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  • ダークロマン×警察小説が誕生!沢村鐵が新たなジャンルを切り開く|沢村鐵『謎掛鬼』

    2022年06月18日
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    池上冬樹:「小説推理」BOOK REVIEW
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    クラン・シリーズの著者が辿り着いた新境地。

    警察小説とダークファンタジーが見事に融合し、リアリズムとは異なる予想外の能力で事件を解決に導く!


    沢村鐵は警察小説の人気作家である。クラン・シリーズ(第1作は『クランⅠ 警視庁捜査一課・晴山旭の密命』。計6作)のみならず、警視庁墨田署刑事課特命担当・一柳美結シリーズ(『フェイスレス』ほか計4作)、極夜シリーズ(『極夜1シャドウファイア警視庁機動分析捜査官・天埜唯』)などスケールの大きな警察小説を発表している。しかもジャンル的には警察小説に謀略小説、冒険小説、ゲーム小説の要素も加えて、臨場感あふれる昂奮に富む小説を生み出しているのがいい。

    だから当然、書き下ろしの新作『謎掛鬼 警視庁捜査一課・小野瀬遥の黄昏事件簿』もまた、リアリズムで押す警察小説かと思いきや、これが何とも不思議なのだ。警察小説とダークファンタジーの融合なのである。そのくせ、クラン・シリーズの晴山警部補が小野瀬遥の上司として出てくるし、クラン・シリーズへの言及もあるのだが、小野瀬遥はクラン・シリーズに登場しない。ただし、小野瀬と繫がるわけありの巡査(終盤で名前が出てくる)はクラン・シリーズの重要な脇役であるから、ある意味、本書はクラン・シリーズのスピンオフといえるかもしれない。

    インド出身のIT通信会社社長の一人娘が誘拐される第1話「道案内」、歩いているところを後ろから狙われる連続闇討ち事件を追う第2話「癒やし人 殴り人」、被害者の名前が事前に謎解き問題として提示され、3日以内に殺害されるケースが続く第3話「謎掛鬼」、そして第3話の無差別連続殺人の黒幕へと至る第4話「黒羽根に光輪」で構成されているが、短篇連作の形をかりた長篇であり、サイド・ストーリーが繫がっていく。

    ミステリとしてはばらばらな話がつながる第2話もいいが、やはり暗号めいた謎解き問題を次々に提示して殺していく“謎解きジャスティス”をめぐる第3話が大胆で独創的で面白い。警察小説なのに本格ミステリ的な味わいがあり、やがて犯人探しへとむかうあたりスリリングなのだが、興味深いのは、リアリズムとは異なる予想外のヴィジョン(遥がもつ特殊な能力)を提示して、解決へと導いていく点だろう。冒頭でふれたダークファンタジーである。

    沢村鐵は警察小説の優れた書き手だが、同時に、『封じられた街』『十方暮の町』『あの世とこの世を季節は巡る』『はざまにある部屋』などのホラーやファンタジーを積極的に書いている。本書はまさに、沢村鐵の2つの長所が融合した秀作なのである。

    謎掛鬼 警視庁捜査一課・小野瀬遥の黄昏事件簿
    著者:沢村鐵
    発売日:2022年05月
    発行所:双葉社
    価格:726円(税込)
    ISBNコード:9784575525694

    「小説推理」(双葉社)2022年7月号「BOOK REVIEW 双葉社 注目の新刊」より転載

    『謎掛鬼』の著者・沢村鐵さんのインタビュー記事はこちら




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