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  • 「俺は笑わないよ」“恋しても笑われないくらいの可愛さ”になりたいヒロインと、優しく見守る同級生の物語『犬飼さんはかわいくなりたい!』

    2022年05月07日
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    花森リド:講談社コミックプラス
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    犬飼さんはかわいくなりたい! 01
    著者:どーるる
    発売日:2022年03月
    発行所:講談社
    価格:528円(税込)
    ISBNコード:9784065271407

    恋しても笑われないくらいの可愛さ

    自分の外見について心ないことを言われるとびっくりする。そしてめちゃくちゃ傷つく。「は?」と強めに言い返す元気すら湧かないし、傷は消えない。だから、せめて、そのなかなか治らない自分の傷とどう付き合うかくらいは、自分で決めたい。

    『犬飼さんはかわいくなりたい!』のヒロイン“犬飼英子”はかつて深く傷つきました。

    ビジュアルを理由に好きな人からひどいことを言われてしまった犬飼さん。このあと彼女はどうしたか。

    可愛くなろうとしました。私だったらどうしていたかな……こんなに追求できたかな。ここで『犬飼さんはかわいくなりたい!』をしみじみ好きになるんですよね。犬飼さんを応援したくなる。で、ひたむきに研究と努力を重ねた犬飼さんはやがて高校生となり……!

    そう、めっちゃ可愛い。ところで、可愛いの求道者であるはずの犬飼さん本人すら自分の姿にびっくりしています。私ってこんなに可愛い顔をするんだ!って。さあ、この笑顔を撮ったのは誰?

    頑張りが足りない!

    犬飼さんは、可愛いの正体をただただ知りたいんです。親友が褒めてくれるのはうれしい。でも、見ず知らずの人は私をどう感じる? あなたが私に対して感じた「可愛い」ってどういうこと? 科学者が実験で正確な値を求める姿勢と一緒。

    高校の入学式の日も犬飼さんはそのスタンスを崩しません。そんな犬飼さんに「なんで?」と問いかけた人がいます。同じ高校に入学する“天宮真生”。カメラのセンスがあってネットでバズったこともある有名人。天宮くんの「なんで?」に犬飼さんは……、

    ハキハキ! 犬飼さんの明朗な答えを聞いた天宮くんはというと。

    犬飼さんの奮闘ぶりにあきれるでもなく、もちろん笑うでもなく、ただただ不思議そう。そして犬飼さんも「私はまだ頑張りが足りないくらい」と首をひねります。本作の「可愛くなりたい!」の純度が伝わるいい場面です。

    犬飼さんのひたむきさに周りが動かされるエピソードをもう一つ紹介します。入学初日、犬飼さんはクラスメイトの何人かと放課後にショッピングへ行くことに。みんなまだ打ち解けていないし、なんならちょっとかっこつけたい時期。たとえば、すごく可愛い“宮脇さん”は好きな人の前では「私はメイクのことなんて詳しくありませーん」って空気を醸し出したい。なのに!

    大間違いなメイクですごいことになっちゃった犬飼さんをほっとけない宮脇さん。「しまった思わず手が」という心の声が可愛い。こんな瞬間も天宮くんは犬飼さんをじっと見ています。

    「俺は笑わないよ」

    「可愛くなりたい!」という願いは、先ほど紹介した「メイクに詳しい」と知られたくない宮脇さんだけじゃなく、私にとっても照れくさい感情です。そして、ファッションや美容の世界は情報の海。そこで無知な自分に気がつくのも恥ずかしい。本作は可愛くなりたい人がぶつかるであろうチクチクした気持ちを丁寧に描きます。

    がむしゃらに頑張る犬飼さんにだって、こうやって恥ずかしいなあってうつむく瞬間があるんです。それは、かつて深く傷ついた犬飼さんにとっては、ただの気恥ずかしさよりもツーンとしみる辛さかもしれません。その一部始終を見ていた天宮くんは、

    そう! 今この瞬間、犬飼さんにはその正しい言葉が必要なの。そばにいてくれてよかったよ。あー正しい!

    ということで、天宮くんはいつも犬飼さんのそばにいます。天宮くんは「犬飼さんの可愛い瞬間を俺が見せてあげる」と宣言して写真を撮りまくるんです。どういうつもり!?

    天宮くんの目に映る、天宮くんが撮りたい犬飼さんって、どんな姿なんでしょう。

    可愛くなりたい犬飼さんを笑わない天宮くんは、繰り返し犬飼さんに「可愛いよ」と言います。思わせぶりな言動の嵐! ほんとどういうつもり? 真意が見えないけれど、彼の言葉は正しいなって思っちゃうんですよ。なぜなら彼が撮る犬飼さんはフワッとお花が咲くような可愛さだから。

    これです。この不意打ちでやってくるなんともいえない犬飼さんの可愛さを、天宮くんと私たちは目にしています。ああ、犬飼さん本人にも伝わってほしい!

    (レビュアー:花森リド)


    ※本記事は、講談社コミックプラスに2022年4月24日に掲載されたものです。
    ※この記事の内容は掲載当時のものです。




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