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  • 凶暴で極甘!元極道のショコラティエによる愛と笑いの物語|新堂冬樹『任侠ショコラティエ』

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    2022年06月15日
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    細谷正充:「小説推理」BOOK REVIEW
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    星咲直美は、元ヤクザにして現ショコラティエ。

    向かってくる敵には容赦しない。新堂冬樹の新刊は、バイオレンスとチョコレートの香りに満ちている。


    本書のタイトル『任侠ショコラティエ』だけを見て、今野敏の新刊だと誤解した人がいるかもしれない。なぜなら、昔気質のヤクザ「阿岐本組」が、書店・学校・病院など、畑違いの経営に乗り出す「任侠」シリーズがあるからだ。しかし、本書の作者は新堂冬樹である。主人公と仕事のギャップは共通していても、今野作品とはまったく違った内容になっているのだ。

    新宿歌舞伎町でボンボンショコラの専門店「ちょこれーと屋さん」を営む星咲直美は、かつて武闘派の暴力団「東神会」に所属するヤクザ者であった。規格外のパワーと、愚直すぎる心を持つ直美は、「歌舞伎町の百獣の王」と呼ばれた伝説の存在だ。それは、ショコラティエになっても変わっていない。今でも、自主的にパトロールして、歌舞伎町の住人を守っている。

    そんな直美を慕っているのが、「東神会」時代に一の子分となり、現在は「ちょこれーと屋さん」で働いている鬼渡譲二だ。常連客もいて、店はそれなりに回っている。だが、直美を邪魔に思っている「東神会」の若頭・海東が、卑劣な罠を仕掛けてきた。これに激怒した直美は、修羅場に飛び込んでいく。

    元ヤクザ者で現ショコラティエ。このギャップを楽しむ話かと思ったらとんでもない。主人公の直美のキャラクターが規格外なのだ。心のままに振る舞い、相手が悪いとなれば当たり前のように半殺しにする。その傍若無人ぶりが、愉快痛快なのである。

    そんな直美だから、常連客の営むカラオケスナックが海東の手先に荒らされ、譲二が拉致されると、もう止まらない。圧倒的なパワーで敵をなぎ倒すのだ。ここまで読んで分かったが、本書は一風変わったバイオレンス小説なのである。近年、良質のバイオレンス小説が希少なので、嬉しい贈り物といっていい。

    しかも、ショコラティエの部分も手抜きなし。直美が提唱する「ショコラ四ヶ条」は、大いに参考になった。また、腹を刺されたときの血を見て、新しいショコラの工夫を思いつくなど笑える場面も多い。ここも読みどころだろう。

    そして本書は、鬼渡譲二の物語でもある。チキンな性格だが、一途に直美を慕う譲二。空回りばかりしている彼の気持ちは、直美に届くのか。バイオレンスとスイーツの香りに包まれた物語の顛末を、どうか読者自身の目で、確認してほしいのである。

    任侠ショコラティエ
    著者:新堂冬樹
    発売日:2022年05月
    発行所:双葉社
    価格:1,980円(税込)
    ISBNコード:9784575245165

    「小説推理」(双葉社)2022年7月号「BOOK REVIEW 双葉社 注目の新刊」より転載

    『任侠ショコラティエ』の試し読みはこちら




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