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  • 松坂慶子主演でTVドラマ化決定!『一橋桐子(76)の犯罪日記』原田ひ香さんインタビュー

    2022年08月09日
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    ほんのひきだし編集部 猪越
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    『三千円の使いかた』が、15刷60万部のベストセラーとなっている原田ひ香さん。8月9日(火)には、松坂慶子さん主演でTVドラマ化が決定している『一橋桐子(76)の犯罪日記』の文庫版が発売されました。

    その名の通り、76歳の老女が先行きへの不安から、刑務所へ入りたいと犯罪を真剣に考える物語。コミカルなストーリーながらも他人事ではない内容に、引き込まれる人も多いのではないでしょうか。そんな本作について、原田さんにお話を伺いました。

    原田ひ香
    はらだ・ひか。1970年、神奈川県生まれ。2005年「リトルプリンセス2号」で第 34 回 NHK創作ラジオドラマ大賞受賞。2007年「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞。著書に『三千円の使いかた』『そのマンション、終の住処でいいですか?』『事故物件、いかがですか? 東京ロンダリング』『アイビー・ハウス』『人生オークション』『母親ウエスタン』『彼女の家計簿』『三人屋』『復讐屋成海慶介の事件簿』『虫たちの家』『ラジオ・ガガガ』『ランチ酒』などがある。

    一橋桐子(76)の犯罪日記
    著者:原田ひ香
    発売日:2022年08月
    発行所:徳間書店
    価格:814円(税込)
    ISBNコード:9784198947699

    老親の面倒を見てきた桐子は、気づけばたったひとり、76歳になっていた。
    両親をおくり、わずかな年金と清掃のパートで細々と暮らしているが、貯金はない。
    同居していた親友のトモは病気で先に逝ってしまった。
    唯一の家族であり親友だったのに……。
    このままだと孤独死して人に迷惑をかけてしまう。
    絶望を抱えながら過ごしていたある日、
    テレビで驚きの映像が目に入る。収容された高齢受刑者が、刑務所で介護されている姿を。
    これだ! 光明を見出した桐子は、「長く刑務所に入っていられる犯罪」を模索し始める。

    第一章 万引
    第二章 偽札
    第三章 闇金
    第四章 詐欺
    第五章 誘拐
    最終章 殺人

    〈徳間書店 公式サイト『一橋桐子(76)の犯罪日記』より〉

     

    76歳という年齢ならではのリアルを描く

    ――本作は、76歳の桐子が「他人に迷惑をかけたくない」と自分の行く末を思いつめ、刑務所に入ることを画策する物語です。桐子の迷走ぶりがユーモアたっぷりに描かれますが、おのずと自分の老後についても考えさせられました。どのようなきっかけで生まれた物語なのですか?

    「お仕事小説を書いてみませんか」という依頼をいただいたのがきっかけです。最初から高齢者を主人公にと考えていたわけではないのですが、その打ち合わせの時にちょうど私が読んでいたのが、『65歳で月収4万円。年金をもらいながら ちょこっと稼ぐコツ』という本でした。

    年金だけでは心許なくても、パートやアルバイトといった働き方で毎月収入を増やすことができるという内容です。その中で、高齢者を受け入れている会社や働き方はいろいろあることも紹介されていました。

    また、ハローワークにもシニア層を対象とした相談窓口があると知って、高齢者の仕事について書こうかなと思いましたが、一方で、居場所がなくて、刑務所に入りたいがために犯罪を繰り返す高齢者もいると聞きます。

    そこで、桐子のように犯罪歴もなく、品も学もある、きちんと生きてきた女性がそういった状況に追い込まれたとしたら、読者の方により共感を持って読んでもらえるのではないかと思いました。

    ――『一橋桐子(76)の犯罪日記』というタイトルもユニークですね。

    このタイトルは当初から考えていたものです。「一橋桐子」という名前は、真面目で一本筋が通っているような感じがいいなと。「犯罪日記」という言葉は不穏なイメージもありつつ刺激的で、表紙をめくると「万引」「偽札」と、第一章から順に罪名が並んでいる。そんな形をパッと思いついて、タイトルと構成がすんなり決まりました。

    ――76歳という桐子の年齢も、働きたいという意欲はありつつ仕事や住まいについて問題が生じてしまう、高齢者のリアルが反映されています。

    昔は60歳ぐらいから「おじいちゃん、おばあちゃん」という印象でしたが、いまや60歳は現役世代。平均寿命を考えてもそこから20~30年の開きがあるわけで、ひとくくりに老人とは言えないですよね。

    私の両親や周囲の親御さんなどを見ていても、70代の前半はみなさんお元気です。75歳を過ぎたくらいから、元気な方とそうでない方が分かれる気がしているので、老人の入り口という感じが出ればいいなと設定しています。

     

    “友だちと暮らす”は女性の老後の夢

    ――本作は、桐子の親友であるトモとのエピソードから幕を開けます。2人はトモの夫が亡くなったことを機に、一緒に暮らすようになります。

    老後に友だちと一緒に住むことは、女性にとってある種の夢でもありますよね。

    桐子とトモのエピソードについても、友だちと同居するならどんな生活を送りたいかという理想を描きつつ、物語を優しく穏やかな雰囲気で始めたいという思いがありました。

    ――しかしトモの病死をきっかけに、幸せな生活は一変します。意気消沈していた桐子ですが、やがてパート先で出会った若い男や闇金業者、女子高生などさまざまな人間と関わりを持つようになります。

    金銭的な不安ももちろんありますが、まったくのひとりぼっちという孤独な状況にならないと、刑務所に入りたいとまでは追いつめられないように思いました。

    皮肉なことに、一番仲の良い友だちが亡くなることで、桐子の世界は広がっていきます。以前はトモと2人の関係で完結していたけれど、犯罪について本気で考えだした途端に、これまで思ってもみなかったような人とつながっていく。その展開はおもしろいと思いましたし、本作の狙いでもありました。

    ――一人暮らしの高齢者の見守りや支援といった、社会的な課題についても考えさせられますね。

    たとえば街の不動産屋さんは、実は生活保護や年金のことなどにとても詳しいですし、できること、できないことも把握しています。そういった地域のネットワークを活かすことも、今後は方法の一つとしてあるのではないかという思いも込めています。

     

    「万引」から「殺人」へ

    ――「刑務所に入ること」が目的の桐子にとっては、刑期の長さも重要です。本作では6つの犯罪がテーマとなっていますね。

    私は6回の連載で1冊にまとめることが多いので、当初から6章構成で考えていました。最終章は殺人になるだろうなと思っていましたので、そこから誘拐、詐欺と、遡りながら考えていきました。

    第一章の「万引」については、『老人たちの裏社会』というノンフィクションを読んだときに万引きを繰り返す人たちのことが書かれていて、それが強く印象に残っていたんです。

    なぜお金があるのに盗むケースがあるのだろうと疑問に思っていたところ、その人たちにとって万引きは、成功率の高い賭け事なのだそうです。お金を払わずに得したことが快感になって、一回ハマってしまうとなかなかやめられない。そうしたことについて、私以外にも知らない人は多いのではないかと思い、盛り込むことにしました。

    詐欺にしても、恋愛詐欺や結婚詐欺の被害に遭う高齢者も多いと聞きます。「後妻業」という言葉が小説や映画で広く知られるようになり、私も大好きな作品なのですが、実際には殺人を犯したり遺族と揉めたりするケースはそう多くないようです。

    いかに効率的に、足がつかないようにだますのか。そういった手口についても本書で取り上げています。

    ――原田さんは書籍から着想を得られることが多いようですが、日頃からそういった作品はよく読まれるのですか?

    ノンフィクションをよく読みます。いまですと、高齢者に限らず、コロナ禍による貧困についての本なども読んでいます。

    リサーチの場合もありますけれど、まずは興味があって、読んでいく中で作品のヒントを得ることが多いです。

    ――7月27日(水)には、「お金のつくりかた」がテーマの『財布は踊る』も発売されました。『三千円の使いかた』を含め、お金という生活に密着した題材ながら、どれもいつの間にか社会や人生について考えさせられる作品になっています。

    社会で起きている出来事は、興味を惹かれるといつもメモしているので、そこからテーマを思いつくこともあります。そもそもお金は社会を動かすツールでありシステムですよね。日本人には特に、「お金の話をするのははしたない」という風潮あるかと思います。しかし、お金は社会を大きく発展させてきたシステムの一つだと思うので、そこは忘れずに書いていきたいですね。

    ――そういったことを身近なストーリーとして楽しみながら、知識を深めたり考えたりできるのも小説ならではですね。

    節約術や投資については自分も嫌いな話ではないので、ネタを集めることは苦になりません。『三千円の使いかた』も「こういう話は読んだことがなかった」という感想を多くいただきましたが、私としてはごく普通に、自分自身がおもしろいと思っていることを書いています。その思いが、作品を通して読者の方にも伝わったらうれしいです。

    ――本作を原作としたTVドラマが10月8日(土)にスタートします。

    桐子を演じてくださるのが松坂慶子さんと聞いて驚きました。あんなに綺麗な方が、しかも今回、実年齢より上の役を引き受けてくださっています。プレスリリースの写真を拝見したら、服装や髪型も相まってしっくりと“桐子”を表現してくださっていたので、今から放送をとても楽しみにしています。

    ――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

    76歳にして天涯孤独の身になって、お金もない状況になったらどうするか。自分が同じような境遇だったらと、私も悩みながら書いたのが本作です。桐子の行動にハラハラしながら、みなさんも一緒に考えていただければと思います。

     

    原田ひ香さんの新刊

    財布は踊る
    著者:原田ひ香
    発売日:2022年07月
    発行所:新潮社
    価格:1,540円(税込)
    ISBNコード:9784103525127

     

    インタビューで紹介した書籍

    65歳で月収4万円。年金をもらいながらちょこっと稼ぐコツ
    著者:阿部絢子
    発売日:2016年03月
    発行所:KADOKAWA
    価格:1,210円(税込)
    ISBNコード:9784046014818
    老人たちの裏社会
    著者:新郷由起
    発売日:2015年02月
    発行所:宝島社
    価格:1,430円(税込)
    ISBNコード:9784800236487
    後妻業
    著者:黒川博行
    発売日:2016年06月
    発行所:文藝春秋
    価格:814円(税込)
    ISBNコード:9784167906290




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