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  • 大人になるとは、何者かになるとは、そして幸せとは…鴻上尚史が綴る“誰かと語り明かしたくなる32の物語”『人生ってなんだ』

    2022年09月10日
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    黒田順子:講談社BOOK俱楽部
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    人生ってなんだ
    著者:鴻上尚史
    発売日:2022年08月
    発行所:講談社
    価格:968円(税込)
    ISBNコード:9784065294376

    時々ネットニュースに流れて来る、鴻上尚史(こうかみしょうじ)さんの人生相談が好きです。
    私だったらこう答える、という予想を立てて読み始めるのですが、鴻上さんの回答は、いつも予想を超えてきます。しかも上からの物言いではなく、相談者を傷つけない優しさがあり、さすが鴻上尚史!!と思っていました。

    【演出家だからこそできる解答】
    なぜ、そうした受け答えができるのか? その秘密が冒頭の「ほがらかじゃないほがらか人生相談」で明かされます。
    鴻上尚史さんといえば、劇団「第三舞台」の演出家であることはよく知られていますが、人間の集まりである劇団では何かとトラブルが起きるので、なんとか「明日も公演できる方法」を40年も考え続けてきた結果、人生相談も自然に答えられるようになったとか。

    【統一教会から友人二人を奪回】
    なるほどなぁ~と笑って読んでいたら、早々に「僕自身、かつて統一教会に取り込まれた二人の人間を奪回したことがあります」という話が出てきて、だから今この本が必要とされ、発売されたのだなと思いました。

    鴻上さんはマインドコントロール下にある友人に対し、相手側の教義や活動の矛盾を語るより、「あなたが求める温もりに代わるものは、この世にはない」と言い続けたそうです。
    そして、なぜ信者は一所懸命にパンフ配りや勧誘をするのかという心理と、集団側の計算された手口が客観的に書かれています。

    実は私も若いころ、新興宗教の総本山に2回連れて行かれたことがあります。
    母の不治の病につけ込まれたのですが、私が入信しなかったのは、鴻上さんが言う「批評精神」があったからだと、この本を読んで再認識しました。

    【ダラダラとかっこ悪く生きていこう】
    人生に死はつきものなので、死に関する話も色々と出てきます。
    例えば、22歳で亡くなった劇団員の理不尽な死を運命と言ったお坊さんのこと、コロナ禍での母親との別れと、葬儀や戒名など「死を金額で算定する」システムに対する割り切れない思い。

    中年男性の自死についても、「きれいに去るなんて思わずに、ダラダラとかっこ悪く生きていこう」と言います。

    また、いじめについては、「どこかの山にも南の島にも、あなたが生き延びられる場所はある」「戦うより逃げる方が賢明だ」と。
    とにかく死ぬな!! ということを鴻上さんならでは言葉で綴られています。

    【ぶさいく村出身の野望】
    こうした生死に関する話だけでなく、「身長180センチ以上ある男性の写真は、その8割が自己陶酔しています」というオーディション”あるある話”や、予備校の寮生活の話には思わず笑ってしまいました。

    自分は「ぶさいく村」の出身で、俳優の世界で主役になることは無理だけど、作家や演出家の世界で主役になってやろうと「野望をシフト」した話も共感できます。

    これらは第4章にあたる「4 何者かになることは“成功”なのか」に収められており、私も若いころから自問自答してきたことなので、もっと早くに読みたかったなぁと思いました。

    【選りすぐりの32本/1,223本】
    この本に収められているのは、27年間にわたり週刊『SPA!』で連載されたエッセーと、書籍化の際のエッセー、合計1,223本の中から選ばれた32本!!

    有名人が発する言葉は、時として批判の対象になることもあるし、もちろん違う考えを持つ人もいるでしょう。
    しかし、人には相談できないことや、わざわざ人に話すほどではないけれど心に引っかかっていたことが、この中にはきっとあるはずです。
    そして読み終えたとき、なんやかんや言っても生きてるだけでも偉いぞ! よくここまで生きてきたね、と自分のことを労わる気持ちが生まれる不思議な本だと思いました!!

    (レビュアー:黒田順子)


    ※本記事は、講談社BOOK倶楽部に2022年9月1日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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