣いていたことも忘れ、彼にメイクを任せる彩海。
    メイクが終わると、そこには見たことのない自分の顔がありました。


    濃いメイクではないのに、コンプレックスの「こけし顔」が解消され、さっきまでの自分とは別人のよう。


    面接の時間が迫るなか、「お礼がしたい」と食い下がり、彩海はどうにか彼の名前を聞き出すことができたのでした。

     

    この世にブスなんていません


    あの男性は「八乙女さん」。彩海が笑顔で心からの志望動機を語ることができたのは、彼のメイクが魔法のように顔を変え、気持ちまでも変えてくれたからでした。短い時間で、八乙女さんが彩海の顔の魅力を引き出すことができたのはなぜでしょう?


    「この世にブスなんていません」。このセリフは、彩海をただ慰めるためのものではないんです。
    八乙女さんのメイクは実にロジカル。自称「こけし顔」の彩海の顔のどこをどうすれば可愛くできるのか、リアルなテクニックを教えてくれます。それを読者も一緒に学べるのが、このマンガのすごく楽しいところです。八乙女さんが彩海に施したのは、顔の骨格を際立たせる「ハイライトをポイントにしたメイク」でした。


    見慣れた自分の顔でも、「どこを」「どうすれば」理想の自分に近づけるのか、案外わからないものです。彩海も、八乙女さんのメイクを自分で再現できずにいました。そんな彩海に八乙女さんは、スマホライトを駆使して「ハイライトの入れ方」を教えてくれます。一緒にやってみればこの通り。



    「この世にブスなんていません」「その人に合ったメイクをすれば、誰でも魅力的になれるんです」。
    八乙女さんのこのセリフは、きっと本心。だから、コンプレックスには目がいかず、本人の魅力に光が当たるような顔に、最速でたどり着くことができるんじゃないでしょうか?

     

    迷える誰かの「魔法使い」になる

    「絶体絶命」とはいかないまでも、「なんとなくうまくいかない」ことは誰にでもあるはず。そしてそこに、自分のメイクやファッションといった外見が影響している場合も少なくありません。

    適当なメイクのせいで自分の良さを引き出せていなかった彩海のような人もいれば、

    コンプレックスを隠そうとメイクがどんどん濃くなり、「怖い人」「古い人」に見られてしまうこともあります。

    「映え」を追求しすぎて、本当の自分とは別人のようなメイクになってしまう人も。

    自分の魅力を引き出せないだけでなく、メイクだけでガサツそう、キツそうに見えてしまうことも確かにあります。でも、明らかにヘンなメイクでなければ、「そういう人なんだ」と思われ、特に指摘もされないものです。しかし、一見微妙なメイクも、それぞれの理想の自分とのギャップ、悩みや迷いが生み出したものに違いないのです。そんなふうに「変われるものなら変わりたい」と、迷える誰かの魔法使いになりたい……! 彩海は、八乙女さんに「メイクの魔法使い」としての弟子入りをお願いするのでした。

    何度でも聞きたいセリフです。八乙女さんについてはまだわからないことばかりだけど、力強くこう言ってくれるだけで、私も彩海と一緒に「ついていきます!」と思えてしまいます。最高です!

    (レビュアー:中野亜希)


    ※本記事は、講談社コミックプラスに2022年10月6日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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