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  • 医学なき世界に医者が舞い降りたら? 獣人、森神、エルフ…すべて診る!『高度に発達した医学は魔法と区別がつかない』

    2022年06月26日
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    花森リド:講談社コミックプラス
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    高度に発達した医学は魔法と区別がつかない 1
    著者:瀧下信英 津田彷徨
    発売日:2022年05月
    発行所:講談社
    価格:737円(税込)
    ISBNコード:9784065276860

     

    異世界は無医村

    自分の力が必要とされる場所に身を置いた人はめちゃくちゃ輝く。『高度に発達した医学は魔法と区別がつかない』の主人公・“天海唯人(あまみゆいと)”の場合、いつでもどこでも求められて生きてきたはず。

    彼が「他人のために」働き続ける医師だからだ。

    大学病院の総合診療医である彼は患者の容態が急変すればすっ飛んで行くし、自ら志願して離島の無医村にも笑顔で異動する。大学病院に勤める唯人にとってそれが出世街道から大幅にコースアウトする行為だとしても、だ。尊くてまぶしい。

    そんな唯人がさらにビカビカと輝く場所が本作の舞台。

    異世界だ。しかも無医村の。いや、医師どころか医学そのものがない世界に彼は来てしまう。

    異世界で暮らす獣耳の女の子だって、生きていればケガもするし病気にだってなるだろう。医学のない世界の病気は「呪い」や「祟(たた)り」と同じ。ケガも出産も命を落とす恐ろしいもの。そしてこれらを治療する方法があるとするなら、それはおそらく「魔法」と呼ばれる。

     

    “キマイラ”に噛まれてアナフィラキシー

    無医村の離島から突如異世界に来てしまった唯人。

    身ひとつ……ではなくて、一応、基本的な医療器具や薬が入っているであろう大きなリュックサックと黒いカバンを持っている。よかった。あと、唯人が持っている強力なスキルも失われていない。医学の知識、臨床での経験、そして他人のために働く強い意志だ。

    なので、たとえそこが謎の異世界だとしても、唯人はたちまち医師の顔になる。

    女の子が空から降ってきて、しかも鎖に繋がれていて、おまけに獣耳。尻尾も生えてる。でも、そんなことよりも唯人は「変な呼吸」が気になる! だってお医者さんだから。ということで診察開始。

    本作の原作・医療監修は現役の医師でもある津田彷徨先生。ファンタジーの合間にちょいちょい登場する専門用語と解説がとても楽しい。

    獣耳の少女はアナフィラキシーショックを起こしている。少女に襲いかかったキマイラが原因らしい。たしかに見るからにヤバいアレルゲン持ってそうだもんね。

    ケガもしているけれど、とにもかくにもアレルギーを鎮めることが最優先。ということで、重いアレルギーを持つ人ならば見たことがあるかもしれない薬も登場する。リアルだ。

    でも異世界の住人にとって唯人のやっていることは……、

    そう、医学のない世界で暮らす彼らには、なにがなんだかサッパリわからない(医学のある世界に生きているとはいえ、私は医師じゃないから、病院に行くと獣人みたいに「?」となることがある。だから彼らの驚愕っぷりに共感できる)。

     

    医学のない世界の治療

    一命を取り留めた少女の治療はまだまだ続く。

    獣人たちにビックリされようがお構いなし。そこに患者がいる限り唯人は医師として精一杯働く。異世界でもまぶしい男だ。

    実は、医学のないこの異世界にも治療の概念がある。ただし治療を行うのは医師ではなく“魔法師”なのだという。

    “マスイ”は人間だけが使える治療魔法? 医学は魔法なんかじゃないし、勉強すれば誰でもできる。しかも……、

    ここでの治療は魔法の一種で、魔法は命よりも高価。医療行為の相場価格が恐ろしいことになってる。さあ、きな臭くなってきた。

    そんな医学なき世界の医療従事者的存在はこんな感じ。

    めちゃくちゃもったいぶってる。そもそもあまり診てもらいたくないな。

    あやしい魔法師らの利権を完全に無視するかのように唯人は総合診療医として惜しみなく医療行為を行い、バリバリ働き始める。

    異世界の症例に興味津々。

    応召義務に忠実な唯人は、獣人、森神さま、エルフ、具合の悪い者ならばすべて診る。困っている命を片っ端から助けようとする唯人はこの世界をどう変えていくんだろう。ハイパー無医村の異世界に医学を広めてほしいけれど、遅かれ早かれ唯人が持ってきた器具や薬がなくなるはず。異世界のどんなアイテムで代用して、どんなケガや病気に立ち向かうのだろう。楽しみだ。

     

    (レビュアー:花森リド)


    ※本記事は、講談社コミックプラスに2022年6月16日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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